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亀有に“こだわり抜いた中華そば”がある 中華そば 敦(東京・亀有)【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第5回

2020年04月15日 07時00分更新

文● 大熊美智代 編集● ラーメンWalker

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 人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の舞台、亀有。この街で2013年2月14日に開店した「中華そば 敦」の店主・加藤敦さんは、もとは背脂チャッチャ系の豚骨醤油のラーメン屋で店長を8年。その後、製麺所に勤め開業準備をしていた。

両さんが巡回に! 店主・加藤敦さんと

―もとは背脂豚骨、今は清湯。真逆じゃないですか。

「そう、拳骨をガンガン強火で炊いて白湯スープ作ってた。だけど、社長に許可もらって、夜限定で『支那そば』っていうメニューを出してたの。イメージは戦後の屋台ラーメンかな。戦後、屋台を始めた中国人たちが作ったラーメンを食べた日本人が、日本人の口に合うように鰹節・昆布・煮干しとかを足したのがラーメンの起源だって何かで読んでね。その時から鶏ガラと煮干しには触ってたから、僕のラーメンの原点はそこからきてるかな」

―ラーメンの歴史、詳しいですね(笑)。

「ラーメンのルーツを調べてた時、ラーメンって漢字だと拉(ひし)ぐ麺って書くけど、その意味は引っ張る麺のことだって知って。ビャンビャン麺と同じで、1本が2本、2本が4本、4本が8本になって、どんどん引っ張って細くなってく、あの柔らかい麺がラーメンなんだ。うちは引っ張ってない、製麺機を使ってるからラーメンじゃない。じゃあラーメン屋じゃなく“中華そば”っていう屋号でやろうと思ったの」

以前の店の看板をひっくり返し自ら「中華そば」と刻んだ。その横に小さく“敦”

―趣ある製麺機は、エビス麺機製作所のですね。

「アンティークなやつが欲しかったし、店の雰囲気に合ってるでしょ。今は、もっとコンパクトないいのがあるんですよ。ステンレスでかっこいいんだけど、こういう木と鋳物でできた昔ながらの製麺機がね、好きだったの」

―こだわりは麺の素材、小麦粉にも?

「色々試して、千葉製粉の『麺の誉』と江別製粉の全粒粉に決めてからはずっと落ち着いてるかな。ちょっと変わった作り方をしてるから、グルメサイトに『ちょっと変わった食感』とか『なんだ、この麺は?』なんて今でも書かれる。有名なラーメンコンサルタントの方もうちに来たことがあって、Twitterに『中華そば敦の麺は、どうやって作っているんだろう?』みたいなつぶやきがあったって(笑)」

―一般的なラーメン屋さんの製麺の仕方とは違うの?

「それもあるし、この製麺機でしかできない特徴が麺に表れてるの。製麺機の古さゆえのデメリットをあえて利用した作り方。最新の性能のいい製麺機はいっぱいあるけど、それを使うと今の麺ができないね。もうエビス麺機は廃業してるから、壊れたら困るじゃない。修理を受け継いだ会社があるって噂で聞いて、その頃エビスの製麺機を使ってたラーメン店に、菓子折りを持っていってご挨拶して『教えてください!』って、その会社を教えてもらったんですよ」

この製麺機でなければできない、こだわりの麺

―一番変わったのはスープですよね。昨年は煮干しの店になっちゃったし(笑)。

「煮干しそばは一昨年の12月に改装工事をする前から試作して、年明けリニューアルオープンした時に完成したのね。煮干しそばの旗を出したらニボラーのお客さんが増えたけど、それ以外の近所の人、若い女性が2回3回リピートして煮干しそばを食べにきてくれる。あとメニューが増えたことで、『中華そばと煮干そばってどう違うんですか』って、よく聞かれるようになりましたね」

一昨年の改装で、カウンター9席、4人テーブル1席の計13席に増

―どう違うんですか?(笑)

「中華そばのメインは鶏ガラスープ、煮干しそばは完全に煮干しと昆布だけ。鶏は鳥取から直送朝引きで届く大山鶏を使ってて、鶏ガラと手羽、頭も入ってる。煮干しは千葉の片口いわし。一番出汁が濃いんだよね。中華そばには鶏スープに煮干しの出汁をほんのちょっと支える程度に合わせた感じ。塩そばも同じで、塩ダレには今は貝だけ。アサリとシジミとホンビノス貝、あと鮭の脂が入っている。鮭の味がするわけじゃないけど、全然コクが違うね。中華そばと煮干しそばはスープの違い、それに塩と醤油はタレの違いで、レギュラーメニューは4種類です」

「煮干しそば(醤油)」。出汁は千葉の片口いわしと昆布だけ

―中華そばも久しぶりに食べたけど、全然違いますね。

「中華そばも昔は魚介がもっと弱かったの。鰹節とか使ってたから酸味が立ってたんだよね。今は、酸味はほとんど皆無。醤油は2種類で、その一つに名古屋のたまり醤油を少し加えてます。これが入ってるのと入ってないのとでは、醤油のキレとかコクが全然違う。あと生姜、ニンニク、玉ねぎとか香味野菜は外せないよね。スープを飲んだ後のふわっと生姜が香る感じがいい」

「中華そば」味玉トッピング。基本は太麺。細麺に変更も可

「塩そば」味玉トッピング。塩のチャーシューは鶏

―冬限定の味噌そばは、味噌から手作りですよね。

「味噌にはこだわりがあって、自分で大豆から作ってみたかったの。最初はなかなか安定しなかったけど、今は美味しい味噌ができるようになった。苦労して作った限定だから、毎年楽しみにしてくれる人がいるのは嬉しいですね」

塩水に浸した大豆。大豆に麹をまとわせてある「豆麹」を使用

柔らかくなったらフードプロセッサーで細かくして玄米麹を入れる

「玄米麹味噌そば」。ベースは中華そばと同じスープに熟成味噌の豊かな風味

夏の限定「冷たい塩そば」。モミジ(鶏の足)を使ったとろりとしたスープ

「煮干しのつけそば」も人気の夏メニュー。つけ汁はビターな煮干し醤油

―今年は、怒涛の7周年でしたね。

「この7年で、敦のコンセプト『無化調無添加自家製麺の総天然味』が妊婦さんの間で広まって、遠方からも来てくれる人が増えたのは嬉しかったね。この総天然味って、僕が作った造語なの。小さな子供からお年寄りまで、安心して安全に食べられる“完全総天然味”っていうコンセプトでお店を始めたんだ。そのコンセプトは7年経っても変わってない。

 いつも、どうしたら亀有の人達に浸透するのかって考えてやってきました。地域貢献というか、亀有のスーパーや商店街を毎日何軒も自転車で走り回って食材を調達して、地元で買える物はなるべく地元で買うようにしてます。付き合いも広がって、商店街の他の飲食店のマスターや店長さんが食事に来てくれたり。同業者が通ってくれるのは、作り手としてとても嬉しいですね。他のラーメン屋さんも開店すると食べに行ったり、逆に新しくできたラーメン屋の店主さんが挨拶に来てくれたり。今、やっと亀有に浸透したなぁと感じます」

―亀有に根付いた?

「そうね、今日も近所のおじいちゃんが庭でとれた金柑をお裾分けに持って食べに来てくれて。数年前はご夫婦で来られてたのが、奥様が亡くなられてからはお一人で。お年寄り達が来て『懐かしい味だね!』と言って、また来てくれる。そんな縁側みたいにホッコリできる場所になれたらいいね。
 亀有もたくさんお店ができて、今じゃラーメン激戦区といってもいいくらい。この街だけで食べ歩きができるんだもん、こんな楽しいことないじゃない。そうやって街を活性化させるところに自分もいて、共存して下町を盛り上げていきたいな。うちのラーメンってインパクトがあるタイプじゃないから、あまり最前線で話題にならないけど、これが僕の“中華そば”であり、“敦”っていう店なんだ」

中華そば 敦

東京都葛飾区亀有5-41-4
03-3628-6363
11:30~14:30 18:00~21:00(材料切れ終了あり)
水曜定休(月に数回、水曜日以外の休みあり)

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッターをご確認ください。

大熊美智代 Michiyo Okuma

 ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna

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