2020年商用化サービス開始と言われていた5Gが、米国では年内に始まる。
まずは米国最大手のVerizonが9月11日に発表した。同時期、米国で開催された「Mobile World Congress Americas 2018」はさながら”5Gレース”に。一方で展示会場を見ると、本来は抜きではモバイル業界を語れないはずの中国系企業の不在など政治的な影響も感じられた。
米国では早くも5Gローンチ合戦?
5Gローンチ……といっても、現時点で対応スマートフォンがあるわけではない。Verizonが発表した5Gサービスは「Verizon 5G Home」。家庭用ルーターのようなもので利用するFWA(固定無線サービス)だ。
”5G”といっても標準ベースではなく、Verizon独自の5G Technology Forum(TF)規格を土台とした「5G Ultra Wideband」ネットワークとなる。周波数帯は28GHz帯、39GHz帯を利用し、スモールセルとファイバー網バックボーンを実装している。正式な3GPP 5G NR(New Radio)標準ベースの機器が出てきたら、早期申込者には無償で機器のアップグレードをするという。気になる速度だが、通常は300Mbpsレベルで、ピークでは1Gbpsも可能としている。
10月1日よりロサンゼルスなど4都市でスタート、9月13日に受付を開始した。最初の3ヵ月は無料、一定条件を満たす既存ユーザーは月額50ドル、新規顧客は月額70ドル。YouTubeの無料視聴やApple TV 4KまたはChromecast Ultraデバイスが無料で付くなどのバンドルもある。
その翌日からロサンゼルスで開催されたMobile World Congress America(MWCA)の展示会場は”5G”だらけ。Verizonはもちろんのこと、その向かいに展示エリアを構えたSprintも”5G”を打ち出し、T-Mobileはすでに発表しているNokiaに加え、Ericssonと5G NRハードウェアで提携したことを発表した。
AT&TもSamsung、Ericsson、Nokiaの機器を利用して、“数ヵ月以内に”5Gサービスを開始するとしている。なお、ソフトバンク傘下のSprintは、IoTプラットフォーム「Curiosity IoT」を発表している。ARMのPlatform Security Architecture(PSA)フレームワークをセキュリティー基盤に持つなど、ソフトバンクファミリーのメリットを生かすものとうたっている。
会場内には中国ベンダーが不在
一気に時代が5Gになった感があるが、米国の5Gレースのメリットを最も受けているのは、ネットワーク構築に必要な機器メーカーだろう。
ネットワーク機器市場は地域により異なるが、世界ではHuaweiがトップだ。しかし、同社は政治的な事情から米国の大手キャリアには機器を提供しておらず、2016年までこの市場を制していたEricsson、そしてNokiaが強い。なお、VerizonのCEOを現在務めるHans Vestberg氏は、2016年7月までEricssonのCEOだった。
Ericssonは、Vestberg氏がVerizonのCEOに就任した直後、米国市場に追加投資することを発表している。MWCの展示エリアでも、初の5G標準ベースとして39GHz帯を使った5G NRのデータ通話、同じ周波数帯で4Gと5Gを共有する”ダイナミックシェリング”などを見せていた。
Ericssonブースの説明員は、Huaweiと米国の関係についてコメントは避けたが、”5Gレース”については、「”自社が先”と競い合うメンタリティーが大きく動いている心理合戦だ」という冷静な意見で、「自分たちにとっては良いことだが」と続けた。
GSM Association(GSMA)によると、2025年には世界のモバイル接続の15%が5Gになる予想という。特に北米(米国とカナダ)が牽引し、2025年にはモバイル接続の約半数(49%)となる2億件が5Gに接続すると予想している。北米オペレーターは2018~2020年までの間、約230億ドルを5Gネットワークに投資するという予想もある。
なお、5Gは米中対立の争点の1つ。コンサルティングファームのDeloitteは先に、中国が急ピッチで5G基地局の構築を進めているというレポートを出している。
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