ティックトック(TikTok)が同意を得ずに未成年者の個人データを収集したとして、イリノイ州の一家が訴訟を起こした。この訴訟の数日前には、カリフォルニア州の大学生が、自身のデータを中国のサーバーに送られたとして同社を訴えている。
いずれもティックトックが政治色の強い動画や障害を持つ人々からの投稿を制限しているとの報告が寄せられている最中のことだ。そのうえ、米国政府はこのプラットフォームが国家安全保障上の脅威であるかどうかについてまだ審査中だ。中国企業が所有するティックトックは、アプリは米国内においてのみ運用されており、中国政府とは関連がないと主張している。しかし、中国政府がティックトックを利用して米国のユーザーを巧みに操り、個人情報を入手しているのではないかとの懸念は依然やまない。
国家安全保障上の脅威について調査中の対米外国投資委員会(CFIUS)がティックトックの米国での運用を完全に停止させるという最悪のシナリオは、到底あり得ないと見られていた。だが、この一連の好ましからざる報道により、現実味を帯びてくるかもしれない。
専門家は現在、CFIUSの調査結果はより厳しいものになる可能性が高いと指摘している。対米外国投資が専門のハリー・クラーク弁護士は、ティックトックと親会社の中国企業「バイトダンス(ByteDance )」は信頼できないとCFIUSが結論付ける恐れがあるという。また、ピーターソン国際経済研究所の客員研究員クラウディア・ビアンコッティ博士は、CFIUSが出した結論が、ティックトックに対する評価に止まらない可能性があると付言する。 ティックトックが定期的にデータを収集し、密かに中国に送信していると判断された場合、将来的に他の中国企業についても国家安全保障上の評価の根拠として利用されるかもしれない。
少なくとも悪評が一気に噴出したことで、ティックトックに対する世論に影響を与え、米国外のテック企業の影響力に対処する方法に関する議論の論調が築かれることになりそうだ。 すべての人々をつなぐというインターネット本来の理想が生き残れるのか、あるいは、国ごとにネットワークが分断されることになるのか、ティックトックはその試金石となっている。