このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 次へ

古風な見た目に反した、現代的なサウンドが魅力

40年の魂が注入された「KX-3 Spirit」、これはぜひ聞いてほしい逸品スピーカーだ

2019年08月14日 14時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

6Ωのスピーカーは日本から始まった?

── 真空管アンプの話をしましたが、KX-3 Spiritは、10万円程度の一般的なアンプでも非常にいい音が出る気がします。鳴らしやすさは隠れた魅力ではないでしょうか? 最近では4Ω程度と低いインピーダンスの製品が多い中、6Ωに抑えている利点では?

渡邉 ここは先ほどの“不運な出だし”が関係しているかもしれませんね。当時のトランジスターアンプは低パワーでした。真空管アンプはマッチングトランスなので、多少インピーダンスが低くても問題ないのですが、インピーダンスを4Ωに下げると、パワートランジスターに電流が流れ過ぎて、保護回路がバッカバッカと働いてしまいます。結果、回路の担当者から「4Ωのスピーカーなんて作らないでよ」って話が出てくるわけです。

 しかし、開発競争の観点では、インピーダンスが低い方がパワーを出しやすくなります。当時は8Ωのスピーカーが主流でしたが、8Ωと4Ωでは出力は約2倍でます。そうすると「インピーダンスを下げたい」とスピーカー技術者さんは思います。しかしアンプ技術者さんは「そんなの絶対ダメ」って反対する。

 苦肉の策として、ビクターは6Ωを選びました。それを私が最初に手掛けたのです。電子機械工業会(EIAJ)にも提案して認められ、いまでは当たり前のように6Ωの規格があるわけですが、これは日本特有のものじゃないでしょうか。

── いまではJBLのスピーカーにも6Ωの機種があります。海外でも昔から使われていたのだと思っていました。

渡邉 海外スピーカーで6Ωが採用されたのはこれより後の話です。JBLやアルテックは、ウェスタンの流れを汲んでいるから、8Ωステップです。最初は16Ωで8Ωになった。その下なら4Ωです。だから、6Ωで行こうと言い出す人は普通いないと思います。私は「これじゃないと勝てない」ということで、6Ωのスピーカーを作っちゃったんですね。そしてそれが、業界でも認めてもらえるようになった、という流れです。

 渡邉さんのお話を聞くと、1970年代~1990年前後にかけて、日本のオーディオ界は様々な試行錯誤を重ね、技術的にも世界の最先端を走っていたことが分かる。記事では割愛したが、日本ビクター時代の最後期に渡邉さんが手掛けた「SX-1000 LABORATOY」では、結晶質ダイヤをアルミナの振動板の上にコーティングした、直径60mmのスコーカーと、1インチのツィーターをいち早く採用していた。これは現在のダイヤモンドツィーターの技術にも連なるものだ。

 時代の流れの中で、これらのいくつかは残り、いくつかは消えて行ったが、その精神はKX-3 Spiritの中に脈々と受け継がれている。その努力はクリプトン時代にも、ハイレゾ時代を先取りしながら着実に積み重ねられ、特徴あるラインアップを形成するに至った。KX-3 Spiritはそんな伝統的なノウハウと現代的な性能が同居した魅力あふれるサウンドを聞かせてくれる。高級ブックシェルフでおすすめの1台は何かと聞かれたら、間違いなく候補に入れたい製品だ。

■関連サイト

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

アクセスランキング

  1. 1位

    トピックス

    キンキンに冷えてやがる! 夏でもぶっ倒れなくするファン付ウェアの進化形を見た!ワークマン「ZERO-STAGE ファンベスト」

  2. 2位

    トピックス

    室外機に置くだけ、空調電力を最大38%削減 「GXマット」が特許取得

  3. 3位

    AV

    テレビいらない族のための録画機、配線ほぼゼロ、YouTube感覚で番組を見られる「miyotto」がスマートすぎる

  4. 4位

    ウェアラブル

    毎年7月に売り切れるやつ!ソニーの「着るクーラー」が冷却2割増しで最長15時間も冷えるとか神機すぎ!「REON POCKET PRO Plus」

  5. 5位

    AI

    AIがBlenderを勝手に操作 3D制作のハードルが一気に下がった

  6. 6位

    自動車

    「こんな小せぇJeepがあるか!」本国アメリカ人も驚く極小ハイブリッドSUVが日本上陸

  7. 7位

    トピックス

    「自動で爆風」普段着を強力9Vファン付きウェア化、イベントも外作業もクールだぜ!サンコー「爆風で上半身爽快『なんでもファン付きウェアにな~る』」

  8. 8位

    スマホ

    モトローラが“全部入りアンドロイド”の新機種 ドコモやソフトバンクでは8GBメモリー搭載で約2万2000円!

  9. 9位

    AV

    ついに会話ができるスマートスピーカーが登場!Gemini対応の実力を試してみた!

  10. 10位

    トピックス

    「ドコモの銀行」で何が変わる? ポイント最大4.5%還元、金融経済圏のメリットと課題

集計期間:
2026年07月20日~2026年07月26日

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中