松本典子の「Azure Logic Apps」超入門 第3回
問い合わせへの自動返信、kintoneへの自動登録、クレーム自動判別の仕組みを作る
クレーム対応AIを簡単実装、Logic Appsで「お問い合わせフォーム」を機能拡張してみよう
2018年04月09日 09時00分更新
こんにちは。Azure MVPの松本典子です。この連載では、マイクロソフトが提供する「Azure Logic Apps」について、全3回で説明していきます。Logic Appsは何ができるサービスなのかを説明した1回目、Logic Appsを使い始める手順と操作を解説した2回目に続き、この第3回目では、Logic Appsを実務的に使う構成例として、「Logic Appsでお問い合わせフォームを作成し、各種サービスと連携させるワークフロー」を紹介します。
Logic Appsを利用してお問い合わせフォームを機能拡張する
企業サイトやECサイトなどによくある「お問い合わせフォーム」は、ゼロから作ろうとするとノンプログラマーにはなかなか難しいものです。ここでLogic Appsを使えば、問い合わせフォームから送信されたメールに自動返信する機能や、問い合わせ内容をバックエンドシステムに自動登録する機能、さらには急いで対応する必要がある問い合わせ内容かどうかをAIで自動判別する機能などを、ノンコーディングで実装することが可能です。
今回は、「名前」「Email」「お問い合わせ内容」の3つの入力項目があるお問い合わせフォーム(情報はHTTP POSTで送信)を例に、(1)お問い合わせフォームに投稿したユーザーに自動返信メールを送信し、同時にお問い合わせ内容をkintoneに自動登録、(2)Cognitive Servicesを利用してクレーム内容か自動判別---の2つの仕組みを、Logic Appsで作成してみます。
1.自動返信メールの送信、お問い合わせ内容をkintoneに自動登録
お問い合わせフォームから送信された内容に対して自動返信メールを送信する仕組みと、kintoneアプリに内容を自動登録する仕組みをLogic Appsを利用しノンコーディングで作成します。以下が、Logic Appsのワークフロー全体図です。各コネクタについて説明します。
1.1 トリガー
トリガーは「要求」コネクタを使用します。「要求」コネクタは、お問い合わせフォームで「送信」ボタンがクリックされると起動し、後続のコネクタ(アクション)にお問い合わせフォームの内容(値)を渡します。
「要求本文のJSONスキーマ」に記載するJSONの例は以下のコードを参考してください。
{
"properties": {
"email": {
"type": "string"
},
"message": {
"type": "string"
},
"name": {
"type": "string"
}
},
"type": "object"
}
1.2 日時の取得とタイムゾーンの変換
今回使用しているお問い合わせフォームでは、送信時の日時取得を行っていません。ですが、お問い合わせ内容をkintoneに自動登録するためには「お問い合わせ内容の受信日時」を取得する必要があります。このような場合でも、Logic Appsを利用すれば、後から機能を付与することが可能です。
まず「現在の時刻」コネクタは、個別に設定が不要なコネクタです。選択するだけで後続のコネクタで値を利用できるようになりますが、Logic Appsのタイムゾーンは基本的に「太平洋標準時(米国およびカナダ)」になっています(コネクタによって違う場合もあります)。「現在の時刻」コネクタで出力される値をそのまま利用すると、日時にズレが発生してしまうので、「タイムゾーンの変換」コネクタを利用して「大阪、札幌、東京」に変換しておきましょう。
1.3 メール送信
自動返信メールと管理側にお問い合わせ内容のメールを送信する部分です。OutlookコネクタやGmailコネクタでもメール送信が可能なコネクタはありますが、これらのコネクタでは送信元メールアドレス(メール受信側で「From」で表示される部分)のカスタムはできません。
お問い合わせに自動返信メールを送るとき、送信元メールアドレスを「info@example.com」のような表示にしたい場合はSendGridコネクタ「メール送信(V2)」を利用します。
SendGridコネクタは事前に利用登録をする必要や設定がありますので、詳細はこちらの記事を参考にしてください。
1.3.1 自動返信メール
Logic Appsのコネクタは、上図のようにコネクタ名を変更することも可能です。どの処理をするコネクタかわかりやすいように「自動返信メール」と追記してみました。(日本語利用可)。
件名、メール本文とも「実際に送信したい内容」をそのまま記述することが可能です。また、自動で「動的なコンテンツ」項目が表示されるので、直感で利用したいコンテンツの値を入力することもできます。
送信メールを見た目通りに改行させるために「詳細オプションを表示する」内にある赤枠内を「false」にする必要があります。(改行しない場合は、SendGridの管理画面での設定を確認してください)。
このような内容の自動返信メールが送信されます。(Outlook受信時)。上図の赤枠内にコネクタで選択した動的コンテンツ内容が表示されています。
1.3.2 管理側にお問い合わせ内容のメール送信
管理側にお問い合わせ内容を送信する仕組みにも、SendGridコネクタ「メール送信(V2)」を使います。
上図のような内容のメールが送信されます。(Gmail受信時)。
1.4 お問い合わせ内容をkintoneに自動登録
kintoneで作成した「お問い合わせ管理」アプリ(kintoneのアプリストアに完成したものが用意されています)に、お問い合わせ内容を自動登録します。kintoneコネクタの設定や詳細はこちらの記事を参考してください。kintoneは「スタンダードコース」で利用する必要があります。
kintoneコネクタの「Add a record to an app」を利用し、各項目に当てはまる「動的なコンテンツ」項目を選んでいきます。
上図が、kintoneのお問い合わせ管理アプリに入力された結果です。Logic Appsで「動的なコンテンツ」項目の部分が入力されています。また、kintoneアプリ側の項目変更をした場合もLogic Appsに反映されます。今回はkintoneアプリ側の変更をほぼ行っていませんが、項目は適宜変更してみてください。
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