価格も踏まえつつ、ブックシェルフ機に魅力を感じる
ZENSOR1も交えて、新製品を比較試聴する機会があった。
従来このクラスを担ってきた「ZENSOR1」は落ち着いた音調で、高域から低域までバランスの取れたナチュラルなサウンド。全世界で支持されたのも納得の「完成度が高い音」だった。しかし、同じ曲をOBERON1で聴くと、ボーカルの透明感が圧倒的に上がり、一皮も二皮も剥けた感覚が味わえる。
アタックの強いアコースティックギターのタッチもより立つ印象で、曲に込められたニュアンスがより切実に伝わってくる。小型なぶん、ローエンドが少し切れている感じもあるが、音の広さは十分で、特にボーカルの美しさに魅了される。
OBERON3はウーファーが直径18㎝(7インチ)と大きい。一般的な2ウェイ・ブックシェルフのウーファーは16.5cm(6.5インチ)なので、これと比べても15%ほど面積が大きいことになる。そのぶん低域の再現にも余裕が出る。結果として全帯域に渡ってのつながりが自然になり、無理がないというか、帯域ごとのディップ(とんがり)もなく滑らかにつながる印象だ。当然のようにOBERON1で感じた下の寸詰まり感もない。空間もより広くなり、音場感がリアル。このレベルの音が鳴れば、多くの人が高い満足感を得られるだろう。
OBERON5は、OBERON1をフロア型に変えたものだ。幅と奥行きは維持しつつ、13㎝のウーファーを1個追加した小型でかわいいトールボーイとなる。スピーカーは3つ備えるが3ウェイではなく、2ウェイのダブルウーファーとなる。中音域~高音域のディティールの表現はOBERON1と変わらず繊細。ただしユニットが1個増える分、低域の量感は増す。よりスケールの大きな表現が可能ではあるが、ニュアンス豊かな中高域との対比で低域は少しずぼらな印象も与える。鳴らし方の配慮が必要かもしれない。
OBERON7は、18㎝のウーファーを2基備えている。音調はほかのOBERONシリーズと同様だが、ウーファー口径が大きい分、さらに余裕のある再生となり、空間の広さを感じる。低域に関しては少し盛っているというか強めのバランスで出る感じもあるが、4機種の中では最も熱気のあるエキサイティングな表現で、若干ウォームな音調とも言える。
価格増もあるものの、音とコストのバランスはずぬけている
ラインアップを通じた感想としては、冒頭でも書いた通りで、声の美しさ、抜けの良さが印象的だった。スタンドも必要になるが、価格面も配慮してOBERON1やOBERON3は特に魅力的な選択肢になりそうだ。
最後に各モデルの仕様について簡単に触れておく。
OBERON1:
周波数特性は51Hz~26kHz。クロスオーバー2.8kHz、感度86dB。本体サイズは幅162×奥行き234×高さ274㎜で、重量は4.2kg。価格は6万1560円(ペア)。
OBERON3:
周波数特性は47Hz~26kHz。クロスオーバー2.4kHz、感度87dB。本体サイズは幅200×奥行き315×高さ350㎜で、重量は6.3kg。価格は8万6400円(ペア)。
OBERON5:
周波数特性は39Hz~26kHz。クロスオーバー2.4kHz、感度88dB。本体サイズは幅162×奥行き283×高さ830㎜で、重量は10.8kg。価格は12万4200円(ペア)。
OBERON7:
周波数特性は36Hz~26kHz。クロスオーバー2.3kHz、感度88.5dB。本体サイズは幅200×奥行き340×高さ1015㎜で、重量は14.8kg。価格は16万8480円(ペア)
なお、OBERON/VOCALのみラック収納も考慮してフロントバスレフ。インピーダンスも4Ωとなる。周波数特性は47Hz~26kHz。クロスオーバー2.6kHz、感度89.5dB。本体サイズは幅295×奥行き161×高さ441㎜で、重量は7.45kg。価格は6万1560円(1本)
OBERON/ONWALLは、OBERON1と同じユニット構成だが、幅広で何より薄型でスタイリッシュだ。ポートに関しては背面を伝って下側に空気が流れる仕組みで、壁の反射を効果的に活用した特徴ある再生。周波数特性は55Hz~26kHz。クロスオーバー2.1kHz、感度87dB。本体サイズは幅245×奥行き120×高さ385㎜で、重量は4.9kg。価格は8万6400円(ペア)。
カラーバリエーションはダークウォルナット、ブラックアッシュ、ライトウォールナット、ホワイトの4種類。フロントグリルはマグネットで止めるタイプで、シャドウブラック(DWとBA)とマウンテングレイ(LOとWH)の2色がある。フロントバッフルは艶消しのブラックとホワイトの2色。フロア型モデルの脚部は新型のアルミベースとなった。
ZENSORと比較した場合、価格面ではかなりアップしている機種もあるが、DALIは全世界共通プライスを方針としており、為替に準じた価格になるという。