このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

純A級フルバランスプレーヤーの実力を探る

デジタル時代のアナログサウンド QP2Rはアニソンが愉しい!

2017年08月14日 16時00分更新

文● 天野透/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 次に“みのりん”こと茅原実里の「ありがとう、だいすき」。彼女を一躍有名にした長門有希のifをたどる「長門有希ちゃんの消失」のエンディングテーマで、みのりん特有のまっすぐな柔らかい歌唱がよく表れる楽曲だ。

 ビブラートでサウンド的なボリュームを出すのと違って、彼女の歌唱法はサウンドの芯がしっかりしていないと音像がボヤけてしまうが、QP2Rに対してそういう心配はまったく無用だった。太い音で立体的に引き立っており、コーラスが入ってもまったくみのりんが埋もれない。加えて定位が抜群に良く、いつもの環境よりも存在感がある。端的に言うとみのりんが近いのだ。

 アコギやウィンドチャイムといった、音の角も聴き取りやすい。楽器とみのりんの対比も鮮やかで、柔らかい音との描き分けでどちらの存在感もしっかりとしている。引き締まった低音はみのりんをよく引き立てていて、ピンポイントで入るピアノの弾み方がとても心地よい。

 間奏ではコーラス、ベース、オーボエなど、多彩な音が入り乱れるが、多彩な音色の描き分けが実に見事だ。そして楽曲最後の「ありがとう」というセリフで、それまでの曲を包みこむような優しさを音楽に与える。とても前向きなワンフレーズが、これ以上無いくらいに伝わってくる。これぞオーディオの「表現力」だ、たまらん。

Image from Amazon.co.jp
タイトル通りの優しさがあふれる「ありがとう、だいすき」。ほぼノンビブラートで柔らかいみのりんの歌声を満喫できる楽曲だ。QP2Rの太いサウンドで聴くと、彼女の存在感をより近くに感じる。やっぱり好きなアーティストの楽曲はできるだけ良い音で聴きたいと再確認した

 最後はangelaの「Shangri-La」、未知の巨大生命体との絶望的な戦いを続ける少年たちを描く「蒼穹のファフナー」のオープニングテーマだ。聴きどころはやはり強烈なインパクトを与えるビブラートなど、極太のAtsuko“姐さん”のヴォーカルだろう。

 これが貧相では台無しだが、QP2Rでそんな心配はご無用だ。Atsuko姐さんの歌い方はものすごく大量のブレスを使うもので、そのためangelaの音源にはよく姐さんのブレス音が入っているが、今回の試聴では鋭くかすれたブレスも聴かれた。

 もうひとつこの楽曲の特筆点として、1番のサビ頭「僕らは目指した」のフレーズを挙げたい。実はここだけ他の部分と違い、喉を締めてチカラを込め、意図的に“悪い歌い方”をしている。どんな歌であれ、歌唱の基本は肩の力を抜いて腹式呼吸でブレスを支えてキレイな声を出すことだが、それでは“閉鎖環境で戦い続け理想郷をめざす”というアニメの世界観が表現できない。

 ここではわざと声を荒げることで一縷の望みにすがる竜宮島(たつみやじま)の叫びを表現している。力量のある歌手の豊かな歌い方と、それをきちっと表現する機材環境があって、初めて音楽の物語世界へ飛び込めるのだ。シングルリリースから10年以上経って、新たに発見する新境地である。

Image from Amazon.co.jp
今やすっかりベテランアイソンアーティストになったangela。激しく揺れる音と、発音が口先と口腔で一致しないという、Atsuko姐さんの独特の歌唱が特徴的だが、「Shangri-La」の頃は今よりもっと癖が強かったように感じる

音が教えてくれる音楽の“愉しさ”

 以上、純A級・フルバランス駆動のQP2Rで、アニソンの楽しさを存分に満喫した。単純にアーティストを近く感じるというのはもちろん、声の力強さをはじめとしたプレーヤーの高い表現力で音楽を通して、まるでアニメを観るように音楽を楽しむことができたのが印象的だった。“情熱のアナログサウンド”とも言うべき音の自然さには、人を惹き込む魔力がある。

 ただ、試聴中に気付いたことだが、ギャップレス再生がないことは少し気になった。交響曲や協奏曲などは楽章を跨いで音楽が続くことがあるため、音楽の世界に没頭するためにもぜひアップデートで対応してほしい。

 最後に使用上のアドバイス。プレーヤーの設定でHi/Mi/Loという3段階のゲイン調整が可能だが、ここをしっかりとイヤフォンにあわせることを推奨する。高インピーダンスのイヤフォンを駆動しきるハイゲインの音に触れれば、エネルギッシュな音を通してきっと音楽の感動に触れられるだろう。

 今回のレビューで僕からぜひ伝えたいのは、次の一言だ。

「この音は“愉しい”」

■関連サイト

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中