仮想通貨(暗号資産)交換業者として金融庁に登録しているテックビューロ(大阪市西区)が2019年8月22日、廃業する方針を発表した。
テックビューロといえば、2017年には、仮想通貨で資金を集めるICO(Initial Coin Offering)を実施。日本円で100億円を超える資金を集め、注目を集めた会社でもある。
一方で、2018年9月には巨額の仮想通貨が流出する事件が起き、事実上、交換業者としての事業の継続を断念。運営していた取引所Zaifの事業を、同じ大阪のフィスコ仮想通貨取引所に譲渡した経緯がある。
●業界の古株「Zaif」運営元
テックビューロは、創業者の朝山貴生氏らが2014年6月に立ち上げた。歴史の浅い日本の仮想通貨業界においては古株ともいえる存在だった。
交換業者を金融庁に登録する制度がスタートした2017年9月、テックビューロは、最初に登録に至った業者の1社に名を連ねていた。
当時、取引所Zaifの事業は、仮想通貨価格の急上昇を追い風に、急激に成長していた。
しかし、2018年初以降、仮想通貨価格の低迷やコインチェックの仮想通貨流出事件で、市場は本格的に停滞期に入る。
2018年7月には、分社化により、テックビューロホールディングスを設立。ホールディングスがブロックチェーン関連のソフトウェア開発などを担い、テックビューロは交換業者としての業務を行なう態勢を構築した。
●仮想通貨流出でフィスコに事業譲渡
2018年9月にはハッキングを受け、日本円換算で67億円相当とされる仮想通貨が流出した。
テックビューロは事件発覚後まもなく、財政支援や買収を含め、フィスコ側との協議に入っている。ハッキングの被害を受けた時点で、流出した仮想通貨を利用者に補償する資金のやり繰りに苦しんでいたことがうかがえる。
フィスコ側が、利用者への補償に必要な資金を支援する一方で、Zaifの事業を引き継いだ。
事件から2ヵ月後の2018年11月には、フィスコ側への事業譲渡が完了。この時点でテックビューロは、交換業者としての役割を終え、残務処理をする企業として存続する形になっていた。
●問題は残された顧客の資産
この連載の記事
- 第313回 アマゾンに公取委が“ガサ入れ” 調査の進め方に大きな変化
- 第312回 豪州で16歳未満のSNS禁止 ザル法かもしれないが…
- 第311回 政府、次世代電池に1778億円 「全固体」実現性には疑問も
- 第310回 先端半導体、政府がさらに10兆円。大博打の勝算は
- 第309回 トランプ2.0で、AIブームに拍車?
- 第308回 自動運転:トヨタとNTTが本格協業、日本はゆっくりした動き
- 第307回 総選挙で“ベンチャー政党”が躍進 ネット戦略奏功
- 第306回 IT大手の原発投資相次ぐ AIで電力需要が爆増
- 第305回 AndroidでMicrosoftストアが使えるように? “グーグル分割”の現実味
- 第304回 イーロン・マスク氏、ブラジル最高裁に白旗
- この連載の一覧へ