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「100農家いれば100通りの農業」セミナーレポート前半

チャレンジャーたちが語るIT×農業が生み出す価値とは?

2018年03月29日 09時30分更新

文● 重森大

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農福連携の基盤としてkintoneを活用、障害者の復帰を支援

 「農福連携とkintone」という、山森農園に近い取り組みを行っている埼玉復興株式会社。新井 利昌社長が登壇する予定だったが、監査のため残念ながら欠席。代わりにステージに立ったのは、共に取り組んでいる本庄早稲田国際リサーチパークの佐藤 徹さん。

 埼玉復興が目指すのは、ソーシャルファーム。ファームと言っても農場を意味するFarmではなく、北イタリアで始まった労働市場で不利な立場にある人々の雇用を創出するための社会的ビジネススキームで「Social Firm」と表記する。障害者のための仕事を生み出し、それをビジネスとして継続させるためのスキームだ。

埼玉復興を中心に労働市場で不利な人々の仕事創出を進めている

 埼玉復興の主力作物は、自然農法で栽培されるオリーブ。国際的にも品質を認められ、各地に出荷している。取り組みの方向性が近いことから、先に発表した山森農園とも密に連携しているという。

「お互い、親の世代から山森農園さんとは連携して取り組んで来ました。kintoneアプリも山森農園さんのものを手本にさせていただきました」(佐藤さん)

本庄早稲田国際リサーチパークの佐藤 徹さん

 農福連携ならではの課題として、従業員の体調管理の重要性が挙げられる。障害を持つ人の中には、肉声でのコミュニケーションが苦手な人も珍しくない。しかしそんな人でも、文字によるコミュニケーションなら平気な場合があり、kintone導入によって思いを共有できる人が増えたという。多様な働き方を支えるには、多様なコミュニケーションの場が必要ということだろう。

国内各地の連携農家と情報共有、品質確保と通年出荷を実現したNKアグリ

 NKアグリはレタスの水耕栽培という、完全に管理された農業からビジネスをスタートした企業だ。当初は自社生産のみであり、kintoneも経費精算に使われるだけだった。しかしリコピン人参「こいくれない」の生産に取り組み始めてから、ビジネスの方向性もkintoneの活躍の場も大きく変わった。

 こいくれないは、リコピン含有量が通常の人参の約7倍という高付加価値野菜。これを全国50ヵ所ほどの提携農家で生産している。生産拠点を南北に広く散在させることで、収穫時期を意図的にずらし、通年出荷を可能にしている。多くの提携農家と連携して品質を均一に保ち、出荷時期を調整するためには、スムーズなデータ共有と綿密なコミュニケーションが欠かせない。それを支えてきたジョイゾーの山下 竜さんは次のように言う。

ジョイゾーの山下 竜さん

「栽培地に設置した温度センサーから得られる情報をkintoneで収集、NKアグリからは環境因子と人参の生育との関係を分析した情報を入力し、提携農家さんには栽培面積や発芽率などの栽培情報を入力してもらっています。これらを元に収穫時期の差違、収穫量の予測を共有しています」(山下 竜さん)

 使っているセンサーはT&Dのおんどとり。農家ごとではなく、提携農家が存在する7つの道や県にセンサーを設置し、全体的な傾向を把握している。温度や湿度をそのままkintoneで共有するのではなく、クラウドでデータ分析を行い、解釈して得られた事象のうち必要な部分だけをkintoneに記録、共有しているという。

提携農家がある7つの道県にセンサーを設置して情報を収集している

 どれくらいの収穫が見込めるのか各農家からの数字が集まるが、そこにコメント欄がついていることが大きいポイントだと、NKアグリ社長の三原 洋一さんは語る。

「単なる数字だけではなくコメントを添えることで、簡単に生育が伸びているのか、苦労して伸ばしているのかがわかります。営業担当者もこれを見ることで、出荷できる量に限りがある理由がわかるようになり、営業現場と生産現場との温度差が近づきました」(三原さん)

NKアグリの三原さん

 野菜工場というコントロール化で効率的なかたちの農業からスタートしたNKアグリだが、IT、IoT技術を活かして制御できない農業を活性化することに興味が向きつつあるようだ。そこでは人と人をつなぐコミュニケーションがさらに重視されることになるだろう。

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