「VR元年」と呼ばれた2016年から4年、数々のVRデバイスが発売され、VR施設が登場し、ニュースでも取り上げられたことで「Virtual Reality(VR)」という言葉の知名度は着実に上昇しているのではないだろうか。
一口に“VR”といっても、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を使った映像技術を指す場合もあるし、もっと広義には「仮想現実」「人工現実感」といった、いわばコンピューターなどによって作られた“仮想世界”的な意味合いで使われる場合もある。
マンガ・アニメなどの題材として取り上げられることもあり、また広義でみれば、近年登場した「バーチャルYouTuber(VTuber)」などの文化もVRと近しい関係にある。
仮想現実というと、なんだか近未来的なイメージを持つ人もいるかもしれないが、すでにそれをある程度実現しつつある、「VRChat」というアプリケーションがあるのをご存じだろうか。Steamなどで配信しているVRChatは、VR空間で他者と会話したり、簡単なゲームをしたりといったコミュニケーションを楽しめる、ソーシャルVRアプリだ。
さながらスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」を思わせるような世界で、好きな3Dアバターの姿でバーチャル空間に入り、オンライン上で世界中のプレイヤーとコミュニケーションできる。
しかも、本アプリはプレイ無料で、一部機能は制限されるものの、通常の液晶ディスプレーに画面を表示できるデスクトップモードも備える。そのため、VRHMDを持っていない人でも使える。早期アクセスタイトルではあるが、一部のVRファンからは大きな人気を博している。
そんなVRChatを使って、HTC NIPPONがある面白い取り組みを開始した。その名も「VIVE VR Store」。バーチャル空間内に構えるバーチャル店舗だ。5月2日にオープンしており、現在VRChatを利用すれば誰でも来店できる。今回は実際にVRでバーチャル店舗を取材するとともに、本取り組みの狙いなども伺ってきた。
未来感あふれるバーチャルショップがスゴイ
VIVE VR Storeは、VRやARなどを活用した日本アニメのデジタルグッズ販売を手掛けるGugenka(グゲンカ)と、HTC NIPPONがコラボレーションして行なう施策で、GugenkaがVRChat内に設置しているワールド「Gugenkaバーチャルショップ」の3階で展開している。
バーチャル店舗というだけあって、ただ製品画像と文字情報が羅列されるウェブのECサイトなどとは異なり、現実の店舗と同じように製品が展示され、プロモーション映像を流すディスプレーがあり、製品について相談できる販売員がいる。
Eコマースならぬ、次世代の「バーチャルコマース」を体験できるのが、このVIVE VR Storeというわけだ。
VRChatのバーチャル空間は「ワールド」と呼ばれ、それぞれのワールドにアクセスして中に入ることで、ワールドのコンテンツを利用できる。ワールドごとに「インスタンス」という、MMORPGでいうチャンネルのようなものがあり、同じワールド・インスタンス内のプレイヤーとは、バーチャル空間でアバター同士で会うことができる。ワールドはユーザーが作成してアップロードできるので、VRChat内には多種多様なワールドが存在している。
VIVE VR Storeに入るためには、まずVRChatにログインし、Gugenkaバーチャルショップのワールドに入る。Gugenkaバーチャルショップには現実の店舗同様、上下階を移動する階段があり、ワールドの1、2階は、Gugenkaのデジタルフィギュア「HoloModels」などを販売している。3階に上がると、下の階の店舗のイメージと打って変わって、星空のような宇宙っぽい空間にたどり着く。ここがVIVE VR Storeだ。
入り口では、光り輝く大きなVIVEマークがお出迎え。マークにタッチすると、入り口が開いて店舗に入れるという粋な演出になっている。
店舗内もこれまたSFらしい内装で、床が光っていたり、VIVEマークのパーティクルが空間に舞っていたり、VRならではの未来感を感じる演出が施されている。実際、VRショップという次世代型店舗ともいえるこのストアには、大いにマッチしているのかもしれない。
店舗内には、3Dモデルで再現されたVR HMD「VIVE」シリーズの製品が置かれている。VIVE Pro Eye/VIVE Cosmos/VIVE Cosmos Elite/VIVE Focus Plus、そして「VIVE Focus ゲゲゲの鬼太郎 スペシャルパッケージ」が展示されており、これらの3Dモデルは、実際にバーチャル空間内で手に取って、回したり傾けたりしながら製品の外観をチェックできる。
店舗の入り口付近には、「Grid」「Mirror」というボタンが設置されており、これらを押すと店内の見た目を変えられる。「Grid」ボタンを押すと、壁面のグリッド模様が消え、より宇宙らしくなる。「Mirror」ボタンでは入り口のところに鏡が設置され、自分のアバターの姿が見られるようになる。
店舗内に展示されている製品の箱には、製品のスペックと、QRコードが記載されている。このQRコードを読み込むことで、ECサイトのページにとび、そこから製品を購入できるようになっている。
VRショップ内で気に入った製品があれば、QRコードをデスクトップ画面に映し、スマホで読み込んで購入できるという形になる。
なお、現在のところ、“VR空間内で決済まで完了”というところまでは対応していないが、それについてはこれからに期待だ。現在は、HMDをつけてVRでプレイしている場合、スマホでQRコードを読み込むのに一度HMDを外さなければならないが、VR上での決済が可能になればその手間も必要なくなるだろう。