仕事のデータを失ったことが苦しい
── 仕事に必要なものは家から持ち出せましたか。
持ち出せませんでした。実際に持ち出せたのは通帳、印鑑、財布、携帯電話だけです。携帯電話は濡れても大丈夫なようにビニール袋に入れて運んでいました。
── 一次帰宅したとき状況を見てどう感じましたか。
携帯電話と同じように「ビニール袋」に入っていたものは意外と平気でしたが、とにかく泥がすごくて……。家具が何をどうすればこうなるのかというくらいひっくり返っていました。台所のいすが吹っ飛んでいたり、1階の屋根にウイスキーのビンが刺さっていたり。なぜかトイレのドアにCDが乗っていて、謎の神バランスを保っていましたね……。
"とりまお家に戻れたんで貴重品回収中
二階の部屋ですらこの有り様 涙も出ん"
https://twitter.com/kabotya4/status/1016166559763423232
── 業務上もっとも失って苦しかったものは何ですか。
仕事で十数年間やってきたもの(漫画やイラストの制作データなど)をすべて失ったのが、とにかくつらいです。完成データはどうにか提出したものを返してもらったりして集めようと思いますが……。資料に使っていた漫画本などの紙類は全部ダメになりました。業務上と言っていいかはわかりませんが、DVDやBlu-ray Discを失ったのもつらいです。
水没したHDDを解体したところ、中で砂がマーブル模様みたいになっていて、こりゃダメだと思いました。ヘッドホンやスピーカーも全滅でしたが、防水イヤホンは問題なく使えました。7月27日にアップルが被災者向けに無償修理サービス(9月末までの受付)を発表しましたが、残念ながら水にやられたアップル製品はすべて廃棄済みでした。もう少し早く言っていただければうれしかったです。
メーカー公式では言えないと思いますが「水に漬かってもワンチャンある(復活する可能性がある)家電一覧」みたいな情報があれば便利そうですよね。
── カンパサービス「kampa!」※を使いはじめたことについて教えてください。
自分自身はまったく知りませんでしたが、ツイッターで教えてもらってはじめました。最初は「Amazonギフト券をもらえるものなんだー?」くらいの認識でしたが交流のなかった作家の皆さまからも支援をいただけたのが本当に嬉しかったです。
※ソーシャルカンパシステムKampa!
https://kampa.me/
送金手数料無料でAmazonギフト券を送れるサービス。本来は文字通りカンパを募るのが目的。今回の件によって被災者支援にも有用であることがわかった。
── 仕事に必要な資機材の購入資金はすべて集まりましたか。
ありがたいことに、どうにか仕事を再開できる程度には集まりました。
── 7月中旬〜下旬はどこでどのように生活・仕事をしていましたか。
7月9日以降は実家に戻って生活しています。わたしはまだいいのですが、被災者の中には一度親戚宅に行ったものの気をつかう状況に耐えかねて「避難所なら皆被災者で話が合うから……」と、避難所に戻ってしまった方もいるようです。
現状では絵を描く仕事が何も進められないので、被災前に受けていた仕事についてもクライアントに少し待ってもらわないといけない状況です。
── これからはどのように生活と仕事をしていきますか。
しばらく実家で作業環境を整えてやっていこうかなと思っています。ただ、ずっといるわけにもいかないので、どこかのタイミングで出なければならないですね。
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