情報銀行をめぐる動きが、本格化しはじめている。
情報銀行は個人のデータを預かって管理し、本人の希望に基づいて他の事業者にデータを提供する仕組みだ。
日本IT団体連盟(IT連)は2019年6月21日、三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティングの2社を、情報銀行として初めて認定した。
さらに7月に入って、電通グループのマイデータ・インテリジェンス(MDI)が実証実験「情報銀行トライアル企画」をはじめた。
IT連の事務局としては「引き続き審査中のところもあり、年内に数社は認定できれば」との考えだ。
情報銀行制度が難しいのは、民間団体による自主的な認定制度である点だ。
認定を受けていない業者が情報銀行を名乗って、明日からサービスを始めても問題はない。
実際、MDIは情報銀行の認定について申請中だが、大手企業10社、生活者1万2000人が参加するトライアル企画の実施に踏み切っている。
個人データの囲い込みを目指す各企業の動きが今後、激化しそうな状況にある。
●政府は「対GAFA」鮮明に
膨大な個人のデータを基に、さまざまなサービスを開発しているGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国の大手IT企業を相手に、日本企業は何ができるだろうか。
情報銀行は、対抗策を検討する中で浮上した考え方だ。
政府は、情報銀行をめぐる動きはGAFAに対抗するものであるとの考えを明確にしている。5月29日に開かれた衆議院内閣委員会での、平井卓也IT担当相の答弁が参考になる。
「GAFAみたいなものが世界を席巻したときに、人間、国民中心に考えた情報の扱い方というものを議論すべきだと。それが今世の中に出てきて、すでに情報銀行も始まりました。またデータ取引市場もスタートしました。これは日本発の、GAFAが席巻する今のデジタル市場の中で新しい考え方だと思うんですね」
制度設計をする上で、政府による規制を中心に組み立てると、民間企業の動きが阻害されるかもしれない。かといって扱うデータが個人情報である以上、完全な自由競争では心配だ。
自由な状態とガチガチに規制された状態の中間あたりに位置するのが、日本の情報銀行の制度だ。
個人データを扱う企業のプライバシー保護やセキュリティー対策といった項目をIT連が審査し、認定を付与することで、「安心して利用してもらう」という考えが背景にある。
ただ、認定を受けずに情報銀行を名乗ってサービスを始めたとしても問題はない。認定を受けている事業者には「弊社は安心して利用していただけます」とアピールできる強みはある。
●主導権争いが始まった
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