JAWS-UG東北の立花拓也が見た「AWS CommunityDay 2018」
急成長するアジアのAWSユーザーグループがベトナムに大集合
2018年10月09日 07時00分更新
シンガポールのSteve Teo Wai Mingさんは、AWSでのマルチアカウント運用について話した。同じ組織でアカウントを分ける理由としては、サービスや部門ごとにアカウントを管理したい、本番用/テスト用などでアカウントを分離したい、DirectConnectやログ専用のアカウントを用意したいなどさまざまなケースが考えられるが、アカウント間でのIPアドレス帯の管理やVPCピアリングの上限数、Organizatuonを利用する際の制限などシングルアカウント環境時より気をつけなければいけない点がある。また、Infrastructure as Codeを進め、リソースや環境を一元管理することがマルチアカウントを上手に飼いならすコツだと話した。
そして次はいよいよJAWS-UGから小深田あゆみさん。fusetter(https://fusetter.com/)というWEBサービスに携わっていたが、ページの直帰率が高いことが課題としてあった。それを解決するために、LDAモデルという自然言語処理を用いて、ツイートを分析しリコメンデーション機能を組み込んだという発表だった。LDAモデルはPythonとgensimを用いて開発し、3ヶ月程度でリリースできたそうだ。
タイからはAWS認定資格8冠、AWSコミュニティヒーロー、さらにはクラウド婚までしてしまうというアジアを代表する“パーフェクトAWSガイ”であるVit NiennattrakulさんがエンタープライズにおけるAWS環境の設計で考慮するべきことについて話した。IAMによる権限の管理、DirectConnectやVPCを用いたネットワークの分離、セキュリティ機能の有効化、ログの監査、ストレージの暗号化など王道のベストプラクティスを確実にやろうという話だったが、彼が話すと余計に説得力があった。
続いてはJAWS-UGから二人目、関西女子会の田尻彩夏さんからAlexaについての発表。Alexaの基本的な機能や現在世界各国で発売されているAlexaデバイスを紹介した後に、基本的なAlexaスキルの作成方法とLambdaの設定を実際の作成画面を見せながら披露した。なんと彼女はこの日のためにAlexaスキルの作成方法を説明してくれるAlexaスキルを用意していたのだ。壇上で彼女がAlexaに語りかけると、流暢な英語でAlexa自身の作成方法について解説してくれたので、ベトナムのエンジニアにも衝撃を与えただろう。
そして最後は、インドから参加したSathyajith Bhatさんからコンテナを支える技術についての発表となった。cgroupsやnamespaces、seccomp、AppArmorなどコンテナ内で使われている技術について解説を行なった。最近はより抽象化されたDockerに出会ったり、コンテナのマネージドサービスを利用することが多いので、なかなか意識することは少なくなっているが、改めて仕組みを復習できるいい機会となった。
全員の発表が終わった後に、今回のイベントにボランティアとして協力してくれたベトナムユーザーグループのメンバーを壇上にあげて、全員で拍手と労いの言葉をかけたシーンはこちらもうるっときてしまった。
東南アジアの急成長に驚き 女性コミュニティ誕生の予感
今回参加したすべてのユーザグループで昨年参加していない新しいメンバーが参加していて、どのユーザーグループも新しい人たちを巻き込んで成長していることを感じた。特に、ユーザーグループが発足してわずか2年足らずで今回のイベントをホストしたベトナムチームやこの1年間で国内支部がたくさん生まれたフィリピンチームなど、東南アジアの勢いには驚かされた。
また、昨年たったの1人しかいなかった女性参加者が今年は10人に増えたのも大きな一歩だろう。さらに、今回のイベントをきっかけとして、アジア全体を巻き込んだパワフルな女性テックコミュニティが生まれるはずだ。
クラウドの登場により場所や年齢、性別に関係なくテクノロジーを使えるようになった。それと同じようにクラウド時代のコミュニティもますますボーダーレスに、そして平等に学び合える場になっていくのではないだろうか。そしてそのボーダーを超えるハードルは高くはなく、実は自分の勇気1つで飛び越えられる程度でしかない。クラウドとコミュニティにダイブすることで、ボーダーを超えて、新しい世界が目の前に広がる体験をたくさんの人に味わってもらいたいと感じた。