フラッグシップの一角「SP1000M」を中心にその魅力に迫る
この記事では、現在のハイレゾプレーヤーはここまで来ているという点を紹介していきたい。第4世代機の中では最新の「A&futura SP1000M」を中心に据える。音質/機能/使い勝手のすべてが最高水準であることに加えて「携帯性」という利点も兼ね備えているのが特徴。Astell&Kernの機種としてはもちろん、数あるハイレゾプレーヤーの中でも、とびぬけた魅力を持った製品に思える。
実売価格はギリギリ20万円台に収まる。といってもほぼ30万円。ハッキリ言って高価だが、内容的にはSP1000と同等で10万円近く低い価格設定だ。後述するように、第4世代機共通の多彩な拡張性も備えている。携帯ハイレゾプレーヤーとして、最高水準の機種であるのはもちろんだが、単品ハイエンドのプレーヤー製品に匹敵する使い方ができ、音質も引けを取らないと考えれば、割高な感じはあまりしなくなってくる。
デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC部には、旭化成エレクトロニクス(AKM)の「AK4497EQ」をデュアル(左右独立)で搭載。最大384kHz/32bitのPCM、最大11.2MHzのDSDのネイティブ再生に対応する。クロックは、200Fsと超低ジッターのVCXOクロックとなる。このあたりはSP1000と同等で、SP1000譲りの切れがよく、正確なサウンドが楽しめる。
第4世代Astell&Kernの主な仕様 | ||||
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機種名 | A&ultima SP1000 |
A&ultima SP1000M |
A&futura SE100 |
A&norma SR15 |
出力(アンバランス) | 2.7Vrms | 2.1Vrms | 2.0Vrms | 2.0Vrms |
出力(バランス) | 3.9Vrms | 4.2Vrms | 4.1Vrms | 4.0Vrms |
S/N(アンバランス) | 120dB | 120dB | 122dB | 122dB |
S/N(バランス) | 122dB | 123dB | 123dB | 122dB |
歪み(アンバランス) | 0.0005% | 0.0007% | 0.0007% | 0.0008% |
歪み(バランス) | 0.0008% | 0.0006% | 0.0006% | 0.0009% |
クロックジッタ | 30ピコ秒 | 25ピコ秒 | 800フェムト秒 | 70ピコ秒 |
ほかもSP1000とほとんど差がないが、アンプは少し異なる。バランス駆動時の出力は4.2VrmsとSP1000の3.9Vrmsよりもさらに高くなり(アンバランス駆動時は2.1Vrmsで、SP1000より低い)。バランス駆動時のS/N比やひずみ率もそれぞれ123dB(+1dB)/0.0006%(-0.0002%)に向上している。
チップの型番などは公開されていないので、細かな違いは不明だが、アンバランス駆動とバランス駆動で出力がほぼ2倍になっている点は、SP1000よりも後の機種のノウハウを取り入れたものだろう。SP1000の発売から1年超の時間が経過したあとの製品なので、その間に蓄積したノウハウを反映しているのだろう。
MQAだけでなく、ハイレゾCDの再生まで可能となった
バランス駆動やネットワーク再生、DSDのネイティブ再生、aptX HDへの対応など、早いタイミングで様々な機能を取り入れてきた、Astell&Kern製プレーヤーだが、この数ヵ月のファームウェアアップデートで、これもほぼ完璧なものになった。12月のファームウェアアップデートで「MQAファイルの再生」にようやく対応。さらに「Apple Lossless形式の32bitファイルの再生」も可能となっている。
一昔前なら、192kHz/24bitのPCMに対応していれば、ハイレゾプレーヤーとして合格と言えた。しかし、いまハイエンドプレーヤーを選ぶなら、MQAへの対応に加えて、384kHz対応DACの搭載が必須だろう。昨年は、MQAファイルをCDに入れて提供するMQA-CDが話題を集め、ユニバーサルミュージックの「ハイレゾCD」シリーズでは、352.8kHzのデータを収録している。384kHzのPCMデータは従来から、2LなどのレーベルがDXDという非圧縮の形式で配信してきたが、音源数は限られていた。この状況も変わるはずだ。
ちなみに、MQAファイルの再生した携帯プレーヤーはすでに多く存在するが、ネット配信でダウンロードしたり、MQA-CDからリッピングしたりして取り込むのが一般的だ。しかし、Astell&Kernのプレーヤーでは、1月の最新アップデートで、MQA-CDの直接再生も可能となった。MQA-CDは興味深い技術だが、対応する外付けDACの種類が限られ、再生環境を整えるのが少し大変だ。純正の外付けCDドライブ「AK CD-RIPPER」シリーズと組み合わせる必要があるが、後述するように、Astell&Kern製プレーヤーは単品コンポで組んだシステムとの相性もいいので、歓迎すべき機能だろう。