欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)は6月19日、内太陽系(地球が太陽を周回する軌道よりも内側)に初めて進入してくる彗星を捕捉するための小型宇宙探査機を打ち上げる「コメット・インターセプター(彗星迎撃機)」計画を発表した。2028年に打ち上げ、地球から約160万キロメートル彼方で、興味深くて接近可能な彗星を発見するまで待機する予定だ。ただし、どの彗星を観測するかはまだ分かっていない。
コメット・インターセプターは3機の探査機で構成され、遠くの恒星を周回する惑星の大気を研究するための大型宇宙望遠鏡「アリエル(Ariel)」とともに打ち上げる計画だ。設計チームは、チリのアタカマ砂漠に建設されている新しい巨大望遠鏡を使って、十分離れた場所にある彗星を前もって見つけておき、コメット・インターセプターの進路を作成する考えだ。コメット・インターセプターが地球から約160万キロメートル(月までの距離の約4倍)離れたところに位置するラグランジュ点(月と地球の重力でつり合いが取れる場所)「L2」に到着してから2年から3年以内に、候補となる彗星が見つかることを期待している。
適切な軌道上で彗星が発見されたら、コメット・インターセプターの3機の探査機はL2を離れて、太陽系を横断して標的となる彗星を追跡する。そして、彗星に到着する1日前から3週間前の間に、3機はそれぞれの方向に分かれる。
2機の探査機は彗星の核(中心にある固体部分)近くを通過し、彗星の核と尾の構造を調べるのに十分なデータを集める。これら2機のうちの1機は日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、もう1機は欧州宇宙機関(ESA)が開発する予定だ。同じくESAが開発する第3の探査機は 安全な距離(100キロから1000キロメートル)をとって彗星付近を通り、バックアップとデータ中継を担う。
1ダースほどの異なる探査機が9つの彗星にすでに着陸している。だが過去のすべてのミッションは、内太陽系で多数の軌道(またはその一部)に入ってきたことがある彗星への着陸だった。太陽系から離れた場所や太陽系外から初めて進入してきた彗星を観測するのは、コメット・インターセプターが初となる。
天文学者たちは、地球上に存在する水の「一部」を彗星がもたらしたことにはおおむね同意しているが、もたらした水の量に関しては激しい論争がある。太陽系外から来た彗星の研究は、その謎を解明する手掛かりになるかもしれない。