前回の最後でUSB Type-CとWindows 10の関係について、さらに掘り下げると書いたが、今年秋のWindows 10のバージョンアップになる予定となっている、19H2のプレビューが開始されたので、こちらを紹介する(USBについては次回掲載予定)。
来春提供予定のバージョンアップ、20H1より後に
今春予定の19H2のプレビューが登場
来年春のバージョンアップとなる20H1のプレビューがすでに2月から開始されているのだが、これに対して、今秋のバージョンアップのプレビューは、19H1のリリース後の「今年春後半」からと公表されていた。
これまで、Windows 10のプレビュー版の公開は提供順に実施されていた。このため、19H1がWindows 10 Ver.1903として公開されたのにもかかわらず19H2のプレビューが始まらないというのはこれまでとは違う流れと言える。
その19H2のプレビュー版として公開されたのは、Build18362.10000というもの。このビルド番号は、実はVer.1903と同じなのだ。つまり、19H2のプレビュー版は、19H1と同じビルドをベースにしてアップデートされたものと言える。
通常のプレビュー版では、リリースするたびに毎回ビルド番号が更新されていく。これは、新しいWindowsを作るために、ソースコードが改良されるのにともない、毎日のビルド作業に合わせて番号をつけていくからだ。
同一のビルド番号は、元になるソースコードがほぼ同一のものだが、品質アップデートのたびにピリオド以降の数字を増やして「細かな違い」があることを示す。
たとえば、Ver.1903の6月末の品質アップデートにより、現在のVer.1903は、Build18362.207となった。なお、ピリオド以降は、いわゆる小数ではなく、単なる数字である。これは、2つの数字をピリオドでつなげたものであり、ピリオド以降では、たとえば、Build18362.207の「.207」よりもBuild18362.10000の「.10000」のほうが大きな数字として扱われる。
小数点以下の数字で4桁となるものは、Xbox One用のWindows 10で使われている。このため、これらと重複しない10000という大きな数を選んだのだと想像できる。
19H2に関する情報をMicrosoft Blogの情報からチェックする
19H2に関しては、現時点で以下の2つのブログの投稿がある。
●Windows Experience Blog(ともに英語)
Announcing Windows 10 Insider Preview Build 18362.10000 (19H2)
https://blogs.windows.com/windowsexperience/2019/07/01/announcing-windows-10-insider-preview-build-18362-10000-19h2/#OePbWvYklo2cHatA.97
Evolving Windows 10 servicing and quality: the next steps
https://blogs.windows.com/windowsexperience/2019/07/01/evolving-windows-10-servicing-and-quality-the-next-steps/#UiJ1wSKJeO2wFQi3.97]
これによると19H2のプレビュー版は、Windows Insider ProgramのSlow Ringで配布されるという。つまり、Windows 10の「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Insider Program」でWindows Insider Programに参加し、「Insiderの設定」で「スロー」を選択すれば、19H2のプレビューに参加できる。
なお、ここで「ファスト」を選択すれば、20H1のプレビューとなる。ただし、19H2のプレビュー版をインストールするには、あらかじめVer.1903(19H1)にバージョンアップされている必要がある。
19H2のプレビューは、毎月の品質アップデートと同じように配布されるという。Windows Updateのうち「機能アップデート」(いわゆるバージョンアップ)では、ビルド番号の違うWindowsを“再インストール”する。このため、再起動時に「Windowsの更新を構成しています。xxパーセント」といった表示が出て、数分から数十分の間Windowsが利用できない時間がある。これまでのプレビュー版でも、何回かに一回は、再インストール処理が行なわれていた。
これに対して「品質アップデート」では、再起動は要求されるものの、再起動するまでの時間は短く、すぐにWindowsを利用できる。これは、実行中に差し替えることができないWindowsのファイルを差し替えるためにいったんWindowsを止めるためだ。ブログによれば、19H2のプレビュー版は、この「品質アップデート」と同じだという。
また19H2は、「パフォーマンスの向上」「エンタープライズ機能」「品質強化」からなるバージョンアップだという。新機能がないわけではないが、性能や品質の向上を中心にしたものになるらしい。また、19H2のプレビューには、Ver.1903の品質アップデートが含まれており、今回のBuild 18362.10000は、Build18362.207の更新を含んだものとなる。
ただし、今回のプレビューは、目に見える変更点は含まれておらず、OEM向けのデザインの変更点が2ヵ所あるのみだという。つまり実質的には、今のVer.1903と同じというわけだ。しかし、マイクロソフトは、これを使って、アップデートの仕組みなどをテストする目的があるのだとする。
今後のプレビューでは、新機能などが追加される可能性があるが、そのときには、CFR(Controlled Feature Rollouts)により、段階的に機能の有効化がなされる。つまり、新しいアップデートを入れたとしても、必ずしも、すべてのユーザーが新機能を利用できるわけではないということだ。これは、現在のWindows Insider Programでもときどき実施されているもので、同一のプレビュービルドをインストールしたそれぞれのマシンで機能が違っていることがある。
結局のところ、2019年のWindows 10はどうなる?
これらの情報から今年秋のバージョンアップの姿を考えてみる。
プレビュー版でビルド番号が更新されず、リリース後のWindows 10のようにビルド番号のドットの後ろのみが更新されていくのだとすると、19H2は「19H1の安定版」になると考えられる。つまり、ベースとしては19H1だが、その品質やパフォーマンス改良と若干の「小さな機能追加」がなされ、より安定したバージョンになるのだろう。
また、新機能についても、これまでのWindows Insider Programのプレビュー版には、ビルド番号とは無関係の独立した改良点が含まれていた。たとえば、改良された標準添付アプリは、現行バージョンにもすぐに反映されたり、コルタナのようにサーバー側の機能に依存するものは、Windows Updateを経由しなくても自動的に変更されることがあった。標準添付アプリの機能追加などもWindows 10の機能追加だとすれば、新機能がまったく入らないとは断定できない。
また、大きく変わるのは、秋のバージョンアップそのものだ。これまでのWindows 10のバージョンアップでは、必ず新しいWindows 10の起動イメージが作られて、再インストールがされていた。19H2のプレビュー版が再インストールの必要がない更新のみでできるとすると、秋のバージョンアップでも、再インストール処理が不要になる可能性が高い。
実際に前述のブログでは、Windows Updateでは差分アップデートが行なわれるため、プレビューのアップデートは短時間で終了し、正式リリース時には、短時間で更新が終了するとの記述があった。
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