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茂原の女王の顔色がアナ雪に! ヤリスWRカーの圧倒的パフォーマンスに驚愕

2020年01月17日 17時00分更新

文● 栗原祥光 編集●ASCII

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体験したことのないGが身体を襲うんです

 車を降りた茂原の女王・板倉選手。その顔色は血の気が引いて、まるでアナ雪の女王のような白さ。さっそく話を聞いてみると「まだ、ちょっと頭がぐるんぐるんしているんですけれど……、すごいGが首にかかるんですよ。今までどんな車より、どんな遊園地のアトラクションよりもGを感じて、これが世界最高峰のラリーカーなんだなと思って、感激しています」と感動で言葉が出ない模様。国内ラリー選手権を戦う茂原の女王ですら「体験したことがないGを感じる」というところに、WRカーの恐ろしさを感じずにはいられません。

デモラン後に車を降りる茂原の女王。その表情からもWRカーのパフォーマンスがわかるというものです

 そこで気になるのは、国内選手権のラリーカーとの違い。板倉選手によると「外から見ていたら生き物みたいに動くなぁ、可愛いなぁと思っていたのですが、乗ってみるととてもじゃないけれど、正常な判断ができないというか」と前置きをしたうえで「普段乗っているヴィッツもブレーキを踏んだら前に沈み、アクセルを踏んだら後ろに沈むんですけれど、ヤリスWRCはクルマの動きが3Dというか、ストローク量がすごくあって、今までのクルマでは想像できない、自分のクルマでは絶対にできない動きでした」と混乱している様子で語ります。従来のクルマの常識とは異なる次元にWRカーは存在するというわけです。

観客の前でドリフトをするヤリスWRC。アクセルを踏んでいるためフロント側がリフトし、リアタイヤのアウト側が大きく沈んでいることがわかる

 強烈な加速を体験された女王ですが「脚が柔らかいせいか、嫌な感じの加速はしなかったですね。スムーズに速度が乗っているというか、急加速をしている感じは全くなかったです。それだけ車がイイということなんでしょうね。とにかく思ったより乗り心地がよかったです。突き上げとかまったくなくて。その代わり可動域が凄いというか、バランスボールの上でバインバインしているのに似ているかな」とのこと。

 このクルマがイイ、というのが何かのヒントになりそう。というのもトヨタは「道が人を鍛える。人がクルマをつくる」を公言しており、この嫌な感じがしない、けれど気づけば速かったというのが、トヨタの考えるイイクルマなのかもしれません。また、最近の市販スポーツカーの多くはガチガチの足回りという車はほぼなく、むしろ拍子抜けするものがほとんど。ですが不快さや怖さは、ドライバーが安心してアタックできないことを意味します。それゆえ安心感を与えるためにもスムーズさが求められるのでしょう。これは車高調などを入れているチューニングカーでも言えることかもしれません。

 このイイクルマというのは、ドリフト中でも感じられた様子。茂原の女王はドリ車にも乗ったことがあるそうですが「あの手のクルマって、コントロール不能になったら何が起きても不思議ではないという怖さがあるんですよ。でも、ヤリスWRCは剛性が高いためか、ロールしながらドリフトしているんですが、まったくといっていいほど怖さがないんです」と感心した様子。この恐怖心のなさもまたイイクルマの条件なのでしょう。

ドリフト姿勢からコーナーを抜けていくヤリスWRC。いわゆるドリ車と異なり大きくロールしているのですが、まったく怖くないとのこと

 さて、女王に「運転できます?」と尋ねたところ「直線なら運転できますね(笑)。運転はできると思うんですけれど、あぁやってねじ伏せて走るのは無理。操作もわからないし(笑)。あれだけ激しい動きをしているのに勝田さんは涼しい顔をして、ちょっと凄いですよね」「周りを見る余裕がまったくなかったです。足元に何やら機械がいっぱいあるなぁと思っていたのですが、まったく見る余裕はなかったですね」と、勝田選手のパフォーマンスにも驚いた様子。

 今回の経験は今後の活動に役立つのでは、と思った板倉選手のスタッフたちですが、板倉選手は「いやぁモノのが違いすぎて……。私のクルマ、あんなに脚も動かないし。あと私はターマックばっかり走っているので、今回のグラベル仕様とはまた違うし、そもそも近づけることが正解なのかはわからないですね。ただ実際に自分のクルマとは構造が違うクルマがあぁいう動きをするんだな、というのは勉強になりました」

四輪駆動ゆえに、フロントタイヤからも白煙が上がる

 「あと自分を中心に車が回るという感覚がとても強かったです。最後のドーナツターンはその場で回るんですけど、三半規管が壊れたかと思うくらいで(笑)。自分でぐるぐるやると、すぐに気持ち悪くなるんですけど、まず速度が段違いで、あまりに速すぎて自分が追い付かないんですよ。一周ぐらいならあの速度で回れますが、それが何周も続くのは驚きです!」と、圧倒的なパフォーマンスに舌を巻いていました。プロドライバーも驚くWRカーのポテンシャル。おわかりいただけましたでしょうか?

ドイツは車を壊さないように完走を目指します!

 茂原の女王は、今年のWRC第12戦ラリー・ドイツと最終戦のラリー・ジャパンにスポット参戦します。

トヨタGT86 CS-R3でWRCに挑む板倉選手

 愛車はトヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)が開発したトヨタ「GT86 CS-R3」。WEC世界耐久選手権を戦うトヨタ・TS050ハイブリッドとおなじファクトリーで製造されている“ワークスカー”とも呼べるものです。一見普通の86に見えますが、シーケンシャルのドグミッションをはじめ、各所をチューニング。ちなみに輸入して国内走行できるかというと、車検は通らないとのこと。

屋根に運転席へのエアインテークが設けられている

エンジンはノーマルの86と同じ水平対向。ただ、シャーシには数多くの補強がなされている

トヨタGT86 CS-R3のコクピット。変速はシーケンシャルミッションで行なう

 参戦チーム「ウェルパインモータースポーツ」の松井代表は「レギュレーション的に、WRCはメーカーから完成車であるR車両を買って、それを運用して戦うのが主流になっているので、それに準じた結果、86 CS-R3になりました」と車両選択の理由を明かした。

 ちなみに板倉選手のコドライバーを務めるのは梅本まどかさん。2019年は全日本ラリー選手権に板倉選手とのコンビで参戦。第4戦久万高原ラリーではクラス2位表彰台も手にしています。

車体には既に板倉選手の名前が貼られていました!

 TMGワークスカラーの86 CS-R3を前に板倉選手は、「昨年は車を壊してしまったんですけど、今年は壊さずに上位を狙っていきたいです」と抱負を語ると「ドイツ戦は、このクルマの里帰りにもなるので、生まれ故郷で無事に完走させたいなと思います」と意気込みをかたりました。

 いつかはWRカーで戦うことを夢見る板倉選手。今回の経験がその夢への第一歩になることを祈りつつ、今後の活躍に期待しましょう。

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