アメリカのスマートロック市場に「セサミ」を投入して人気を博し、日本市場へはMakuakeのクラウドファンディングで「セサミ mini」のプロジェクトを公開しているキャンディハウス。同社は台湾にてプレスツアーを開催し、日本向けの「セサミ mini」がどのように作られているか公開した。
スマートロック「セサミ」シリーズができるまで
キャンディハウスは、いわゆるハードウェアスタートアップと呼ばれるメーカー。一般的にハードウェアスタートアップというと、中国・深センを活用するイメージだが、キャンディハウスはあえて台湾にこだわっている。その理由として、同社のCEOジャーミン・グー氏が台湾出身ということもあるが、ジャーミン氏はさらに「深センより台湾の工場のほうがハードウェアスタートアップに向いているため」という。
たとえばセサミシリーズの開発には、3Dプリンターを活用してテストモデルを作っていく手法がとられているが、その3Dプリントを担当しているのは台湾の「Real Fun」。「オーダーから24時間以内に完成」という即応性と、プリント後に手作業による仕上げや確認という正確性がウリだ。ジャーミン氏は「これを深センに依頼するとクオリティーが低い。逆に日本ではコストが高い」とReal Funの仕事のバランスの良さをポイントに上げている。
設計が完成したあとの製造も台湾の「謹良實業股份有限公司」(GIN LIAN)が担当している。GIN LIANは金型を使ってプラスチック部品を製造する工場。パーツのほとんどがプラスチックで構成されているセサミ miniにとって重要な工程といえる。
納期はかかるが確実に仕上げてくれる工場を選ぶ
ジャーミン氏によると、最初は深センの工場を使っていたようだ。しかし、深センの工場は相談なしに設計や素材を変更してくることが多く、さらに依頼するロット数が少ないとほかにロット数の多い仕事が入ってきたときはあと回しにされることもあったという。
セサミ miniの場合、深センの工場に頼むと2週間といわれる工程だが、GIN LIANでは7週間かかる。それでも設計通りに仕上げてくれる正確さと、後回しにされることのない納期の確実性で台湾の工場を選ぶメリットがあるというわけだ。
これは製品の塗装を担当する「皇盛科技股份有限公司」や、基板を製造する「貫崑科技有限公司」も同じだ。コストは深センの工場と比べると高くなるが、そのぶん品質や納期に関しては確実性が高い。もし自分がスタートアップを始めるなら、深センと台湾どちらの工場と取り引きする方がストレスがないか考えれば、台湾のほうがベターといえる。
製造したセサミ miniの各種パーツを最終的に組み立ててパッケージングしている工場も、台湾の「Do Top」が担当している。同じ台湾メーカーのASUSなどの製品も請け負っている老舗企業だ。
「Do Top」のアカウントマネージャー星野純二氏も、スタートアップが台湾の工場を使うメリットとして「深センと比べて品質のばらつきがない」と正確性をあげている。さらに中国のネットワーク事情により検品なども不安が残るといったポイントもあげている。
たしかに最近でも日本のハードウェアスタートアップで深センの工場で作ったディスプレーが仕様を満たしておらず、スペックが誤表記のまま販売された問題も記憶に新しい。こういったトラブルを防ぐと言う意味でも、ある程度深センよりはコストはかかるものの、安心して製品を開発製造できる土壌が台湾にはあるというわけだ。
「セサミ mini」はスマートロックという家のセキュリティーを任せる「安全」がポイントとなる製品。「オール台湾」という体制での製造は、メーカーが安心して製造を任せられるという利点だけでなく、ユーザーにとっても安心で安全な製品と言えそうだ。
なお、セサミ miniのクラウドファンディングは明日10月30日までなので、興味を持ったら支援してみよう(→こちら)。