アップルの「iPhone X」と「iPhone 8」シリーズの対応をきっかけに、ワイヤレス充電「Qi」が2018年のスマホトレンドとなっている。ワイヤレス充電は対応スマホを充電パッドの上に置くだけで充電できる、ケーブルいらずの気軽さが魅力。大手量販店でもワイヤレス充電パッドの専用コーナーができるなど、最新スマホといっしょに購入するユーザーが増えている。
対応スマホも、アップルの最新iPhoneのほか、サムスンの「Galaxy」シリーズが対応。また、今年はソニーモバイルが発売予定の「Xperia XZ2」シリーズなど、多くのメーカーが対応機種を発表するなど一気に普及が進んでいる。
だが「ワイヤレス充電パッドの選び方」はあまり知られていない。実は、同じワイヤレス充電パッドでも、メーカーや製品によって充電速度が異なるほか、国際標準規格「Qi」の認証を取得しておらず、安全性や互換性に問題を抱える製品もある。
そこで今回、日本でも「Freedy」ブランドで販売されている、高出力15Wモデルの「EA1702」や、小型モデルの「KWS-211」などのQi認証を取得したワイヤレス充電パッドを開発・製造するKomatech社のキーマンに、本社を構える韓国・ソウルまで出向いて取材した。同社は国際標準規格「Qi」を策定するWireless Power Consortium(以下、WPC)のソニーやサムスンなどといった企業と同じメンバーカテゴリ「フルメンバー」で、世界へ100万台以上のワイヤレス充電パッドを出荷するメーカーだ。
では、多くのユーザーが気になるワイヤレス充電パッド購入のポイントや、詳しい製品事情について確認していこう。
■ワイヤレス充電パッドのトレンドは最大15WやiPhone対応モデル
――店頭ではさまざまなワイヤレス充電パッドが販売されています。ですが、対応電力が15Wや10W、7.5W、5Wなどさまざまな製品があり、どれを購入すればいいのかわかりにくいのが現状です。
Sangmoon Jung氏: Qiには供給電力が最大5Wの標準的な規格(Baseline Profile)と、より多くの電力を供給できる最大15W(Extended Power Profile)の規格があります。また、iPhone XやiPhone 8シリーズの高速ワイヤレス充電は7.5Wの特別な仕様となっています。
最近の5Wを超える高速ワイヤレス充電に対応したスマートフォンや、新型iPhoneを7.5Wで高速ワイヤレス充電したい場合は、これらの充電規格に対応したワイヤレス充電パッドが必要です。
KomatechのFreedy「EA1702」の場合は、最大15Wの高速ワイヤレス充電が主流になることを見越して開発しました。サムスンの「Galaxy S8」やLGエレクトロニクスの「V30」などを高速にワイヤレス充電できるのはもちろん、iPhone XやiPhone 8シリーズの7.5W高速ワイヤレス充電にも対応しています。
最大15W対応だと、一般的な10Wや5Wの製品と比べて発熱対策が必要にはなりますが、設計の工夫や高品質な部品の採用により、熱への対策と充電効率を両立しました。
Freedyの「KWS-211」は最大5Wですが、コンパクトで価格も手ごろです。パナソニック製の高品質なICの採用により、同じ5Wのワイヤレス充電パッドと比べても充電効率が良いので、最新のiPhoneやGalaxyなどのスマートフォンをより早く充電できます。
――市販のワイヤレス充電パッドのなかには、最大10Wや15Wの製品でも、iPhoneの7.5Wの高速ワイヤレス充電には対応していない製品があります。いったい何が違うのでしょうか。
Sangmoon Jung氏:iPhone Xや8シリーズの7.5W高速ワイヤレス充電には、同じQiの規格でも従来の可変周波数とは異なる固定周波数を利用します。この違いにより、Qi認証を取得しているワイヤレス充電パッドでも、iPhoneの7.5Wに対応できない製品があります。一方、Belkinやmophieといったメーカーは、最大7.5WのiPhoneに最適化した製品を出すことで対応しています。
ですが、Freedyの「EA1702」は最大15WでQi規格(Extended Power Profile Ver.1.2.4)を取得しており、可変周波数でありながらiPhone Xや8シリーズも高速ワイヤレス充電ができます。自社の測定では、iPhoneの7.5Wに最適化した他社製品と比べても、「EA1702」は同等もしくはそれよりも速くiPhoneを充電できることを確認しています。
――ワイヤレス充電パッドのなかにはQi認証の製品のほか、通販サイトなどで低価格で販売されているものもあります。どういった製品を購入すればいいのでしょうか。
Sangmoon Jung氏:Qiの認証を取得した、安全な製品を購入することをおすすめします。ワイヤレス充電パッドは、充電時の発熱への対策や、異物を充電パッドに置いた場合の安全対策、互換性に関する設計が重要です。Freedyの製品もQiの認証を取得しています。Qiの認証を取得しているかは、WPCのウェブサイトで確認できます。
ですが、一部にはQiの認証を取得していない、低品質な製品も市場に出回っています。これらの製品のなかにはQiの認証を取得しているかのような誤解を招く製品名で販売されており、実際には充電効率が悪いものや異常発熱を起こすものもあります。異常発熱は充電パッドだけでなくスマートフォンが故障する可能性もあり、最悪の場合はバッテリーの発火といった事故につながりかねません。
Han Young Jung氏:以前、韓国の携帯電話事業者がワイヤレス充電パッドを国内の店舗や施設に設置する際、一部に低価格なQi認証を取得していない充電パッドを取り扱ったところトラブルが起きました。現在はすべてQi認証を取得したものに置き換わっています。
この問題はQiの規格を策定しているWPCでも対応を進めており、各国の大手量販店に向けても安全性の高いQiの認証を取得した製品のみを取り扱うよう働きかけています。
Freedyの徹底した品質管理と、ワイヤレス充電の開発力
――Freedyのワイヤレス充電パッドは、最大15W対応やiPhone対応の両立など、他社と比べて一歩先行く製品となっています。なぜこういった製品を開発できるのでしょうか。
Han Young Jung氏:Komatechはスマートフォンや携帯電話の無線アンテナの開発と生産を手掛けている企業です。たとえば、大手メーカー製のスマートフォンのなかには、LTEなどのモバイル通信からGPS、NFC、Bluetoothに加えて、Qiのワイヤレス充電用アンテナまで100%Komatechが生産しているモデルもあります。この技術が、ワイヤレス充電パッドの開発に活かされています。
ワイヤレス充電のQiの開発や生産は2012年から手がけており、WPCで正式に認められているワイヤレス充電プロダクトのODM/OEMサプライヤーとしてWPCのウェブサイトでもリストアップされており、自社のFreedyブランドのほか、各社のODM/OEMも手がけています。アップルがiPhone Xの発表時にワイヤレス充電のパートナーとして挙げたaircharge社にも製品を供給しています。
製品開発はソウル市内の自社で、生産も自社工場はもちろん、同じソウル市内にあるApple MFi Manufacturing Licenseeなど複数の企業の認定を受けているパートナー工場も利用しています。中国などで生産すればより安くできるのですが、徹底した品質管理を実現するために、ソウルで生産しています。これらは今後、技術力や信頼性の面で他社との大きな差となるでしょう。
Qiのワイヤレス充電も、これから先は30Wや60W、90WとタブレットやノートブックPC、家電製品の充電もターゲットに入れた規格へと広がります。私たちもこの時代に向けた開発を進めています。
――iPhone XやiPhone 8シリーズのワイヤレス充電対応から、ワイヤレス充電パッドに注目が集まるようになりました。これからの日本市場に対する意気込みを教えてください。
Sangmoon Jung氏:iPhone XやiPhone 8シリーズがワイヤレス充電に対応してから、ワイヤレス充電パッドの販売台数は6倍以上に広がりました。AndroidでもサムスンのGalaxyやLGエレクトロニクスのほか、今年はグローバルのファーウェイやシャオミなども対応製品を発表しています。日本市場では、ソニーモバイルのワイヤレス充電対応モデル「Xperia XZ2」シリーズに期待しています。
Han Young Jung氏:日本では去年からFreedyの「EA1702」と「KWS-211」のワイヤレス充電パッドを、株式会社エム・エス・シーとの協力で販売していてお客さまから高い評価を受けています。今夏ごろには新製品をお届けできるように進めていますし、継続的に日本市場に高品質かつ信頼性の高い製品を日本市場に提供し、ワイヤレス充電市場の拡大をけん引していきたいと考えています。よろしくお願いします。
(提供:エム・エス・シー)