量販店や専門店に足を運ぶと、数多くのブックシェルフ型スピーカーが並んでいる。中級より上のクラス、例えばペア10~20万円を超える機種で幅を利かせているのは、海外製品、特にヨーロッパのスピーカーだ。国内ブランドの存在感が希薄になっている現状には寂しさもある。
しかし、気を吐いている国内ブランドもある。例えば、クリプトンだ。もっとも小型の「KX-0.5」からフロア型の「KX-1000P」まで、現行機種は8モデル。ピアノ塗装や漆塗など仕上げのバリエーションも豊富だ。中でも、昨年投入された「KX-3 Spirit」は、素晴らしいできだと思う。
美しい木目をグロス仕上げした箱型の外観はクラシックな雰囲気だが、実際に音を鳴らすと、細かな音まで、クッキリ・ハッキリと明瞭で、とても現代的なサウンドを聞かせてくれるスピーカーだ。低域は40Hz、高域は50kHzまでの再生に対応してワイドレンジ。音は、同価格帯の海外スピーカーと比べて、もちろん引けを取らない。むしろ一歩抜けているとすら感じるものだ。
中核機KX-3 Spiritは、シリーズの集大成的な出来栄え
ここで「KX-3 Spirit」の特徴を簡単に説明しておこう。
密閉型で、ウーファーに直径170mmのクルトミューラーコーン、ツィーターに35mmのピュアシルク・リングダイヤフラム型ツィーターを組み合わせた2ウェイのブックシェルフ機だ。サイズは幅224×奥行き319×高さ380mmで、重量は約10.8kg。ブックシェルフ型としては比較的大きめの部類に入る。
エンクロージャーには高級家具などにも用いられる、スモークユーカリを使用。クリプトンは、天然木の突板と、塗装仕上げにこだわっている。より小型で価格も安い「KX-0.5」など標準クラスの機種はウレタン塗装。上位クラスでは、仕上げに手がかかるが、表面が硬くなり、音質にもいいポリエステル塗装を採用している。表面はピカピカとして高質感だ。
スピーカー端子は、高域用と低域用が独立したバイワイヤリング仕様で、2組のケーブルを使ってアンプと接続することで、ウーファーが動いた際に発生する電力(逆起電力)がツィーターに干渉するのを防げる。しかし、付属するジャンパーケーブルは太く高品位なので、シングルワイヤーでの接続でも、高いパフォーマンスを発揮する。線材は、内部配線と同じ、マグネシウム芯線にPC-Triple Cの銅線を巻き付けたものが採用されており、バランス感に優れた高品位な再生だ。