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マルチクラウド時代のデータセンターサービスはどう「変わる」べきか【前編】

アット東京は「クラウド時代のデータセンター」の未来をこう考える

2019年05月16日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 アット東京では今年4月、新サービスとなる「データベースコロケーションサービス for IBM Cloud Direct Link」(以下、DBコロケーションサービス)を提供開始した。オンプレミスのデータベース(DB)システムとIBM Cloud上のアプリケーションを低遅延/広帯域の構内ネットワークで直接接続し、エンタープライズの基幹システムに適した高品質なハイブリッドクラウド環境を構成するためのサービスだ。

 顧客企業においてハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用ニーズが高まる中で、アット東京ではこうした新たなデータセンターサービスの開発と提供に注力している。このサービスはどのようにして生まれたのか、またこれからのデータセンターサービスはどう進化していくのか。ソリューション営業担当の長岡洋介氏、ネットワーク技術担当の井上周氏に話を聞き、将来像を考えてみた。

アット東京 営業本部 ソリューション営業部 専任部長の長岡洋介氏、アット東京 ソリューション本部 ネットワークサービス部 ネットワークサービスグループ 主任の井上周氏

オンプレミスDBとクラウドを低遅延で結ぶサービスが必要だった理由

 DBコロケーションサービスは、アット東京内のDB専用コロケーションスペース(ラック設置スペース)と冗長電源、IBM Cloudとのダイレクト接続ネットワーク(「プレミアムコネクト for IBM Cloud」や、アット東京のデータセンター内の相互接続をサポートするプラットフォーム「ATBeX」[アットベックス、AT TOKYO Business eXchange])をパッケージ化したメニューを提供するものだ。「Oracle Exadata Database Machine」や「Oracle RAC」のような、高性能かつミッションクリティカルなDB環境を組み込んだハイブリッドクラウド環境を構成することを目的としている。

 このDBコロケーションスペースはIBM Cloudと同一ロケーション内にあり、構内ネットワークでダイレクトに接続できるため、クラウド環境からでもオンプレミス環境に匹敵する低遅延でのDBアクセスが可能になる。これが同サービス最大のメリットである。

「データベースコロケーションサービス for IBM Cloud Direct Link」の構成図

 ソリューション営業部の長岡氏は、特にエンタープライズ顧客が基幹システムのクラウド移行を検討する際に、「低遅延でのDBアクセス」という要件が障壁となるケースが多かったと説明する。「昨年、一昨年あたりから、この課題を何とかできないかという声が増えていました」(長岡氏)。

 他方で、エンタープライズ顧客に対し積極的にクラウドシフトを提案しているIBMでもまったく同様の課題を抱えていたという。そうした顧客ニーズの高まりを両社が実感していた結果、今回の新サービスが誕生することになった。

 「これは私見ですが、もともとIBMさんとアット東京は『エンタープライズの基幹系システムに強みを持つ』『お客様のミッションクリティカルなシステムやデータをお預かりする』という点で、近しいスピリットを持っていると感じていました」(長岡氏)

長岡氏

 もうひとつ、必要なサービス群を「パッケージ化」することで、顧客がわかりやすく、使いやすいサービスメニューにすることも狙いだったという。

 実は、DBコロケーションサービスにバンドルされているサービス群(ネットワーク、設置スペース、電源)は、もともと個別のサービスメニューとして提供されていたものだ。実際、過去には個別案件としてこれらのサービスを組み立て、提供したこともあった。

 「ですが、標準のサービスメニューに載っていないと、お客様にはそういうことができるということも伝わりません。また個別対応となると、どうしても作業時間やコストがかかってしまいます。今回のようにあらかじめサービスをパッケージ化することで、金額や条件面がお客様にわかりやすくなり、そのメリットも伝わります。標準化によって作業時間やコストも節減できます」(長岡氏)

 もちろんパッケージサービスとはいえ、顧客要件に応じてオプションサービスを追加してカスタマイズすることも可能だ。たとえば今回の場合、DB環境の新規構築/移行に関しては株式会社アシストと協業し、Exadata/Oracle DBのインテグレーション(SI)作業も依頼できるようになっている。

急速に高まるクラウド接続ニーズと、求められる「なぜアット東京なのか」の答え

 今回のDBコロケーションサービスが必要とされた背景には、エンタープライズ顧客におけるクラウドシフトの動きがあるのは言うまでもない。そしてデータセンター事業者には、高品質なハイブリッドクラウド環境を実現するためのサービスが求められるようになっている。

 ネットワーク技術担当の井上氏は、データセンターのネットワークサービスに対するニーズが「クラウド接続」に大きくシフトしてきたと語る。

 「わたしはお客様のご要望に応じてネットワーク構築/設定を行う役割ですが、3年前はまだインターネット接続サービスが中心でした。しかし最近では、主要クラウドの接続ポイントとダイレクト接続(物理接続)が行える『プレミアムコネクト』や、レイヤー2接続できる『ATBeX』のご利用が非常に多くなっています。さらに、クラウド接続のためのルーター運用をわれわれが代行する『マネージドルーターサービス』も人気ですね」(井上氏)

井上氏

 長岡氏も「『クラウドへの接続』が最近のホットワードであることは間違いない」と同意する。すでに商用データセンターを利用しているが、システムリプレースのタイミングでハイブリッドクラウド化を検討し、「それならばクラウドと接続しやすいデータセンターに移したい」とアット東京を選ぶ企業が増えているという。

 「最近ではクラウドからの“オンプレ戻り”(オンプレミス環境への再移行)という言葉も聞かれるようになりました。少なくともしばらくの間は、パブリッククラウドとオンプレミスの両方を使いたいというニーズが強いと考えています。そのハイブリッド構成を実現しやすい環境というのが、現在のアット東京が持つ強みのひとつになっていると思います」(長岡氏)

 パブリッククラウドが当たり前の存在になった現在、データセンターはあらためてその役割と価値が問い直されている。単にスペースとコストだけではなく、ファシリティの堅牢性や信頼性、物理セキュリティや電力供給の安定性、付帯サービスの充実度、そしてクラウドサービスや通信キャリアとのコネクティビティ(接続性)など、「なぜそのデータセンターを選ぶのか」の答えが強く求められているわけだ。

「標準サービスでは収まらないニーズ」に応えることが“次”につながる

 長岡氏は、アット東京が歩んできた道のりをいくつかのフェーズに分けて紹介しながら、現在のような「強み」を持つに至った理由を説明した。

 事業開始当初のアット東京は「堅牢なファシリティ」を一番の強みとしてアピールしていた。その結果、ミッションクリティカルなシステムを多く抱えている、サービス要件の厳しい企業が多く集まるデータセンターとなった。次に、外資系顧客やインターネットビジネスのニーズから、ネットワークの「コネクティビティ」が重要視されるようになった。そこで海外系を含むキャリアやISP、IX(インターネットエクスチェンジ)の接続ポイントをデータセンター内に集め、顧客のニーズに合ったネットワークサービスを柔軟に利用できるようにした。

 「次に出てきたキーワードが『クラウド』です。イノベーションの源であり、お客様も真剣にクラウドのビジネス活用を考えられている。アット東京として、クラウドとの親和性をどう追求していくのか。そこで出た答えが、主要なクラウドプロバイダーとデータセンター内で閉域網接続できる『クラウド接続サービス』でした」(長岡氏)

 そしてその次が、基幹システムのクラウドシフトニーズの高まりに対応した今回のDBコロケーションサービスということになる。

 「『止めない、止まらないデータセンター』という絶対的な基本は守りつつ、いち早く次のフェーズに進み、お客様に選ばれるデータセンターになるにはどうしたらよいのかを日々考えています。『ここがゴール』ということはありません」(長岡氏)

 “次”を考えるうえでは、いつでも「標準のサービスメニューで収まらない顧客ニーズ」が大きなヒントになってきたという。先進的かつサービス要件の厳しい顧客が多く集まり、多様なリクエストを出してきたこと、そしてその要求に応え続けてきたことが、アット東京のデータセンターサービスを「鍛えた」と言えるだろう。

 より大きく変化する顧客ニーズに対応するため、さらに新しいサービスの開発にも着手していると井上氏は語った。

 「クラウド接続の案件が増える一方で、対応スピードの速さも求められるようになっています。特にATBeXは論理接続のサービスなので、お客様は『きっと短納期でできるよね』と考えられます。そこで、現在はわれわれが設定を行っているところをSDN化し、ポータル画面からセルフサービスで設定作業が完了できるようにしようと準備を進めています」(井上氏)

 マネージドルーターサービスについても、より短納期でサービスインできる新たな仕組みを検討しているという。クラウドサービスの利用が一般化する中で、データセンターサービスも顧客が期待するスピード感に追いつくことが求められているようだ。

 長岡氏は、データセンターという立場はクラウドプロバイダーや通信キャリアをニュートラルに見られる立場であり、それぞれのメリットも実経験として理解していると語る。そうした立場を生かし、新たなイノベーションを起こすことが目標だと語った。

 「今回のDBコロケーションサービスはエンタープライズ向けですが、それではより幅広い規模のお客様にはどんなサービスが考えられるでしょうか。イノベーションを待っているのではなく、アット東京自身がデータセンターという立場から『イノベーションを起こす』存在になれないか。最近はそんなことを考えています」(長岡氏)

(提供:アット東京)

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