スタートアップ企業ニューラブルは、VRヘッドセットと電極を埋め込んだヘッドバンドで脳波を記録し、プレイヤーが考えた動作を実現できる、風変りなVRビデオゲームを開発している。夢のような技術が間もなく現実になるかもしれない。
念力を現実世界で利用するにはまだ時間がかかりそうだが、脳でコントロールする実質現実(VR)のゲームは、2018年ごろには脳波を使って苦もなくアイテムを拾って投げられることを目指している。
ボストンのスタートアップ企業、ニューラブル(Neurable)は、開発しているディストピア風SFゲーム「アウェイキニング(Awakening)」のデモを大々的に公開し、ゲームの試験運用を始めた。このゲームはHTC ViveのVRヘッドセットに接続する、電極を埋め込んだヘッドバンドを使ってプレイする。アウェイキニングは、VRヘッドセットを装着したプレイヤーを念力を持つ子どもとして映し出し、風船でできた犬、アルファベットの積み木、虹色の輪投げなど、さまざまな玩具を脳波で拾って投げつけて政府の研究室から逃げ出す——というゲームだ。
ゲームの背景にある技術は、ロサンゼルスで先日開かれた最新のコンピューター・アニメーションとインタラクティブ手法の国際会議・展覧会シーグラフで披露された。ドライ電極と脳波(EEG:electroencephalography)を使って脳の活動を記録し、ソフトウェアが信号を分析して、ゲームの中でユーザーが意図する動作を導き出す。
ニューラブルは2017年内にアウェイキニングを完成させる予定で、2018年中には増え続けるVRアーケード企業がこのソフトウェアと関連ハードウェアを採用することを期待していると話した。
デモは列車、飛行機などの玩具を呼び出すための調整から始まる。VRヘッドセットと電極を埋め込んだヘッドバンドを装着したプレイヤーは、バーチャル空間で目の前に浮かんでいる物体の輪の中から、玩具を正確かつ迅速に選択できる。プレイヤーが何をしているのかは、別のコンピューター画面で確認できた。
タフツ大学で脳コンピューター・インターフェイスを研究しているコンピューター科学者のロブ・ジェイコブ教授は、この種の技術がメインストリームに向けて少し進んだことに興奮していると話す。脳コンピューター・インターフェイス技術はこれまで主に障がい者に向けに使用されており、扱いにくく動作が遅い傾向にあったからだ。
ニューラブルは短期間に数多くの改良を重ねていて、まもなくさらなる改良版を出すという。たとえば、訓練には数分間かかるが、ニューラブルの共同創業者のラムセス・アルカイドCEO(最高経営責任者)によると、かつては10分間かかっていたという。2017年9月までにこの訓練を完全に廃止し、プレイヤーがゲームを起動してすぐにプレイできるようにしたいと、アルカイドCEOは付け加えた。
しかし、ハードウェアはまだかなり不格好で、ソフトウェアとハードウェアが揃って完成された製品となるのはまだ先のことだろう。そのうえ、脳インターフェイス技術は一部の人にはまったく機能しないとジェイコブ教授は話す。「脳とは実に複雑なものなのです」。