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英保健相が多遺伝子スコアをPRも、理解不足で逆効果に

2019年03月24日 11時47分更新

文● Antonio Regalado

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英国は、「多遺伝子スコア」と呼ばれる疾病予測の新たな手法を実現する大規模なデータベースを、他国に先駆けて開発している。多遺伝子スコアは基本的に、特定の病気を発病する可能性を、その人のゲノムから推定するものだ。

しかしながら、このコンセプトを広めようとした自国の保健相の努力は計画通りにはいかなかった。検査の有用性を示すはずが、時間と費用の無駄になる可能性をうっかり示してしまったのだ。

マット・ハンコック保健・社会福祉相は、ロイヤル・アカデミーでの講演において、オックスフォード大学のスピンアウト企業であるゲノミクスPLC(Genomics PLC)の新型の遺伝子分析を受け、16種類の一般的な疾患の予測されるリスクを計算してもらったと語った。

ネット上に公開されたプロモーション映像で、大臣は前立腺がんになるリスクが平均より高かったことを明らかにした。「75歳までに前立腺がんになるリスクが15%近い」ことを心配し、さらなる血液検査を受けるためすぐに病院の予約を入れたという。「実際のところ、ゲノミクスが私の命を救ったかもしれないのです」。

だが、事実は異なっている。すべての男性は極めて高い前立腺がんのリスクを持っているのだ。ハンコック保健・社会福祉相のリスクは平均よりも50%程度高いだけで、ごく普通に近い値だったのだ。特に大臣のような40歳の男性の場合は、病院に行って検査を受ける理由はないというのが、大臣が所管している国民保健サービス(NHS)の見解だ。

「自身の誤解のために大臣はまず不要な心配をし、次に、医療機関の貴重な時間を浪費してしまいました」。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン遺伝学研究所のデビッド・カーティス教授はインディペンデント紙でそのように語っており、大臣を「驚くべきレベルの無知」だと非難した。

一般的な疾患は1つの遺伝子の影響は受けず、多くの遺伝子の影響を受ける。最近、科学者たちは遺伝子の小さな影響を合計して全体のスコアの精度を高めている。極めて高いリスクを持つ少数の人に関しては、対策をとれるような潜在的問題に対して、これらのスコアが役に立つ可能性がある。

平均点付近にいるその他のほとんどの人にとっては、スコアに重要性はない。だが、基本的なDNA検査から非常に簡単に算出できるため、スコアが有用であるという医学的証拠がなくても企業は提供したがるのだ。

3月に入って、23アンドミー(23andMe)が2型糖尿病のリスクについて告知サービスを始めた。こうしたサービスの推進派は、消費者がリスク確率を把握できるし、すべての人が自身のDNAデータを利用できるようになるべきだと主張する。しかし、ハンコック保健・社会福祉相の顛末は、そうではない可能性を示している。

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