2017年はスマートフォン業界にとって特別な年だ。そう、今年はiPhone10周年。そして9月には新iPhoneも発表されるはずだ。1000ドルの最上位モデルなど、「iPhone 8」(?)についてはさまざまな憶測が出ているが、iPhoneについてのある調査が興味深いので紹介したい。
iPhoneの人気の秘密
“iPhoneがなぜ人気なのか? それはiPhoneだからだ”
このようなステータスは、宿敵のSamsung、今をときめくHuaweiなどは得られないと言っていいだろう。米国の成人2100人を対象にした「iPhone Fluent」という調査を見てみよう(http://www.fluentco.com/insight/apple-iphone-8-price/)。
この調査では、どのブランドのスマートフォンを使っているのか、前回買い換えたのはいつか、次に買おうと思っているスマートフォンブランドは何かなど、さまざまな質問とその答えが並ぶが、重要なことは、「iPhoneユーザーはiPhone以外は検討してない」ということだ。
たとえば「次に買うスマートフォンブランドはどれになりそう?」という質問に対して、iPhoneユーザーの79%が「iPhone」を挙げている。なお、調査ではブランドとして「Apple iPhone」「Samsung」「LG」の3つと、「その他のAndroid」「Windows Phone」に分類している。つまり、Samsungはハイエンドの「Galaxy」に限定せずすべてのSamsungブランドのスマートフォンであり、LGも同じくである。では、Samsungユーザーはどのぐらいか? 63%が「次もSamsung」とし、次に多かったのは「その他のAndroid」(29%)だった。数値は結構高いが、ブランドロイヤリティーはiPhoneよりは落ちる。
iPhone発表当時の欧州のモバイル業界関係者は
その脅威を真剣に受け止めていなかった
iPhoneを一度使ったユーザーは、その後もiPhoneを買い続けている。周囲を見ればわかることだが、調査はデータとして実証している。
調査ではiPhoneのシェアを34%としており、その34%の人たちにこれまで何台のiPhoneを所有したかを尋ねている。最も多かったのは3台で22%。4台も18%で、その次は6台以上となる。6台以上の場合、初代iPhoneから買っていたとすれば、1年半に1度買い換えているという素晴らしい忠誠心だ。
なお、次に買い換えるならどのiPhone? という質問に対しては、9月発表を期待される「iPhone 8」が最も多く40%となっている(「iPhone 7s」が17%、「iPhone 7s Plus」が19%)。iPhoneのユーザーは古い機種を維持することが少なく、買い替えも最新のものにアップグレードするという、メーカーにとっては理想的な消費者と言える。
なおiPhoneは中古市場でも人気で、知人の女の子(ドイツ、13歳)は「iPhoneが欲しかった。新品は高いから、中古を買ってもらった」と言っていた。同じ値段なら、他社のAndroidの新品よりも中古のiPhoneを選ぶとのことだった。メーカー、オペレーター、小売による下取りプログラムが充実しており、IDCによると、中古スマートフォン市場は2015年から2020年まで年平均成長率22.3%増で成長する見込みとのこと。
Fluentの調査を見ながら思い出したのが、10年前のことだ。当時欧州のベンダーは、大西洋の向こうのiPhoneブームを真剣に受け取っていなかった。「3Gにも対応していない。携帯電話とは言えない」と一笑したNokiaの幹部もいた。また、最初Appleがとったキャリア限定(米国のAT&T、日本のソフトバンクのように1ヵ国に1キャリアが独占して販売できるというモデル)路線が、SIMを差し替えするのに慣れている欧州ユーザーになじむわけがないという意見も聞かれた。
それでもiPhoneはヒットした。そして、その理由こそがAppleのiPhoneだからだろう。ネットワークにしてもカメラのクオリティーにしても必ずしも最先端ではなかった(今でもそうだろう)。だが、タッチによる操作性と斬新なデザイン、そして何と言っても”iPhoneである”という理由で、消費者は選んだ。
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