家電や業務用機器などにインターネットへの接続機能を持たせて、便利なサービスを実現する「Internet of Things(IoT)」。最近ではおなじみのトピックとなった感があり、クラウドファンディングや企業内の小規模プロジェクトなどでIoT機器を開発する例もめずらしくない。
運動量を取得してネットで確認するウェアラブル機器や、スマホで外出先からコントロールできる「スマート家電」などの存在も浸透してきた。電気や水道などのインフラもインターネット経由で動作させているケースがあり、IoTの活用例といえる。
一方で、IoTデバイスもネットワークの一部である以上、ネットワークを経由した脅威に晒される可能性がある。この点に関しては、企業だけではなく、ユーザーも不安を感じ始めているようだ。
2017年6月のMcAfeeとBCNの調査によると(レポートはこちら)、IoT時代の進展に関する不安要因を尋ねた設問では、80.5%が「個人情報の流出」、74.9%が「ウイルス感染」、46.9%が「犯罪への利用」を挙げた。IoT社会の宿命でもある「いつも誰かに監視されている気分になりそう」という要因も、42.6%と決して低くない。
IoT導入をどんなジャンルで期待するかという設問では、「住宅・住まい」が高い数値(34.8%)を出している。一方で、セキュリティーの不安を感じるジャンルでは、「住宅・住まい」が最多だった。
住宅のIoTに危機が迫る……というケースは、一般層にも実害が予想しやすいのかもしれない。個人情報が流失したり、ウイルスで家電などが使い物にならなくなったりする光景は、今まではあまり感じられなかった脅威といえるだろう。
さまざまなガジェットや家電などがネットワークに繋がる時代になれば、家庭でそれを利用する我々は、セキュリティーに対してしっかりとした知識を持つことが必要になるはずだ。
たとえば、IoT機器を使用する際は、ユーザー名とパスワードを初期設定のままにせず、第三者に推測されにくいものに変更することでも、不正プログラムへの感染を防止する有効な対策になる。
また、「McAfee Secure Home Platform」など、家庭内の機器を一括して管理するセキュリティーソフトもある。来たるべきIoT時代にそなえ、いたずらに悲観的になるのではなく、悪意を持った攻撃を防ぐ方法を知っておきたいもの。
今回はMcAfee Blogから「IoTがもたらすライフスタイルの変化とは」を紹介しよう。
IoTがもたらすライフスタイルの変化とは
マカフィー株式会社 CMSB事業本部 コンシューマ マーケティング本部 執行役員 本部長の青木大知です。個人向け製品のマーケティングを担当しております。
2017年6月、マカフィーと株式会社BCNは共同で、IoTによるライフスタイルの変化とセキュリティ意識について探ったレポート「IoTによるライフスタイルの変化-消費者意識調査」を発表しました。本年1月にラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」と、2月にバルセロナで開催されたモバイル機器の見本市「MWC 2017」の取材および、日本のデジタルリテラシーの高い消費者を対象としたIoTに関する意識調査の結果をまとめたものです。
本格的に進展するIoT時代
あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術がますます進展し、家電、ヘルスケア、ウェアラブルデバイスなど多様な製品に取り入れられるようになっています。将来的には車の自動運転や、音声会話によるIoTデバイスのコントロール、家事のオートメーション化など生活全般を変えていくのかもしれません。
またIoTデバイスをセンサーとしたビッグデータの収集は、AI(人口知能)による高度な分析、深層学習など“旬”の分野と密接に関わるものでもあります。
実際に今回の「CES 2017」では、Amazon Axela(Amazonが提供するクラウドベースの音声認識サービス)の対応機器が700点以上出展。センサーの高度化によって心電図まで記録することができる活動量計など高機能なデバイスや、歯ブラシ、机、ベッド、水筒といった幅広いジャンルのIoT搭載事例が数多く見られました。
一方であまりにも多数のIoTデバイスが家庭内に存在するようになると、個々にセキュリティ対策を取ることが難しくなってきます。近年IoTデバイスを狙ったマルウェアが発生し、世界的に拡散するなど、IoTに関連した脅威が広まりを見せており、IoT化が進めば被害規模もさらに拡大していくでしょう。そうしたインターネット上の脅威やプライバシー保護の対策をどう考えていくかが今後の課題といえます。
消費者はIoTのセキュリティに関心
消費者自身はどのようにIoTを捉えているのでしょうか。今回は日本のデジタルリテラシーが高い20~60代の消費者を対象に、2017年2月14日~16日の3日間、2,000人の方々にインターネットを使った意識調査を実施しました。その結果を見ると、セキュリティ意識について、いくつか興味深いデータが出ています。
IoT時代の進展に関する不安要因を尋ねた設問では、80.5%が「個人情報の流出」を、74.9%が「ウイルス感染」を、46.9%が「犯罪への利用」を挙げました。別の設問でIoTそのものの認知度は高くないとの結果がある中で、直感的な不安を抱いているともいえそうです。
IoT導入が期待される分野と、セキュリティに不安がある分野についての回答を比較してみましょう。「生活家電」は期待が37.5%、不安が24.5%。「フィットネス・健康」は期待が20.9%、不安が8.5%と、既にIoT導入が進んでいるジャンルでは期待が上回っているようです。
反対に「消費・金融」は期待が14.1%、不安は41.7%と、不安視する声が大きく上回りました。次いで「住宅・住まい」が期待34.8%に対して不安が46.0%と、実害の大きな分野に不安が高まりがちな傾向がみられます。
最も興味深いのは、具体的なIoT導入例の中から、利用したいと思うものを選んでもらう設問です。10の導入例のなかで最も利用意向が高かったのは「PCやスマートフォン1台ずつにセキュリティ対策を施すのではなく、自宅の無線LAN機器(Wi-Fi)1つにのみ施すことで、全ての通信機器をウイルスから守る」(利用したい 39.0%、やや利用したい 28.1%)という結果になったのです。
ほかにも外出先から家庭の機器を監視・コントロールするサービスの導入例が、自動運転や健康管理よりも上位にランクインし、家庭単位で生活の安心を得ることへの関心の高さを伺わせました。
家庭内の機器を一元的に守るMcAfee Secure Home Platform
IoT時代の進展に伴って、これまでも業界ではセキュリティ面の懸念の声がありました。今回の調査結果をみると、消費者もIoTのセキュリティ面に不安を抱いているのは確かだといえるでしょう。
マカフィーは今後のインターネットとユーザーの皆様の安心を守るため、率先してマルチデバイス保護やモバイルのセキュリティなどの対応を進めてきました。そしてIoT社会の到来にあたって、前述したCES 2017、MWC 2017では「McAfee Secure Home Platform」を出展しました。これは従来のように個々のデバイスではなく、ルーター単位でセキュリティを確保した環境を提供できる統合的なプラットフォームです。実際、出展された製品は、今月、米国で発売が開始され、安全なインターネット環境を皆様にご提供できるようになりました。
家庭の中と外をつないでいるルーターのセキュリティを確保することで、家庭内で使用するすべてのIoTデバイスを一括して保護できるのです。例えていえば、インターネットルーターを、ガスや水道の「元栓」のように使用するというイメージです。
実は先述の質問で、回答者から最も高い関心を得た「家庭内の機器を一括して管理するセキュリティ対策」という導入例は、McAfee Secure Home Platformのものでした。IoT時代のニーズにお応えできるものと、マカフィーとしても手応えを感じる調査結果となりました。
レポートではここでご紹介しなかった調査データや、消費者意識と実態のギャップからみたIoTの課題などについての考察なども記載しています。ぜひご覧ください。