フジヤエービック主催の「ポータブルオーディオ研究会 2019冬」(通称ポタ研)が2月2日に開催された。製品披露の場としては、年末商戦が一段落ついたあとの端境期になるため大規模ではないが、新製品・参考出品も多く見られた。イベントの雰囲気は、同社主催のヘッドホン祭よりも濃いめで、マニアックに楽しめる内容となっていた。
新製品の中で注目は、やはりDITAの「PROJECT 71」だろう。
ダイナミック型ドライバー1発の構成にこだわっているシンガポールのブランド。国内代理店がS'NEXTに変わってからは初の製品である。過去のイベントで試作機が出展されてきたが、新開発のDDT 3.0ドライバーを採用し、筐体も真鍮とマカッサルエボニーのハイブリッド材となった。ウォームで濃密感があるサウンドは、「Dream」で一度完成したものとは、一味異なる方向感で興味深い。
PC-Triple C長結晶無酸素銅を採用した「OSLOケーブル」(1.2m)にも注目だ。イヤホン側端子も2pinからMMCX端子に変更されている。Van den Hulと共同開発した従来ケーブルも高品位だったが、やや硬く取り回ししにくい面があった。OSLOケーブルはしなやかで、プレーヤー側端子を付け替えられる。AWESOMEプラグの機構も継承している。製品については別記事で紹介済み。既報の通り、OSLOケーブルは、3月中旬をめどに単品販売も計画されている。
S'NEXTブースでは、finalブランドの試作モデルとして、平面磁界型ドライバーを活用した「D6000」のプロトタイプも展示されていた。D8000の技術を踏襲しつつ、耳掛け型のコンパクトな形状である点が特徴。製品化が楽しみだ。
デノンのブースでは、AH-GC20の後継と思われる、アクティブノイズキャンセリング対応ヘッドホンのモックアップが展示されていた。外観のみで試聴はできなかったが、人気機種がほぼ4年ぶりに更新される形となる。どんな形に仕上がるのか期待したい。
トップウィングのブースでは、近く発売が予定されているSprit Torinoの開放型ヘッドホン「Ragnarr Edition」(約50万円)や「Super Leggera」(約35万円)が注目の存在。どこかで見たデザインに思えるかもしれないが、これは欧州で、米国GRADOの修理を担当していた、イタリアの企業が独立して立ち上げたブランドであるため。昨年のヘッドホン祭に引き続いての出展で、現在販売に向けて調整中だ。
修理用部材なども自社生産していたそうで、外観の雰囲気が似ている。上位機のドライバーは直列配置のダブル・ダイナミックドライバーで、オリジナル開発。音調は中低域が濃く、GRADOとはだいぶ異なる独特なサウンドだ。Super Leggeraはシングルドライバーでより軽量な機種となる。
また、中国のXI AUDIOの「Sagra DAC」も近く国内投入予定。名称はサグラダ・ファミリアに由来。デンマークSoekris社に特注したラダー抵抗型DACは、内部に216個の高精度な抵抗を使用して実現。価格的には50万円程度になる見込みのようだ。XI AUDIOは、Lotooで「PAW Gold」を手掛けた人物が主催するブランドだそうだ。
FitEarは、カスタムイヤホンの入門機的な位置づけの「FitEar ROOM」をメインに展開。直販限定で税抜なら5万円を切る価格だ。ほかに消費税、耳型採取料、送料などがかかる。国内市場でカスタムイヤホンの魅力を積極的に伝えてきた最先鋒のブランドの取り組みだけに期待したい。カラバリも豊富でポップな印象を与える。