PBCがERPクラウド「Dynamics 365 Business Central」を5カ国語で提供
SAPの2025年問題を解決!? Dynamics 365のコア機能「Common Data Service」とは
2018年08月10日 08時00分更新
パシフィックビジネスコンサルティング(PBC)は2018年8月9日、MicrosoftのSMB(中堅中小企業)向けERP(統合型基幹業務パッケージ)クラウド「Dynamics 365 Business Central」の日本版、中国版、香港版、タイ版、ベトナム版を、10月に提供することを発表した。
Dynamics 365のローカライゼーション機能(各国の商習慣/税制に合わせた機能の追加、言語のローカライズ)については、欧米各国向けにはMicrosoftが自社で提供している。一方、アジア地域についてはPBCなどのパートナー企業が開発、提供している。今回PBCは、Dynamics 365ファミリーの1つであるDynamics 365 Business Centralに日本を含むアジア5カ国対応の独自のローカライゼーション機能を追加。東南アジアに現地法人を展開する日系企業を主なターゲットとして提供していく。ローカライゼーション機能はDynamics 365 Business Centralの通常ライセンスに追加費用なく利用できる。
Dynamics 365 Business Centralとは?
現在、国内で提供されているDynamics 365ファミリーのERP製品には、エンタープライズ向けの上位エディション「Dynamics 365 Finance and Operations」(旧Dynamics AX)のオンプレミスソフトとSaaS、SMB向けのSaaS「Dynamics 365 Business Central」のSaaS版(旧Dynamics 365 for Financials)、SMB向けのオンプレミスソフト「Dynamics NAV」、Dynamics NAVの全機能を継承するSMB向けSaaS「Dynamics 365 Business Central」がある。Dynamics NAVは、今秋のアップデートでDynamics 365 Business Centralに名称と機能が統合される予定だ。
今回、PBCがアジア5カ国向けのローカリゼーション機能を追加して提供するのはSMB向けSaaSのDynamics 365 Business Centralだ。財務管理、顧客管理、プロジェクト管理、サプライチェーンマネジメント、人材管理、倉庫管理の機能を含むEssentialエディション(1ユーザーあたり月額7610円)、Essentialの全機能とサービス管理、生産管理の機能を含むPremiumエディション(1ユーザーあたり月額1万880円)の2つのサブスクリプションライセンスを用意する。エンタープライズ向けのDynamics 365 Finance and Operationsでは最低購入単位が20ライセンスであるのに対して、Dynamics 365 Business Centralでは1ライセンスから購入できる。
Dynamics 365の肝はデータレイヤーにある
SaaS版のDynamics 365ファミリーのテクノロジーの肝は、「アプリケーションレイヤーの下のデータレイヤーにある」(日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部 本部長の大谷健氏)。
Dynamics 365やOffice 365といったMicrosoftのビジネスアプリケーションサービスのデータレイヤーには、統合された業務データストアとして「Common Data Service」が用意されており、アプリケーションで生成されたデータがここに統合的に格納される。Common Data Serviceは、自動でデータ形式を定義する「Common Data Model」機能、外部のERPやデータベースなどからデータを取り込むETL機能などを備えており、格納した各種データは特別な設定や加工をすることなくDynamics 365やPower BIで活用できる。Dynamics 365、Office 365のデータだけでなく、OracleやSAPなど外部のERPのデータを取り込み、Dynamics 365で活用することも可能だ。
今回PBCは、ローカライズしたDynamics 365 Business Centralをアジア地域に現地法人を展開する日系企業に訴求していく方針だが、例えば、本社がSAP ERPを導入している企業の現地支社がDynamics 365 Business Centralを採用すれば、支社にSAP ERP環境がなくてもCommon Data Serviceを通じてERPのデータ連携ができる。SAP ERPについては2025年に保守切れを迎える「2025年問題」が迫っている。「SAP ERPをSAP HANAへ移行する場合でも、本社のSAP ERPのみを移行して、支社ではDynamics 365 Business Centralを使うことで、大幅なコストダウンが見込める」(PBC 取締役 戦略事業推進室 室長 吉島良平氏)。