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少なくとも神奈川の港町ではMobikeとLet's Bikeの勝負は明らかだった

シェアサイクルだから実現できたGWのノスタルジック地元旅

2019年05月05日 12時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 平成から令和になった長ーいGWの1日を使って、10代を過ごした神奈川県大磯町まで行ってきた。シェアサイクルを利用することで、あの頃に戻ったようなノスタルジックな風景が感じられたので、地方のシェアサイクル事情と合わせてレポートしていきたい。

役場の駐輪場にはLet's BikeとMobikeの自転車が利用可能だった

地元に戻ったら、Let's BikeとMobikeという選択肢

 東京から見れば、横浜や鎌倉より遠く、かといって小田原ほどは行かない程度の場所にある神奈川県の大磯町。山と海に囲まれたこの小さな町で、私は10代を過ごした。今回、かみさんの思いつきで、GWでもあまり混まないであろうこの大磯に子どもたちを連れていくことにした。朝早く都内の家を出て、東京駅から東海道本線で1時間10分。本当に久しぶりの元・地元だ。

東海道本線は満員で、結局70分間立ちっぱなし。上野東京ラインの登場で、東京が必ず座れる始発駅にならなくなったのがつらい

 今回は自転車を借りて、私が走り回った地元を巡る計画だった。普段からまったく車に乗らないので、レンタカーという選択肢はないが、徒歩ではどうしても行動範囲が限られてしまう。地元の観光マップを渡されても今まで行くすべはなかったのだが、自転車があればいろいろ回ることができる。

 調べてみると、駅前や役場、港などで自転車を借りることができ、しかも最新のシェアサイクルサービスだ。大磯町ではドコモ・バイクシェアの「Let's Bike」とモバイク・ジャパンの「Mobike」の2つがサービスを展開している。昼時に着いた私たちは地元のパン屋「パンの蔵」で買ったランチを海辺でほおばりながら、どちらを借りるか検討した。

 料金を調べると、Let's Bikeの方が500円/4時間で、Mobikeは120円/30分。これだけでもコスパに大きな差があるのだが、決定的に違うのはLet's Bikeの自転車は電動であることだ。山も海もある大磯は高低差があるので、正直電動じゃないとかなりつらい(若い頃は全然大丈夫だったのに)。この時点でLet's Bike優位だ。

 外見見た限りだが、グローバル仕様を謳うMobikeは自転車本体もやや難ありだ。まず小学生が利用できる位置までシートが下げられないし、ギアらしきものもないし、かごも正直小さい。実際のMobikeの使い勝手については重森さんが「シェアサイクルを通じて日本と世界の違いを垣間見た」でも書いているのだが、シンプルさを追求した結果、必要なものまで削ってしまった印象だ。ちなみに大磯の駐輪場ではどこもMobikeの自転車が相当数余っており、Let's Bikeの自転車は利用済み。少なくとも神奈川の港町では、Let's Bikeが圧勝だった。

港の駐輪場。右がLet's Bikeで、左がMobike

不案内な観光地で電話サポートを受けられるありがたさ

 さっそくLet's Bikeでアカウントを作成する。ログインすると、近所の駐輪場で借りられる自転車がリストアップされるので、これを予約すればよい。今回は会員サイトからログインして、自転車を予約し、パスコードを発行してもらうという方法をとったが、ICカードを登録しておけばFelicaカードリーダーにかざすだけで利用できる。

 真っ赤なLet's Bikeの自転車は、都内で見かけたことがある人も多いかもしれないが、座席の下にテンキーとFelicaのカードリーダーを持つ電子錠ボックスが搭載されている。テンキーによるキー解除はアナログだが、わかりやすい。スマホアプリに完全依存している印象のMobikeに対し、Let's Bikeは使い方マニュアルがきちんと駐輪場に貼ってあり、サポートの電話番号まで載っているので丁寧。実際、家族分の4台を借りるまでは、ドコモ・バイクシェアの電話サポートにお世話になった。

テンキーとカードリーダーを搭載したLet's Bikeの自転車

 たとえば、Let's Bikeは1つのアカウントで複数台借りられないのだが(これは他の業者も同じだと思う)、その場でサポートに電話をかけたところ、アカウントを複数作ってしまえば、複数台使えるという。人数分アカウントを作り、町役場の駐輪場にあった3台を予約したのだが、どうしても最後の1台が確保できなかった。そこで再度サポートに電話したところ、港の駐輪場に未使用の1台があるとのことで、遠隔で予約を解放してもらった。遠隔でオペレーターから自転車の予約を解除するとか、すごくIoTっぽい感じだ。ともあれ不案内な観光地で、こうした親身な電話サポートを受けられるのはホントありがたいと思った。

自転車だから感じられた解像度の高い地元の風景

 無事4台の自転車を確保し、家族で町を回ったのだが、やっぱり自転車でよかった。細道の多い田舎は自転車の方が圧倒的に小回りが効くし、行ったり来たりがやりやすい。電動アシストが使えるおかげで、子どもたちも坂道を難なく進むことができた。なにより潮風を直接受けながら町を走り抜ける体験が、まったくもって10代の自分と同じ。あのとき乗っていたのも自転車だったのだ(電動じゃないけど)。

 今や他人の持ち物となった旧宅、昔通った小学校、学習塾、電車を眺めた線路沿い、旧東海道の坂道、シャッターの締まる店の増えた商店街などをグルグルと周り、意外と変わってない地元を感じ、さすがにノスタルジックな気分になる。結局、隣の平塚にあった高校まで足を伸ばし、海岸線沿いから大磯まで戻ってきた。おおむね3時間のサイクリングだが、10代を十分振り返るくらい回ることができたと思う。解像度の高い地元の風景だった。

自転車を降りて、最後は港を散歩。当時は当たり前すぎて行かなかった港の先に初めて行ったら、こんなに富士山がきれいだった

 ということで、初めてのシェアサイクル体験だったが、アカウント作りをのぞけば予想以上に快適だった。確かに利用者の観点からすると、いわゆる「レンタルサイクル」とそれほど変わらないのだが、運用側からするとテクノロジーによって人手をかけずに運用できるサービスに仕上がっているのではないか。実際、町役場や港の駐輪場はまったく無人だったが、みんなDIYで利用していた。

 裏を返せば、今まで設置が難しかった場所でも運用できるわけで、電車は通っていて、自動車に依存しきってないサブアーバンな地域(要は23区外の都内、神奈川、埼玉、千葉など)では手軽に利用できるインフラとして整ってほしいと思う。観光だけじゃなく、年老いた両親に自動車を運転させたくない家族の安価な移動手段としても、シェアサイクルありなんじゃないですかね。

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