今年11月20~22日に、愛知県でWRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンド「Rally Japan」が開催されたり、トヨタがドライバーズ及びコドライバーズチャンピオンを獲得するなど注目が集まるラリー。そのトップカテゴリーで世界を戦うマシン「ヤリスWRC」とは一体どのようなマシンなのでしょうか?
四輪駆動で約400馬力、車重は1トンそこそこのコンパクトカーといわれてもピンとはこないものです。
そこで、茂原の女王の異名を持つ、今年WRCのラリー・ドイツにスポット参戦する女性ラリースト・板倉麻美選手に、東京オートサロンの会場で行なわれたヤリスWRCのデモランに同乗してもらい、プロドライバーの目でチェックして頂きました!
わずか数分でグラベルタイヤがツルツルに!
今回、ヤリスWRCのステアリングを握るのは、2019年シーズンはフィンランド選手権に参戦して2度優勝、2020年は最終戦ラリー・ジャパンを含むWRC世界ラリー選手権の8戦で最上位クラスを戦う勝田貴元選手。勝田選手と板倉選手は気の知れた仲。きっとそのパフォーマンスを存分に発揮してくださるに違いありません。
乗る前に茂原の女王に話を聞こうとしたところ、女王はかなり緊張されている様子。というのも連絡網の不備というか、伝言ゲームにより板倉選手の耳には「ヤリスに乗るという話だったので、てっきり新しいGRヤリスの運転できるんだー! ラッキー! と思って来たんですけれど……。え? ヤリスWRCの助手席に乗ってレポートするんですか? そんな話、聞いてないですよー」と混乱されているではありませんか。
板倉選手は「レースウィークの前はすごく緊張するんですけれど、走行前は逆に開き直っているんですよ。でも今日はすごく緊張しています。しかも勝田さんの横でしょ? えー、どうしよう」と相当緊張しています。周囲のスタッフは「乗る時にボケて運転席に座っちゃいなよ」「試乗後、勝田さんに“たいしたことないんですね”と言うんでしょ」と茶化して緊張をほぐそうとしますが、本人は「いやいやいや……」と、時間が近づくにつれ女王の顔は寒さと相まって顔面蒼白に。
用意されたヤリスWRCはグラベル仕様。タイヤもグラベルタイヤが装着されています。オートサロンのデモラン会場は一般駐車場ですので、舗装されていますから、そのままの状態で走行すると、あっという間にタイヤがすり減ってしまうそうです。よって乗る時間はわずか数分程度とのこと。その数分間で茂原の女王は何を感じ取るのか。スタッフたちも興味深々です。
さて、定刻から少し遅れてデモランは開始。勝田選手はタイヤを温めた後に、デモ走行を開始。板倉選手は、その動きを真剣な眼差しで見つめています。そして350名の中から抽選選ばれた1人目の同乗走行が終わった後に、板倉さんの同乗走行がスタート。
SUPER GTのGT300クラスよりも強烈なゼロ発進加速から、一気に減速しフロントダイブ。すぐさま四輪から白煙を上げてドリフトするヤリスWRC。この直前まではD1グランプリ車両のドリフトデモランが行なわれていたのですが、二駆と四駆、ドリ車とラリー車という挙動の違いは一目瞭然です。
ドリフト全開で駆け抜けた後、再加速して大勢の観客の前で豪快なドリフト。タイヤカスを飛び散らせながら、白煙モックモクのパフォーマンスに来場者は拍手喝采です。タイヤは瞬く間にすり減り、車内で勝田選手は板倉さんに「ワイヤー出てきたからそろそろ回りますねー」と伝えた後に、ドーナツターンを展開! あまりの爆煙で周囲はホワイトアウトするほど。クルマがどこにあるのかわかりません。こうしてデモランはタイヤがボロボロになったところで終了しました。ワイヤーがむき出しです。
その後、サプライズでトヨタの豊田章男社長が登場。さらに「僕が運転します」と言うと、その場でタイヤ交換まで。まったく知らない勝田選手は状況が理解できないまま、社長のコドライバーを務めることに。社長も負けずと白煙モックモク。自動車メーカーは数多くありますが、レーシングカーを運転する社長は豊田章男社長だけではないでしょうか。