人間+RPA+ITで世の中を変える
MOBILE EVOLUTION 2019最後のセミナーはRPAテクノロジーズ株式会社代表取締役社長 大角暢之氏によるRPA(Robotic Process Automation)を使った働き方改革の事例を示す講演だ。RPAとは、主にホワイトカラーが行う定型のデスクワークをソフトウェアロボットが代行することにより、業務の効率化・自動化を行う仕組みを指す。AIやルールエンジン、機械学習などを含む認知技術を活用することにより、より広範な業務の代行が可能になりつつある。また、オフィス業務の標準化やデジタル化を並行して推進することにより、働き方改革につながるとして期待が持たれている。
ただし、業務の時間的・経済的・労働量的コストが大きく、通常のIT投資・システム開発によって解決できるところは従来型のシステムによって対処する方が良い。一方で一回の業務実行は数分~数十分だが一日に何度も行わなくてはならないようなルーチンワークはRPAによって自動化してしまう方が良い。
RPAの事例として、請求書の作成業務が取り上げられた。RPAホールディングス社では1か月あたり400枚の請求書作成業務が発生していた。1枚当たりの処理に2分35秒、トータルで17.2時間。約3営業日を費やしていたとのこと。しかも会社の成長に伴って業務量は増加が見込まれていた。
ここで重要なのは、RPAを導入することによって時間短縮が実現できてコストダウンになった、ということではないと大角氏は強調する。ルーチンワークの問題は、それによる担当者のモチベーションの低下ひいては人材の流出にある。RPAの導入は辞めることのないデジタルレイバー(労働者)へとルーチンワークを肩代わりすることにより、人材をより価値の高い業務に就かせることができるようになるところにある。
RPAには、導入前の業務の標準化・デジタル化作業や、導入後のロボットのメンテナンス作業などが必要で、結局前者導入が難しいとか逆に業務スピードが低下するなどのトラブルが発生することもあった。RPAテクノロジーズのBizRobo!は、これをIT部門と現場部門の連携による現場増殖型ロボット開発により解決している。BizRobo!を導入したLIXILでは、500人の社員が自分のルーチンワークを自動化するロボットを自主開発している。
労働人口の減少に起因する働き方改革は待ったなしの課題である。RPAは現時点でもそれに対する一定の解答となっているように感じた。AI技術の発展もRPAの成長にプラスになることを含め、今後の発展を期待する。