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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第23回

ジャズ・クラシックスからアニソンまで必聴の10作品

麻倉推薦:中島美嘉のダリフラOPやシン・ゴジラ&エヴァなど盛りだくさん

2018年04月02日 18時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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『Early Chet - Lost Tapes』
Chet Baker

 50年代のビックバンドサウンドが、見事に、麗しの音色を身に着けて、現代に蘇った。南西ドイツ放送局(SWR)音源による『Lost Tapes』シリーズを、カナダの高音質プロダクション2xHDが、DSDでマスタリングした。

 1950年代後半の録音だが、現代技術でDSD2.8MHzのマスタリングをした音は素晴らしい。オリジナルのアナログ的な雰囲気が横溢し、DSDならではの艶やかさ、音場の深さ、そしてヒューマンタッチのエッジ感が美質として聴ける。艶めかしい金管音のトランペットは音場センターに大きな音像で位置し、確固たる音楽性を聴かせる。トランペットの繊細さ、深み、そしてセクシーな表情。むせび泣くストリングスの艶っぽさ。それらを巧みに表現する2×HDのマスタリング技には、いつも感動だ。

FLAC:192kHz/24bit、96kHz/24bit
WAV:192kHz/24bit、96kHz/24bit
DSF:11.2MHz/1bit、5.6MHz/1bit、2.8MHz/1bit
2xHD、e-onkyo music

『After Bach』
Brad Mehldau

 バッハの鍵盤の名曲と、そこからインスピレーションを受け、メルドーが作曲したナンバーが交互に収められた異色のアルバム。バッハの「平均律クラヴィーア曲集」から4つの前奏曲と1つのフーガを取り上げ、それらの後に、楽曲にインスパイアされたメルドーの手による”After Bach”(バッハ流の)楽曲を置く。

 アルバムの幕開けを飾るのは、メルドーによる「Before Bach: Benediction」、そして締めくくるのも彼による「Prayer for Healing」。そもそもバッハは即興演奏の大家でもあり、その点で現代ジャズと通する。バッハ作品がジャズ素材として採り上げられることスが多いのは、バッハ音楽の構築力が強固で、揺るぎない構造であるからだ。

 第2曲、バッハのプレリュード第3番嬰ハ短調。バッハそのものの楽譜を演奏するが、そもそもこの時点で、自由な発想にて自らのバッハ世界を伸び伸びと展開している。第3曲はアフター・バッハ版でそこから作り上げた「ROND」。続けて聴くと同じ曲なのではと錯覚するぐらい、バッハ的な即興が愉しい。バッハが現代にいたら、きっとこんなジャズに走っただろうと想像する。9曲目「After Bach: Dream」は、不協和音の連続が奏でる不安感が鮮烈だ。Nonesuch Recordsならではの、アンビエント豊かなピアノソロサウンドも素晴らしい。

FLAC:96kHz/24bit
Nonesuch Records、e-onkyo music

『New Romantic Paradise』
しげのゆうこ with サイラス・チェスナット

 2012年度日本ジャズボーカル賞・優秀歌唱賞を受賞した実力派ヴォーカリスト、しげのゆうこのニューヨーク録音だ。

 第1曲「Do I Do」ではスピード感に溢れ、鮮烈なビートと、ノリの快速さ、伸びのクリヤーさが、ヴォーカル的な聴きどころだ。バックの疾走感も、心地良い。2曲目、「Tears In Heaven」はしっとりと感情を歌い上げる。ジャズ的な崩しの上手さが、キャリアを物語る。6曲目、エルビス・コステロの「SHE」は、ボサノバのリズムに乗り、気持ちの良いグルーブを聴かせる。録音はヴォーカルとバックのバランスがよく、音場サイズもアコースティック的にも適切だ。

FLAC:88.2kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music

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