このページの本文へ

国内企業の管理職を対象に「働き方改革とデジタル活用」に関する意識調査を実施

「働き方改革、ビジネス成長につながる投資が不足」オラクル調査

2017年11月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本オラクルは11月1日、国内企業の管理職を対象に行った「働き方改革」とデジタル(業務ITツール)活用に関する意識調査の結果を発表した。調査企業のおよそ8割は何らかの形で働き方改革に取り組んでいるが、ほとんどの企業が具体的なビジネスのプラス成長につながる効果はまだ出せておらず、具体的な課題も数多く指摘されている。

今回の調査結果のサマリー。約半数の企業が「生産性向上」を一番の目的に掲げているが、その成果を出すためのさまざまな課題も明らかになった

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド事業本部長のキム・ハンシン(Kim Hanshin)氏

具体的な効果が出せているのは残業削減など「労働環境の改善」

 この調査は、日本オラクルが慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 岩本研究室の協力を得て、今年10月に実施したもの。調査対象は、従業員100名以上の国内企業で働く部長職以上の管理職412名。同日の発表会では、同社 執行役員で HCMクラウド事業本部長のキム・ハンシン氏が調査結果を説明した。

 調査結果によると、何らかの形で「働き方改革に取り組んでいる」回答企業は82%を占めている。取り組む目的の最上位となったのは「生産性の向上」(48.7%)であり、その意識や期待が働き方改革に向けた最大のドライバーとなっている。

働き方改革の取り組み状況。回答企業の8割が何らかの取り組みを実施している

 働き方改革に取り組んでいる企業のうち、約半数(49%)が取り組みの効果が「あった」としている。ただし、明確に「効果あり」とした回答者は4%にとどまり、多くは「やや効果あり」(45%)という段階。

 具体的に効果が出ている取り組みとしては、「残業時間の削減」(57.8%)や「有給休暇の消化促進」(38.7%)など、労働環境の改善に関係するものが中心だった。逆に、「自社の持続的成長や競争力強化など『生産性向上』によるビジネス成長を直接的に示唆する回答は少ない」(オラクル発表より)。

取り組みの効果が「あった」企業は約半数だが、労働環境の改善に関する効果が中心だった

 一方で、「うまくいっていない取り組み」の1位、2位には「人事評価指標・方法の変更」(25.5%)、「柔軟な勤務制度の導入」(22.9%)と、企業内の制度変更を伴う取り組みが並んでいる。これについてキム氏は、制度変更が進まないというケースだけでなく、新たな制度は導入できたものの、それにより社員個々人の意識(たとえば働く目的)との間にギャップが生じているケースも含まれると説明する。

 加えて「うまくいっていない取り組み」の3位は、多くの企業が目標に掲げて取り組んでいる「残業時間の削減」(19.9%)だった。オラクルでは、「実際の業務量を減らすための取り組みを行っていないにもかかわらず労働時間だけを削減するというのは結果的に無理が生じていると感じる人が多いからだと考えられる」(発表より)と分析したうえで、社内制度や業務の仕組み、さらに業務標準化や社員スキル向上なども合わせて取り組む必要があることを指摘している。

うまくいっていない取り組み。旧来の指標や制度を変更し、それを社内に定着させる難しさが背景にある

生産性向上の阻害要因。「社員のスキル不足」がトップ回答だが、旧来の業務を見直せていない点、新たな「仕組み」が用意できていない点も複数指摘されている

 またキム氏は、調査に回答した管理職自身の意識改革が進んでおらず「当事者意識が薄い」という問題も指摘した。調査結果によると、働き方改革全体の取り組みを阻害する要因として「社風・文化へのフィット」(33.8%)、「一般社員のコミットメント」(20.9%)、「経営者の強い推進力」(18.2%)などが挙がっている。

 「少し厳しい言い方をすると、本来は自らが施策を打ち、コミットしなければならない管理職が“他人のせい”にしていることが明確にデータとして表れているかな、と思う」「積極的に現状を変えよう、という意識が低い」(キム氏)

働き方改革全体に対する阻害要因。制度や仕組みよりも社風・文化や個々人の意識の問題を感じている管理職が多い

マイナスを減らす「効率化」だけでなくプラスを伸ばす「成長」へ投資を

 働き方改革を目的としたICT活用については、「積極的に活用」が7%にとどまる(「部分的に活用」を加えると44%)。さらに、生産性向上に活用しているICTツールは「経理・財務システム」(40.4%)、「グループウェア」(33.2%)など「どちらかというとオペレーショナルな業務に着目している」(キム氏)傾向があり、タレントマネジメントシステムや社内SNSなど「イノベーションを生むためのテクノロジー」に対する投資が少ないと、キム氏は指摘した。

 なお前出の「効果が出ている取り組み」の設問で、「ICTによる業務削減」を挙げた回答者は5.9%にとどまっている。ただし、他方でAI(人工知能)やRPA(ロボティクスプロセスオートメーション)、IoTといった最新テクノロジーに対する期待は高く、76%が「長期的な生産性に寄与する」と見ているという。

 まとめとしてキム氏は、企業が競争力を高め、持続的に成長していくためには、業務のなかの無駄(=マイナス)を削減していく「効率化」だけではなく、イノベーションによってビジネスの付加価値(=プラス)を高めていく「成長」のための取り組みも同時に必要であることを指摘。だが、今回の調査結果からは、まだまだ効率化への取り組みだけに投資が集中しており、イノベーション/成長への投資ができていないことが明らかになったと説明した。

企業競争力向上のためには、単なる「効率化」段階にとどまるのではなく「成長」に向けた投資も必要だとキム氏は指摘した

 「成長イコール人を中心としたイノベーションであり、(企業競争力向上のためには)単にオペレーショナル業務の効率化、削減だけでなく、いかに新しい発想で新しい市場に対して積極的に取り組んで行くか、タレント(人材)も含めてマネジメントをしなければならないことがわかった。そして、管理職の方々がそれを主体的にドライブしていって、このピクチャー(図)を頭に描きながら推進していくことで、いろいろな課題が解決できるのではないか」(キム氏)

 なお今回の調査レポート全文は、後日、日本オラクルから公開される予定だ。

働き方改革を支援する「Oracle Cloud Applications」SaaS群を紹介

 発表会では日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部長の原智宏氏が、顧客企業の働き方改革を支援するツールとして「Oracle Cloud Applications」のSaaS群を紹介した。

 働き方改革の取り組みを持続的なものにするために、オラクルではデジタル化を通じて「有機的な協働の促進」「イノベーションのさらなる活用」「迅速な効果の体感」という3つの点から顧客を支援できると考えているという。

 オラクルは多様な業務SaaS群をラインアップしているが、そのポイントは、Oracle Cloudの共通基盤によってデータが一元管理/活用できるため「協働の場」が実現しやすいこと、AIやIoT、ブロックチェーンなど最新のイノベーションがすぐに活用できる付加機能として提供されること、そして迅速に導入できるため業務現場においても業務効率化やTCO削減のベネフィットが“体感”しやすいことだと説明した。

■関連サイト

カテゴリートップへ

ピックアップ