耳穴の軟骨を振動させるイヤホンタイプは、音質面でも有利
BoCo株式会社の磯部純一氏は以下のように話す。
磯部 「われわれは、様々な特許を取得し、骨伝導デバイスを自社工場で作っています。コイルや振動板の改良によって、性能の改善を続けていて、骨伝導デバイス自体の性能という点では、他社より頭一つ抜けている自負があります。しかし、製品として仕上げるためには筐体の形状や装着方法、デザインの良さについての試行錯誤が必要で、ここに苦労してきました。
これまで、こめかみ、耳の後ろ、クリップ形状など様々な方法に取り組み、どれも一定の評価を得られましたが、製品開発段階で、むきだしの骨伝導デバイスを頭に当てて聴いている際に感じる、音質の良さをどうやったら伝えられるかが大切です。
骨伝導デバイスを当てる場所として、いま一番自然に聴こえると考えているのは、耳穴の軟骨です。ほかの場所と比べて、音圧も倍ぐらい違いが出ます。最初はイヤーフック型をベースにした製品を企画しましたが、直径10mmと小型のサイズを生かし、耳の中に入れられるシンプルな形状の骨伝導イヤホンを作ろうと考えたのが今回のプロジェクトのきっかけです。
骨伝導デバイス単体では、業界標準となっているキーエンスの計測器で、振動波の波形を計測したところ、測定限界の4Hz~40kHzという数値が出ています。ただし、装着方法でこの数値には違いが出ますし、イコライジングなどのノウハウも必要です。PEACEでは、クリップタイプの骨伝導イヤホンと同じアンプを使用していますが、スマホアプリでモードを切り替えることで、複数の再生モードが選べます」
なお、骨伝導イヤホンは、空気を振動させる一般的なイヤホンとは仕組みが異なるため、出力音圧レベルなどの測定方法に標準的なものがない。そのため、実使用での聞こえに沿った感覚的な数値となるが、BoCoの従来の骨伝導イヤホンが72dB~92dB/mWで合ったのに対して、新開発のカフタイプは、装着位置/骨伝導デバイスの保持構造の工夫によって、106dB程度とより大きな聞こえを得ることができているという。