評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。7月の優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!
『モーツァルト&ミスリヴェチェク:フルート協奏曲集』
アナ・デ・ラ・ヴェガ 、イギリス室内管弦楽団
新進フルーティスト、アナ・デ・ラ・ヴェガのモーツァルトは実にすがすがしく、溌剌とし、進行力が勁い(つよい)。音も素晴らしい。ディテールまでしっかり再現され、冒頭の弦の躍動的な旋律は音の粒子がたいへん細かく、そのひとつひとつに倍音情報がたっぷり与えられている。フルートの音色も透明感が高く、自然な鮮鋭感。音場のヌケの良さ、伸びの良さは特筆もので、ここまでの明瞭で透き通った音は、ハイレゾでもなかなか得られない。PENTATONEの新録ならではの鮮度の高さだ。秘曲ミスリヴェチェク:フルート協奏曲の麗旋律は魅力的。2016年9月、ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン)にてセッション録音。
FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
PENTATONE、e-onkyo music
『BIG BAND SPECIAL~華麗なるビッグバンドサウンド~』
角田健一ビッグバンド
角田健一のビッグバンドシリーズは毎回、鮮度感が高く、クリアでヌケの良いサウンドが楽しい。本作品はいつものミキサーズラボで内沼映二氏の手になる最新録音。スタンダード名曲(「ホワッツ・ゴーイング・オン」「モーニン」など)に加え、映画・テレビのテーマ(「007 ジェームス・ボンドのテーマ」「シャレード」など)、さらにスティーヴィー・ワンダーの「サー・デューク」という全10曲だ。
最新の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』にちなんだ「スパイ大作戦」は、軽快な五拍子が躍動的で、ノンストップの快速進行が魅力。音のレンジの広さ、レスポンスの敏捷さは、さすがの内沼録音だ。バンドとしてのトータルなマスサウンドと、パート、個々の楽器の描きの明確さが見事に両立し、マクロとミクロのどちらも高い次元だ。音がフレッシュで、高品質なリズム感、弾み感はまさにハイレゾの矜持(きょうじ)といえよう。
FLAC:96kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music
『ショスタコーヴィチ: 交響曲 第4番 & 第11番『1905年』』
ボストン交響楽団、アンドリス・ネルソンス
世界の楽壇を制覇しつつあるアンドリス・ネルソンス。第21代カペルマイスターに就任したライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ではブルックナーの交響曲全曲録音シリーズ(最近、第7番がリリース)、ウィーン・フィルとは生誕250周年の2020年に向けて、ベートーヴェン交響曲全曲録音、そして手兵、ボストン交響楽団とはショスタコビッチ交響曲全集が大進行。評判もすこぶるいい。シリーズ第1弾の「ショスタコーヴィチ:交響曲第10番、他」は、第58回グラミー賞クラシック部門「ベスト・オーケストラル・パフォーマンス部門」を、第2弾「交響曲5番、第8番、第9番、他」は59回グラミー賞同部門を受賞している。私も、本欄ではこれらを高く評価。オーディオチェック音源として活用している他、カーオーディオコンテストの課題曲にも使っている。
シリーズ第3弾は交響曲第4番と第11番『1905年』。驚くのは、ボストンシンフォニーホールでのライブ収録なのに、まるでスタジオでセッションしたかのような高解像度な優秀録音であることだ。ホールのソノリティが豊かに収録され、ステージの広さ、奥行きもリアルに分かる卓越した音場感。トゥッティでも全体の響きとしてのマス感は当然として、弦、木管、金管、打楽器の各プルトの捉えが敏捷にして、ひじょうに鮮明だ。 あるプルトの動きと違う方向に別のプルトが向かう場面などは、まさに本録音の真骨頂。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
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