kintone関連のイベントは数多いが、その中でも特異なのが「キントマニア」ではないだろうか。今回、キントマニア初の地方開催ということで、キントマニア札幌に呼ばれて参加してきた。札幌といえばkintone Café発祥の地でもある。kintoneのどんな濃い話が聞けるのか楽しみに、筆者は北に向けてキャンピングカーを走らせた。
2次会の連絡かと思ったらイベント会場だった
「大衆酒場 俺流っていうお店でやります。ザンギたっぷり食えますよ」ってメッセージが届いたときには、筆者は2次会会場の連絡だと勘違いしていた。「2次会いいから会場の場所はよ」と思ってメッセージを読み返したら、「大衆酒場 俺流」というのがキントマニア札幌の会場なのだった。
えっ、スタートから酒場? それでkintoneの使い方とか語り合えるの? と思いつつ現場を目指した筆者。会場は、本当に酒場。テックな情報共有をするというより、仕事の後にくつろぐ居酒屋。X JAPANやB’zなど、年齢層的に狙われまくったBGMが鳴り響いている。実は筆者はB’zの大ファン。そういえばもう何年もライブに行っていない。そんなお金も時間もないし。そういえば会場に向かう途中に立ち寄ったコンビニで、B’z LIVE-GYMの広告を見かけたな。ライブ行きたいなあー。うるとらそうっ! ってもう完全に話がずれてしまった。
酒場なので当然といえば当然だが、乾杯からスタートする。いえーい、かんぱーい! そして自己紹介。会場に集まったのは、kintone Café創始者である斎藤 栄さん、キントマニアを主宰するジョイゾーの四宮 靖隆さん、ゲストスピーカーとして招かれたアポロ販売株式会社の松永 直人さんと石崎 由貴さんなど、筆者を含めても合計で7名。大きめのテーブルひとつに収まる人数だ。これより人数が多くなると話題が割れてしまうだろうなという、ギリギリの人数。この人数で乾杯から始まり、飲み会コース料理にいちいち盛り上がりながら、2時間たっぷりkintoneの話で盛り上がる。テックオタク仲間の飲み会みたいな雰囲気だ。
お酒やおいしい料理を楽しみながら、kintoneについて盛り上がる
今回ゲストとしてkintone活用について語ってくれるアポロ販売さんは、プロパンガスや灯油など北国には欠かせない燃料販売を中心に、ストーブや灯油など関連機器の販売、メンテナンスを行なっている企業。北海道では大容量の灯油タンクを備える家庭も珍しくないので、ホームタンク洗浄なんていう関東では聞き慣れないサービスも手がけている。
「お酒が回る前に真面目な話をして、だんだんざっくばらんに」という四宮さんの言葉通り、最初はkintoneとの出会いやそれまでの業務環境を聞いたりした。松永さんによればアポロ販売では以前からグループウェアを導入していたらしい。利用の中心はスケジュールの共有で、顧客管理にもITの力を活かしたいと考えたそうだ。
「当時使っていたグループウェアは多機能だったので、それでできないこともなかったのですが、オプション料金がかなりかかることがわかりました。それで、連携できる顧客管理できる製品を探し始めたんです」(松永さん)
そのときに、取引のあった富士ゼロックスの担当者に紹介された製品の中に、kintoneがあった。なんといっても簡単。アプリを使う人にも「自分でも使えそう」と思ってもらえることは、社員に普及させるために大きな要素だ。これだと思ってkintoneを導入、合わせてグループウェアもサイボウズ ガルーンに切り替えてしまったそうだ。これが約4年前のことだそうだ。
「4年前ということは新UIになったあと?」(四宮さん)
「そうですね。旧UIは知りません」(松永さん)
「ああー」」(四宮さん&斎藤さん)
旧UIと新UIのそれぞれの良さについてひと盛り上がる。その後も「CSVやExcelからアプリを作ることの是非」や「実際のアプリで直面した問題」が、本音ベースで語られる。一般的な勉強会のように登壇者が前に立って喋っていたらあり得ないほど、茶々が入りまくる。これは面白い場だ。お酒がまわるにつれて、アポロ販売さんも聞いている人たちもノリが良くなっていく。かといって、無礼講というのとは違う。みんなkintoneのことをもっと知りたいという気持ちがあり、お互いをkintoneユーザーとして尊敬し合っている。そんな場だった。
BGMは相変わらず90年代前半J-POP。録音を聞き返していたら、四宮さんが松永さんに質問した直後に「You say anything」と流れてきて吹き出しかけた。
テクニカルな話をしている間にも、生ビールをお代わりし、料理が運ばれてくる。喋るのに夢中で、食べるのが追いつかない。気になることがあれば口を挟んで質問し、他の人たちが喋っている間に、聞きながら料理を頬張る。とにかくもう、口を動かしっぱなしだ。合間合間に生ビール。筆者は例によってキャンピングカー移動なので、ノンアルコールだけれども。
メインの話題はkintone、メインの料理はザンギだ。北海道といえばザンギ。でも「ザンギって何?」というと、ネット上ではちょっとした論争を呼ぶネタだ。ザンギは唐揚げなのか、別物なのか、宗教論争に近くなるので個人的意見は差し控えたいが、気になるので今回の会場となった「大衆酒場 俺流」の大将にザンギについて聞いてみた。
「ザンギとは何かというと長くなりますね。ひとことで言うなら、ザンギは文化です」(俺流大将)
なんと。料理の枠を超えていた。そりゃ、論争にもなるわけだ。そして、ザンギか唐揚げかという話をさらにややこしくするかのように、大将は用意してくれたザンギについて説明してくれた。
「こちら(写真向かって右側)が、従来のザンギです。そしてこちら(写真向かって左側)が、最近出てきた塩ザンギです」(俺流大将)
えっ、ザンギにもいろいろあるのか。どう違うんだ、結局ザンギって何なんだ。
「北海道外の人から聞かれたら、こう答えています。つまり、唐揚げです」(俺流大将)
文化どこ行った。うまいから、いいか!
マニアも驚くテクニックをアポロ販売さんが披露
ザンギを頬張りながら、アポロ販売さんを質問攻めにしていく。松永さんたちは持参したPCを広げ、実際に運用しているアプリを見せながら、どんなことにつまずいたか、どうやって解決したかを赤裸々に語ってくれる。そんな中、四宮さんと斎藤さんが食いついた画面があった。顧客との応対記録を管理するアプリだ。
「なんか、表が見たことない色になってる」(四宮さん)
「何これ、カスタマイズして見やすくしてるんですか?」(斎藤さん)
「色、これ標準機能でありますよ」(松永さん)
「えっ、標準機能でこんなのあるの!?」(四宮さん&斎藤さん)
またしてもベテランの合唱だった。
石崎さんによれば、関連レコードを表示するとそのアプリで指定した色が表に適用されるのだそうだ。四宮さんも斎藤さんも知らなかったことらしく、「カスタマイズすればいいとか思い込みで使っちゃってるところがあるから、ユーザーさんの話を聞く機会って重要だね」と、また盛り上がったのだった。
ユーザーの声を聞く機会といえば、札幌発祥のアレはどーなんですか斎藤さん
終盤にはジョイゾーで取り組んでいる最新事例の話など、クローズドな場だからこそ共有できる話題も出てきた。それぞれの手法について根掘り葉掘り気になったことを、ざっくばらんに聞く。なるほどこれはマニアの集まりだ。
kintone Caféが明るいカフェをイメージして、楽しく和気藹々とkintoneの情報を共有する場だとしたら、キントマニアはマニア同士が集まるオタクのオフ会のような場だ。比較するのが正しいかどうかわからないが、筆者の印象はそうだった。どちらが心地良いかは、人によるだろう。オンラインのcybozu developer networkのような場も有用だが、ここだけの話やより細かい使い方を対面で聞けるキントマニアは、kintoneをある程度使い込んでいるユーザーにとって貴重な場と言えるだろう。実際、kintoneを最近使い始めたばかりの筆者にとっては、勉強になることばかりだった。
だが一方でkintone Caféも大切なコミュニティ。しかも今回集まった札幌は、kintone Café発祥の地であり、列席している斎藤さんはkintone Caféの創始者だ。それなのにkintone Caféの札幌での活動は2年近くも停滞している。その辺りについて、最後に斎藤さんに話を聞いた。
「私が始めたけれど、私がドライブし続けないといけないということはないんです。再開して後継を育成して、継続的な場にしたいと思っています。とりあえずは、再開ですね。やりますよ!」(斎藤さん)
ということで、キントマニアだけではなくkintone Café札幌の今後にも期待を感じたザンギの夜だった。