全従業員が自由にWeb会議を利用できるプラン、ウェスト社長は「東京五輪を契機にテレワーク浸透を」と訴え
シスコが「Webex特別プラン」発表、日本企業でのWeb会議定着化狙う
2019年08月22日 07時00分更新
シスコシステムズは2019年8月21日、クラウド型のWeb会議サービス「Cisco Webex Meetings」の特別プランを発表した。ユーザー企業が全従業員に会議主催アカウントを配布する場合の初年度料金を従業員数(ライセンス数)の15%に値引きし、次年度以降も利用率に応じた額に設定する。そのほか3カ月間の無償トライアル、導入促進のための無料オンライントレーニングやコンサルティングも提供していく。
日本法人社長のデイヴ・ウェスト氏は、近年の「働き方改革」や、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてテレワークの導入促進が強く求められている一方で、日本企業におけるテレワーク導入率はまだまだ低いことを指摘し、シスコとしてより一層のテレワーク浸透を支援していくと説明した。
すべての従業員が自由にWeb会議を利用できる環境を作り、利用の定着化を図る
今回発表された「Cisco Webex 働き方改革支援 特別プラン」は、全従業員(全オフィスワーカー)にWebex Meetingsの主催者アカウントを付与する契約プランだ。
ただし、初年度の契約料金は従業員数の15%のみ(たとえば従業員1000名の場合は150名契約)となり、さらに次年度以降も、前年度の利用実績(3カ月間の会議主催者平均値)に基づいた契約数とする。この仕組みにより、すべての従業員が気軽にWeb会議を利用できる環境を作るとともに、契約コストも最適化して、テレワークや柔軟な働き方の促進に取り組む企業を支援する狙いだ。
業務執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏は、今回の特別プランを提供する背景には2つの理由があると説明した。
1つめは、日本企業においてもWeb会議/コラボレーションツール導入は進みつつあるものの、こうしたツールの多くが「社内に閉じた」かたちのもので、社外の取引先や関係者との会議を効率化するに至っていないこと。もう1つは、Web会議のアカウントが特定の従業員だけに付与されていたり、限られた数のアカウントを社内で共用していたりするケースが多く、まだまだ全社導入している企業が少ないことだ。
こうした課題に対し、全従業員がいつでも使えるWebex Meetings環境を提供するプランを用意することで、企業内でのWeb会議の定着化とテレワーク促進を図る狙いがある。ウェスト氏は、「従業員がテレワークをしたいと考えているのに、テクノロジーが阻害要因になってテレワークができない」状況を避けるために、今回の特別プランを策定したと説明した。
石黒氏によると、同プランのようにWebexを全社契約(全従業員にライセンス配布)している顧客企業は、現時点では全体の「10%くらい」だが、その数は近年伸びてきているという。
「少ない数のアカウントを社内でシェアするかたちだと、誰かがそれを管理する必要が生じる。そのこと自体が、管理する人の働く環境を阻害していることに気付く企業が増えた。また、たとえば災害発生時や今回の五輪のように、全社で一斉にテレワークしましょうとなった場合にも対応できず、誰かが(アカウントが空くのを)待たなければならない。そうした状況で本当にビジネスが継続できるのかということを考えて、全社契約する企業も増えている」(石黒氏)
今回の特別プランは、シスコの販売パートナーが窓口となって9月中旬より受付を開始する。また希望する顧客には3カ月間の無償トライアルも実施する。そのほか、オンラインセミナーやパートナーを通じた導入コンサルティングなども展開していく。
ロンドン五輪では75%がテレワーク実施、日本でも“変革の契機”として期待
ウェスト氏は、日本企業におけるテレワーク導入状況や課題、今後への期待について触れた。
ウェスト氏はまず、総務省がまとめた資料を引用するかたちで「主要国におけるテレワーク導入状況」のデータを示した。米国が85.0%、英国が38.2%、ドイツが21.9%である一方で、日本は1年間で5ポイント以上伸びたものの、まだ19.1%(2018年)の低い導入率だ。
「政府の施策によって日本でも進捗は見られるが、まだまだこれからも大きな改善が必要だ」(ウェスト氏)
日本企業が飛躍的な改善を図るきっかけとしてシスコが期待しているのが、来年の東京オリンピック・パラリンピック大会(東京2020大会)だ。ウェスト氏が示したデータによると、2012年のロンドンオリンピック開催期間中には75%の企業がテレワークを実施し、43%が柔軟な就業規則を採用したという。
「つまりロンドンオリンピックを契機として、多くの企業が新たなワークスタイルを積極的に導入した。(来年の東京2020大会をきっかけに)日本でも同様の結果が生まれることを期待している」(ウェスト氏)
そしてその実現のためには、すでに利用可能な状態にあるテクノロジーをうまく活用していくことが必要だと付け加えた。
シスコ自身も、東京2020大会の期間中は“全社テレワーク”を原則とし、日本国内のどこからでも勤務可能にする。さらに、働きながらバケーションを楽しむ「ワーケーション」などのユニークなテレワーク体験を実践し、SNSなどで社内外に共有した社員には報奨金を支払う取り組みを行うと発表している。
なお同発表会には、法人向け多拠点型シェアオフィスサービス「ワークスタイリング(WORK STYLING)」を展開する三井不動産もゲスト登壇した。首都圏および地方都市に40拠点を展開しているワークスタイリングは、現在350社、月間7万人の会員が利用しているという。2019年度内には50拠点へ拡大予定だ。
同社によるシェアオフィス利用者調査によると、利用者は営業職に限らず幅広い職種に広がっており、利用目的も「移動時間の削減による業務効率化」に次いで「ミーティングの実施」が多いという。社内外のミーティング、さらにテレビ会議目的での利用率は大幅に増えており、シスコのテレビ会議システムを導入した部屋の人気も高いと説明した。