声の聴きやすさを重視した、ストレートで素直な再生音
開発に際しては、無指向性のスピーカーを使い広がりあるサウンドを実現した「AQUOS 4K NEXT XG35ライン」の経験も生かせたとする。スピーカーユニットの位置をなるべく前方に置き、スピーカーのように音が前から聞こえるようにしているのも音響面の工夫だ。
実際の音を聴くこともできた。感じたのは、前方のやや低い位置からテレビの声がハッキリと聞こえるという点。映画であればストーリーを追う上で一番大切な「セリフ」、ニュース番組やバラエティなら「出演者のコメント」を、まず聞き取りやすく伝えるのを重視しているのが分かる。
サウンドモードは、ストレートな再現の「標準」、映画やゲームに適した「ダイナミック」、人の声が聴きやすい「ボイス」の3種類がある。バーチャルサラウンド機能などはあえて使用せず、低域の量などを調整するイコライジング処理のみの調整だ。ここは姿勢が変わっても音色が変わらないようにしたいという意図もあるという。
そのためか、音はステレオ的な表現となる。一方で、サラウンド感は控えめで、左右や後方への音の広がりや、音の動きなどはあまり感じない。演出を極力なくした、あくまでストレートな再生音を目指している印象だった。
振動の臨場感は、ライブ映像と特に相性がいい
振動ユニットはちょうど鎖骨の付近にある。
映画・ゲーム・音楽など体験したが、一番マッチするのは、音楽コンテンツだろう。特にライブ映像との相性が非常にいい。ベースが刻むビートや、会場に鳴り響くクラップ音などと連動して本体が震え、実際のライブ会場が揺れているような臨場感が味わえる。ライブ会場ではステージの位置は変わらず、常に音が前から鳴っているので、音の動きはあまり重要ではない。ここも声の聞きやすさを重視し、前方に近い位置で定位するこの機種と合っている。自分が観衆の一部になったような気分が味わえた。
アクション映画などでは、映像の迫力を増すためズーンと低域を鳴らす演出や爆発音などと連動して本体が震える。とはいえここは、音の広がりも重要なところ。映画では、サラウンド再生を前提とした音の演出が加えられている場合が多いので、前方中心に音が鳴る本機ではやや物足りなさも感じた。とはいえ、セリフなどはよく聞こえ、表現としても自然だ。家族が寝てしまい、大きな音量を出せない夜間などに、テレビスピーカーの代用として使うのであれば十分なメリットがある。
首掛け型スピーカーの特徴は、ヘッドホン再生のような窮屈さがない点だ。真横から音が鳴るヘッドホンでは、声が頭の中で定位する。ここが再生の不自然さや長時間使った際の疲れにつながりやすい。首掛け型スピーカーであれば、音量を少し下げて周囲の音を聞くことができるし、振動による演出の効果も手伝って、スピーカーともまた違った感覚が味わえる。ワイヤレスなので、ちょっとコーヒーを入れるために立つなど、部屋の中を移動しながら使うこともできる。まだ、新しく発展途上のカテゴリーだが、テレビ+αの映像体験を得られる点で、興味深いものと言える。