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「RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019」で開催、グランプリはテレビ朝日/テレビ朝日サービスチーム

RPAの業務ロボ開発コンテスト、企業3チームがアイデア競う

2019年06月12日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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テレビ朝日/テレビ朝日サービス:効率化に加えサービス向上など将来展開も見据える

 テレビ朝日/テレビ朝日サービスチームは、RPA導入によって「バックオフィス業務の効率化」にとどまらず「サービス品質の向上」を実現し、さらに将来的には「コンテンツ制作への応用」までを検討していることを紹介した。

(右から)テレビ朝日 技術局 設備センター 兼 インターネット・オブ・テレビジョンセンターの胡子裕之氏、テレビ朝日サービス ソリューション事業局 システム事業部 マネージャの出縄政剛氏、テレビ朝日サービス ソリューション事業局 システム事業部 RPAエンジニアの藤鬼希江氏

 テレビ朝日グループでは従来の放送事業(地上波/BS/CS)だけでなく、インターネット放送の「AbemaTV」やコンサートといった多メディアへの事業拡大を図っている。その中で人手不足の課題が生じていることから、まず“ステージ1”として、RPAによるバックオフィス業務の効率化を実践してきた。作成中のものも含め、現在100体程度のロボットがバックオフィス業務を支援しているという。

“ステージ1”のバックオフィス業務効率化では、さまざまな業務を自動化支援するためにすでに100体程度のロボットを作成しているという

 このように既存業務をロボット化/自動化するだけでなく、サービス品質の向上にもRPAが使えるのではないかと考えたのが“ステージ2”の取り組みだ。ここではRPAと何か別の技術、たとえば文字認識や音声認識、映像認識といった技術を連携させることを意識したという。今回は「RPA+映像認識技術」で実現した「映像再生チェック業務」のロボット化を紹介した。

 テレビ朝日本社の1階アトリウムには、来場者向けのインターネットテレビ展示端末(デジタルサイネージ)が設置されている。ここではAbemaTVなどインターネット放送のコンテンツがリアルタイムに放映されているが、その再生が停止してしまうケースがある。これまでは警備員に依頼し、1時間に1回巡回チェックをして、映像が停止していれば連絡を受けた担当エンジニアが復旧作業を行うという手順をふんでいた。警備員はチェック業務に時間をとられ、また復旧するまでにも時間がかかっていた。

 そこで、この稼働状態監視と復旧という一連の作業をロボット化することにした。具体的には、サイネージで表示している画面を数秒に1回キャプチャして、画像比較ツールを実行して前回の画面と比較する。もしも比較内容がずっと同じ(しばらく画面が変わっていない)ならば映像が停止していると判断して、映像を表示するブラウザを再起動させるというものだ。これによりサイネージの稼働監視業務を完全に自動化しており、チェック頻度も1時間に1回から20分に1回に短縮されたため「サービス品質向上を実現できた」と語る。

これまでの映像再生チェック業務と、それをロボット化で解消した概要。数秒ごとに画面キャプチャを行い、画像どうしで変化がなければ再生が停止していると判断する

 今後の展開となる“ステージ3”では、コンテンツ制作へのRPA応用を検討しているという。たとえばオンエア前の映像から文字情報を抽出し、AIが自動的に「誤字脱字チェック」を行うことで、確認作業の省力化ができないかと考えていると説明した。

 まとめとしてテレビ朝日の胡子氏は、RPAは「いろいろな人の知恵、意見交換、コミュニケーションがなければなかなか導入できない、泥臭い技術だと感じた」と述べ、ロボット化を進めるうえでは業務現場から生まれるアイデアと率直な意見交換が欠かせないものであることを強調した。

これからはコンテンツ制作へのRPA応用も考えていく。オンエア前の映像素材から文字情報を抽出し、AIによる誤字脱字チェックを行うことで、担当者の業務負担を軽減する

 審査の結果、今回のワクロボ! 企業対抗戦部門ではこのテレビ朝日/テレビ朝日サービスチームがグランプリを獲得した。審査員総評の中でアビームコンサルティングの安部慶喜氏は、バックオフィス業務の効率化にとどまらず、RPAに新しい技術を組み合わせながら品質向上やコンテンツ制作といった新たな用途への展開を進めている点が特徴的だったと説明。また最後のコメントも印象的だったと述べ、ロボットの進化と同時に人間もアイデアを出しながら進化していくという姿勢を高く評価したと語った。

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