ないと困るバーチャル体験を渇望
セミナー後は杉本氏、鳴海氏、舟越氏をパネリストとし、「VR関連技術によってもたらされる未来の生活」という題で1回目のパネル・ディスカッションが行なわれた。
モデレーターの坂本氏から、今日話にでた技術の活用は、「どれぐらい未来の話なのか」という質問に対して杉本氏は、ほぼ実際に行なわれている話であるが、ひとつのターニングポイントは市販化で、薬事法が通るかという話と、保険が掛けられるかという課題が超えられれば、数年後には当たり前になるという。
ただし、当然医療はVRでなんでも解決できる訳ではない。当たり前だが、実際に患者に会って、触らないと患者の状態が分からないし、遠隔で話しただけで薬を渡すということなどは責任問題にも発展する可能性がある。さらに、VR上ではアバターによるなりすましも横行する可能性もある、そうしたさまざまな課題も考えられるようだ。
鳴海氏は、表情を変えることに関してはビデオチャットで行なっていることなので、既に活用できるが、身体の変身に関してはまだまだ研究が始まったばかりだという。
たとえば、面接などで真面目なサラリーマンのアバターが良いという話になり、万人が同じアバターを使った場合、個性が失われる。そうした問題は抱えているという。
バーチャルマーケットに来られている方は千差万別。ロボットの恰好など、さまざまだという。舟越氏曰く、美しい女性アバターが腹の立つ話をしても、腹が立たないという。それだけ見た目は重要ということだろう。
また、杉本氏は、ハードを作っている工学科の方や研究者の方に、手術を上手くなってもらいたいという。自分たちがシミュレーターを作っているという気持ちでなく、自分が(手術が)上手くなるという気持ちで開発をすると、使う側の気持ちがわかってもらえるのではと考えているようだ。
逆に医者の方も医療だけやれば良いと考えず、誰かの橋渡しを得て、お互いの現場を見て、両方の共存ができればよいと思うと語った。
バーチャルマーケットの中に健康診断所があればという話でも盛り上がった。健康診断は実際の病院に行くのだが、バーチャルマーケットにデータを送ってもらい集約し、バーチャルマーケットで患者が自分のデータを入手できるようにすると便利だとのこと。
加えて杉本氏は、病気になっていない人に病気の状態をVRで体験してもらいたいという。普段を病気を気にしていない人も、悪いデータを見せるとマズイと感じ、そのためVRで病気の体験をすると健康に気を使うようになるそうだ。
さらに、リアル医療とバーチャル医療のレイヤーを分けて、バーチャルで良いことはバーチャルで行なうと効率化できる。太っていることに関してはバーチャルだと、とても分かりやすい。去年のアバターと自分の体を重ねると、どれぐらい変わったかがとても分かりやすく気づきになると語った。
現在のバーチャルリアリティーはアニメと同じで、あると良いが、なくても良い。そのため、ないと困るというバーチャル体験を行ないましょうという話で締めくくられた。