カメラ記者クラブが主催する「カメラグランプリ2019」の授賞式が5月31日に実施され、パナソニック、ソニー、オリンパス、リコー、タムロンの担当者らが表彰された。授賞式の様子と、表彰を受けた製品を紹介する。
カメラグランプリは、カメラ・写真雑誌の編集部で構成されるカメラ記者クラブが主催する年に1度のイベント。カメラグランプリ 2019では、記者やプロカメラマンの投票によって、2018年4月から2019年3月までに発売となった全カメラとレンズを対象とした選考が行なわれた。
カメラグランプリ 大賞
パナソニック「LUMIX S1R」
カメラグランプリ 大賞に選出されたのは、パナソニック初となる35mm判フルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R」だ。
「機能的、性能的、官能的に全方位的に優れている。2008年に世界で初めてのミラーレス機となるLUMIX G1を発売し、脈々と培ってきた技術を結実させた」「有効約4730万画素のCMOSセンサーと画像処理エンジンによる高解像度な描写は、シャープでありながらも硬過ぎず上質で艶がある」「有機ELを使った電子ビューファインダーは高精細であり約0.78倍と高い倍率で、その見栄えはミラーレス機として最高峰にある」(寸評より抜粋)と、同社の歴史も汲んだ、非常に高い評価を受けた。
表彰を受け、パナソニック アプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 イメージングビジネスユニット長の山根 洋介氏は「徹底的にプロが使えるカメラとして開発したところが評価されたと思います」とコメント。コンセプト段階から、プロ使用に耐えうる機能と使い勝手を追求した結果の受賞だ。
カメラグランプリ レンズ賞
ソニー「FE24mm F1.4GM」
レンズを対象とした「カメラグランプリ レンズ賞」に選出されたのはソニー「FE24mm F1.4GM」。
「同社の光学技術を集結し、解像力とボケの美しさを高次元で両立させたG Masterシリーズの中でも現時点で最も広角の大口径単焦点レンズ。広角かつ大口径でありながら、画面最周辺までサジタル/メリディオナル両方向の画質差がほとんどなく、点光源の像のにじみを徹底して抑えており、高解像で収差の少ない際立った高画質な写真が得られる」「他社と比べて小型・軽量を実現しており、最近の性能は高いが大きく・重いレンズとは異なる」(寸評より抜粋)と、口径が大きく、また高画質を実現しながら、軽量化にも気を配り、使いやすいレンズに仕上げた点が評価された。
ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ デジタルイメージング本部シニアゼネラルマネージャの長田 康行氏は「妥協しない最高のレンズを製品化できた結果」とコメント。同社のG Masterシリーズは「カメラが好きなら、いつかは手に入れたい」と思うシリーズだが、今回の表彰で「FE24mm F1.4GM」はカメラグランプリの折り紙付きに。狙っていた読者は今が買い時かも?
あなたが選ぶベストカメラ賞
オリンパス「OM-D E-M1X」
ユーザーからの投票で選出される「あなたが選ぶベストカメラ賞」には、オリンパスのミラーレス一眼カメラ「OM-D E-M1X」が選ばれた。
「ミラーレス機におけるフラッグシップ機の価値観を変えた1台。マイクロフォーサーズでありながら、縦位置グリップ一体型を採用し、縦横どちらでも同じホールディング性と操作性を実現していること、最大7.5段分の5軸手ブレ補正機構、防塵・防滴構造、耐低温構造により過酷な環境下でも安心して使用できる信頼性、動体追従に優れるAF性能を評価」(寸評より抜粋)と評価されたほか、ユーザーからは「見た目がダントツにかっこいい」「他社の真似、二番煎じではなく同等の機種が存在しない」といった意見も寄せられた。
オリンパス 映像事業担当役員の杉本 繁美氏は「究極のミラーレスカメラとして、ユーザーのみなさんに評価していただけた」と誇らしげにコメント。同社も、パナソニックと共同でマイクロフォーサーズ規格の策定に関わっているが、パナソニックとは別軸で、ユーザビリティの高い製品の開発を続けた結果の受賞と言えるだろう。
カメラ記者クラブ賞
リコー「GR Ⅲ」
カメラ記者クラブのメンバーが合議で選ぶ「カメラ記者クラブ賞」は、リコー「GR Ⅲ」とタムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」の2製品が受賞。
GR Ⅲについては「ボディーサイズは前モデルより小さくなり、マクロ撮影といった使い勝手も進化。動作レスポンスもよく、ボディー内手ブレ補正機構の採用などカメラとしての完成度を高めている。シリーズの歴史や根強いファンの存在を抜きにしても、コンセプト重視の思想と完成度の高さを評価」「スマートフォンではなく、写真機で撮影することの意味を感じる。コンパクトデジタルカメラという分野への希望を与え、ハイエンドコンパクトカメラの可能性を示唆したモデルである」(寸評より抜粋)と、スマートフォンのカメラ機能が年々ハイクオリティーになっていることも意識したカメラ記者クラブのコメントにも注目したい。
映像関連機器の開発、製造・販売に携わる会員による国際的な業界団体であるカメラ映像機器工業会(CIPA)の公表している統計によれば、レンズ一体型カメラの国内向けの出荷台数は、2014年が397万7050台だったのに対し、2018年では178万5593と、半数以下になっているから、コンパクトカメラの市場は縮小傾向にあると考えて誤りでないだろう。
28mm相当の単焦点というこだわりの画角で、完成度を高め続けたモデルが評価されることは、まさに「コンパクトデジタルカメラという分野への希望を与え、ハイエンドコンパクトカメラの可能性を示唆」していると言えるのではないか。独自路線で健闘し続けた結果の受賞だ。
カメラ記者クラブ賞
タムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」
28-75mm F/2.8 Di III RXDは「メーカー純正とは異なる独自の魅力を持つレンズを提供するタムロンらしい製品。広角端を28mmとすることで、ズーム全域開放F2.8でありながら35mm判フルサイズ対応レンズとしては、驚くほどの小型化を実現している」「価格も抑えられている。ユーザー視点で企画されたと感じる。バランスが良くまじめに作られたレンズで、フルサイズミラーレス機のユーザー人口を広げる可能性がある」と評価された。
タムロンにとってこのレンズは、新体制で商品化した第一弾商品だったらしく、タムロン 映像事業本部 執行役員の沢尾 貴志氏は「新体制で商品化した第一弾の製品が受賞できて光栄」とコメントした。同社のレンズは、「メーカー純正が欲しいけど価格的に手を出せない」といったユーザーから、独自の写りに惚れ込んで指名買いするユーザーまで、幅広い層の支持を受けている。「ユーザー視点で企画された、バランスが良くまじめに作られたレンズ」という評価にも納得だ。
ちなみに、昨年の「カメラグランプリ 2018」ではソニー「α9」が大賞となっているから、今年のパナソニック「LUMIX S1R」の受賞は、フルサイズ+ミラーレス時代が成熟に入ったと受け取れるかもしれない。トピックとしては、ニコンとキヤノンが不在の授賞式となったことも大きい。今年に入ってから、ニコンは「Z」シリーズ、キヤノンは「EOS R」から新製品をそれぞれ発売しているから、来年の授賞式にも注目したい。