長野・八幡屋磯五郎に聞いた、名刺情報の共有効果と社内定着化に必要な努力
江戸中期創業、七味唐辛子の老舗が名刺管理を「Eight」でデジタル化
2019年11月22日 08時00分更新
地道な社内定着化の取り組みで習慣づけ、現在は月200枚のペースで増加
ただし、それまでEightを利用していなかった大多数の社員は、まず手持ちの名刺をEightに取り込む必要があった。実際のところ、この作業が「面倒くさい」と嫌がる社員も多かったという。これは、新しいシステムを導入する際に必ず起きる問題だ。たとえ現状が非効率であることがわかっていても、人はなるべくやり方を変えたくないものなのだ。
きちんとファイリングしてある名刺を取り出し、スキャンしてまた戻すのが面倒だという社員もいた。室賀氏は「作業は全部こちらでやるから」と説得して名刺を集め、Eightのスキャン代行サービスに送った。こうして八幡屋礒五郎では、社長と直属の部長ら8名でEightの利用を開始し、現在では営業部員も含む13名がEightユーザーとなっている。
利用開始後も、すぐにEightが定着したわけではなかった。当初は名刺交換をしても、Eightに取り込んでくれない社員もいたという。
「社内で『導入したけど使ってる？』と聞くと、微妙な反応が返ってくる人もいました。そんな人と商談に行った際には、商談の終わった後すぐに『じゃあ名刺を取り込もう』と声をかけて、Eightへの名刺取り込みを習慣づけるよう心がけました。ほかの社員にも定期的に声かけをしましたね」
Eightを使うメリットも繰り返し説明した。たとえば、紙で名刺管理をしていると、メールを送るときに長いメールアドレスを入力ミスするかもしれない。Eightのデータをコピー＆ペーストすれば早いし間違いがない――といったことだ。
こうした定着化の努力を積み重ねた結果、現在では全員が、名刺交換をしたらEightにすぐ登録するようになった。「以前は社内で見かけた、分厚い名刺のファイルをペラペラめくる姿は根絶できました」と室賀氏は笑う。
八幡屋礒五郎では現在、13人がEight 企業向けプレミアムを活用している
Eightを導入したことで、名刺を探す作業は1回あたり約5分の節約となった。前述したような、社外から電話して社内の人に探してもらうケースならば、その効果は2倍だ。取材日（10月3日）現在、八幡屋礒五郎のEightでは8045枚の名刺が社内共有されており、その数は毎月およそ200枚のペースで増えているという。
「Eightならば名刺を撮影すれば終わりですから、ファイリングや並べ替えといった、名刺管理のことを一切考えなくてよいというメリットもあります」
社内で名刺情報を共有した効果はてきめんだ。たとえば東京で催事をしているときに、営業社員が至急、見積書を送らなければならない場合でも、Eightの共有データを使って代わりに送ってもらうよう依頼できるようになった。
室賀氏自身も業務が効率化したという。たとえば海外出張先で丸一日予定が空いてしまった場合、従来ならば視察という名目でぶらぶらするしかなかった。しかし現在では、出張先からEightの情報を検索して登録されている人にアポイントを取り、ビジネスのステップを進めることもできているという。
“名刺管理をクラウド化する”という単純なツールではあるが、これまでの紙＝アナログをデジタルに変えることの恩恵は大きい。江戸中期創業の老舗、八幡屋礒五郎でも比較的スムーズに移行できたのだから、もはやデジタルトランスフォーメーションから逃げる言い訳はないと言ってよいだろう。
取材の最後に、これからEight 企業向けプレミアムをどう活用していくつもりかを尋ねてみた。
「交換した名刺を管理、共有するだけでなく、『デジタルだからできること』をもっと活用していきたいと思っています。たとえば、Eightには名刺交換した相手とチャットができるメッセージ機能がありますから、これも活用したいですね。仕事で使うアプリの数はできるだけ減らしたいと考えているので、チャットのやり取りもEightアプリで、というわけです」
＊ ＊ ＊
取材終了後、筆者は善光寺の門前にある八幡屋礒五郎 本店に併設された「横町カフェ」にうかがい、食事やデザートをいただいてきた。
料理はもちろん、デザートにも唐辛子をかけまくって食べたが、とても美味。唐辛子にもバリエーションがあり、普通の七味だけでなく、ゆず七味、深煎七味、一味唐からし、七味ガラム・マサラ、はては粉山椒まで楽しめる。アイスやフルーツにかけても美味しくなるのには驚いた。
八幡屋礒五郎の横町カフェにて。デザートにも七味唐辛子をかけていただく
