2019年11月に東京都が公募した「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」を受託したモネ・テクノロジーズおよび鹿島建設、竹芝エリアマネジメント、電通、東海汽船、東急不動産、東日本旅客鉄道の7社は、12月16日より実証実験をスタート。2020年1月14日にはその一環として舟運を活用した「通勤者向けマルチモーダルサービス」を1月17日まで実施する。
「通勤者向けマルチモーダルサービス」は都営地下鉄の勝ちどき駅から徒歩9分ほどの朝潮運河船着場(勝どき)から、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の竹芝駅近くにある竹芝小型船ターミナルへ船舶を運行。さらに竹芝小型船ターミナルからは、ワゴン車によるシャトルサービスをJR浜松町駅へと運行することで、朝潮運河船着場から浜松町駅までスムーズな移動を提供するという実験だ。
船舶への乗船とシャトルサービスへの乗車時には交通系ICEカードを使った認証を使用。今回は実証実験ということで、ICカードからの課金は行なわれなかったが、現金を使わずにスムーズな移動ができるかどうか、将来の運行へ向けたテストがされた。
舟運に使用している艇も、路線運行用に開発されたものではなく、遊覧クルーズなどに使われるタイプ。定員55名と定員85名の2艇を使い複数便を運行。乗客も竹芝エリア内に拠点を持つ対象企業の従業員となっており、一般には開放されているわけではなく、あくまで実証実験というわけだ。
それでも取材時の便には、約20名が客として乗船。朝潮運河船着場から竹芝小型船ターミナルまでの約2kmを舟で、竹芝小型船ターミナルから浜松町までの約1kmをシャトルで移動。特に水上は渋滞もなく天候も良かったため船もあまり揺れなかったこともあり、快適な通勤となっていた。
実際に乗船して体験したモネ・テクノロジーズの代表取締役社長 兼 CEOの宮川潤一氏は「もうちょっとスピードが出てもいいかな。船に乗り慣れている人はいいけど、慣れてない人はフワフワと感じるかも」と感想を述べた。さらに「現状の都会の置かれている問題を考えると、もう一度水路を活用すべきではないか。駅中心の街つくりから水路などを活用することで面が広がっていく」と話している。ただし水路に固執するわけではなく、「水がダメなら空も」(宮川氏)と、水陸空、それぞれの移動手段を組み合わせたマルチモーダルサービスを構想している。
今後の目標としては、「インバウンド向け、五輪の期間に運用できれば」(宮川氏)と意欲的。水路は陸路以上に気象状況によって運行が左右されるが「揺れにくい船などもあり、ハードウェアである程度は解決できるのでは」とも話していた。
実際のところ、東京の水路を使った船舶の定期旅客運送というのは以前からアイディアはあり、何度も実証実験などが行なわれているが、通常サービスとして成功しているとは言いがたい状況。舟運単独では水路の船着き場から船着き場へつないだ線にしかならないためだ。
ただし今回の実証実験のように、鉄道やバスなどと連携することにより、さらにその線がつながり、効率の良い移動となる。実際には料金を徴収していないが、ICカードを使った認証をしているのもその一環。宮川氏は「船に乗って200円、シャトルに乗って200円というのではやはり使ってもらえない。船に乗ったら以降はプラス数十円くらいと、それぞれのサービスが連携できれば」と説明しており、今後の動きに期待したい。