iPhone XS Max狙いの一部のユーザーの間では、秋葉原のイオシスなどの専門店やExpansysなどの輸入ショップが取り扱う、香港版iPhone XS Maxが話題になっています。
ただし、価格は最安値となる64GBモデルでも税込17万9800円(イオシス アキバ中央通店の場合)と、独自輸入の手間がかかるぶん日本のアップルストア価格(税込13万4784円)より割高です。
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なぜこの高額な香港版を買うユーザーがいるかというと、海外渡航の多い方にとっては香港版のデュアルSIMの仕様に魅力があるからです。今回は、そのあたりの事情についてご紹介します。
香港版iPhone XS MaxとiPhone XRのみ
自由にnanoSIMを2枚入れられる
いわゆる“香港版”と呼ばれるiPhone XS Maxは、アップルが中国本土のほか、香港、マカオのみに販売している中国向けモデルのことを指します。実はiPhone XS Maxでも、中国向けは「A2104」、日本向けは「A2012」など、国によってネットワーク周りの仕様が異なるモデルが存在します。
中国では、以前からApple Watchを含めeSIMを利用できないという事情から、アップルは香港版のiPhone XS MaxとiPhone XRのデュアルSIM機能のみ、nanoSIM+nanoSIMの組み合わせで実現しました。これが、いわゆる香港版が注目される理由です。なお、日本を含むほかの国向けのiPhoneは、すべてnanoSIM+内蔵eSIMという組み合わせです。
デュアルSIMがnanoSIM+nanoSIMである利点は、両方のSIMスロットに自分が使いたい契約内容のSIMを自由に入れて利用できる点です。たとえば、日本在住でひんぱんに海外への出張や旅行をする旅慣れた方の場合、海外ではデュアルSIMのAndroidスマホに日本のメイン回線のnanoSIMと、海外の滞在国ごとに現地の低価格なプリペイド契約のnanoSIMを入れて、国際ローミングより安くデータ通信を利用したりします。
これが香港版iPhone XS Maxなら、デュアルSIMのAndroidスマホと同じように、メインのSIM+現地プリペイドSIMといった使い方が可能なので、海外渡航が多い方の注目を集めているわけです。
日本版を含む通常のiPhone XS Maxは、nanoSIMに好みの契約のSIMを入れられますが、内蔵のeSIMについてはアップルのeSIMに対応した携帯電話会社のプランしか契約できないという制限があるうえ、今のところ利用できる携帯電話会社は少ないです。今後、対応する携帯電話会社が増えればより便利になると思われますが、旅慣れた方にとって、今のところ物足りなさを感じる機能です。
香港版iPhone XS Max、iPhone XRは
日本で利用しても問題ないのか
ですが、いわゆる香港版iPhoneにはいくつかの注意点があります。
香港版iPhoneは日本の「技適」なし、日本での利用には注意
日本で利用できるスマートフォンは、基本的に技適(技術基準適合証明)を取得しています。しかし、近年の海外モデルのiPhoneは技適を取得していません。このため、日本で香港版iPhoneを買ってモバイルデータ通信やWi-Fi、Bluetoothを利用すると不法無線局となり、もし摘発された場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります。
現在は訪日観光客が来日した場合を想定した施策として、海外から日本に持ち込んだ方が海外の認証を受けたスマートフォンや携帯電話を、日本の携帯電話会社のSIMまたは国際ローミングで利用できるほか、Wi-FiとBluetoothも同様に、日本に持ち込んでから90日間の利用が認める法改正がありました。ですが、これは訪日観光客の来日を想定した内容です。根拠となる電波法でも、外国の無線局(スマホの場合、外国の携帯電話会社などのネットワークと、操作するスマートフォンが繋がるものの総体を指す。海外からの国際ローミングでの利用を含む)のみが対象です。
【関連サイト】海外から持ち込まれる携帯電話端末・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用(総務省)
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/inbound/
日本で利用できる周波数帯に違いがある
また、日本向けiPhone XS MaxのA2102と、いわゆる香港版の中国向けiPhone XS MaxのA2104は、利用できるLTEの周波数帯が異なります。このため、海外在住などの方が海外の無線局として海外契約のローミングなどで日本で一時的に利用する場合、同じiPhoneでも、香港版は利用できるエリアや通信速度に差が生じます。
下記に、日本のドコモ、au、ソフトバンク回線の利用する周波数帯(バンド)と、iPhone XS Maxが対応する周波数帯(バンド)の表を記載します。
現在、主に使われている周波数帯を見ると、香港版iPhone XS Maxはドコモ、au、ソフトバンクのメインバンドと呼ばれる800MHz帯と900MHz帯、2.1GHz帯に対応しています。高速通信や混雑解消に使われる周波数帯は、よく使われる1.7GHz帯と2.5GHz帯に対応しています。ただし、1.5GHz帯のみ対応していません。メインバンド対応なので、利用エリアは日本向けiPhoneと同じと言えます。通信速度も1.5GHz帯は非対応ですが、よほどの混雑エリアでない限り問題なく利用できるといっていいでしょう。
ただし、通信速度の高速化や混雑解消のために整備が進んでいる3.5GHz帯や、今後利用が進むであろう700MHz帯には対応していません。このため、将来的には都心などの一部の混雑エリアでは、日本向けiPhone XS Maxのほうが高速といったことはあるでしょう。
コスパ重視なら、10月26日発売のiPhone XRを待とう
ここまで香港版iPhone XS Maxの話をしてきましたが、そもそも端末価格が高いので自由なデュアルSIMのためだけに買うのを躊躇する方もいるでしょう。実際、nanoSIM+nanoSIMのiPhoneの本命は、10月26日発売のiPhone XRとも言われています。日本のアップルストアで64GBモデルの価格が税込9万1584円なので、独自輸入などの諸費用が足されても12万円前後、256GBモデルでも15万円あたりの価格が期待できるでしょう。
海外でiPhoneにnanoSIMを2枚入れて使うためだけに15万円を超える金額を支払うのは、かなり高いハードルです。そもそも、2枚のSIMを使うだけなら、SIMフリーAndroidのほうが国内外で問題なく利用できて低価格なのでなおさらです。ですが、海外渡航が多く懐に余裕がある方なら、ハードルをさっと越えて海外利用専用のiPhoneとして、こだわりを貫くのもおもしろいのではないでしょうか。
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