超高画質8Kは5分で67GB!映画祭で見た知られざるVRの世界に迫る

文●ジサトラ ハッチ

提供: マウスコンピューター

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映画際でオープニング上映された「ANIMAを撃て!/ANIMA!」のVR特別編を視聴。8Kというかつてない高解像度の映像は、人物の輪郭がはっきりとしており、ふとした演者の表情を確認できるほどスゴイものだった

 7月15~23日に埼玉県川口市にある「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」にて、解像度が8Kと超高精細なVR映画の展示を行なっていると聞き、さっそくその映像作品を視聴しに行ってみた。今回体験したのは、映画祭のオープニング上映を飾るコンテンポラリーダンスをテーマとした作品「ANIMAを撃て!」を題材とした5分ほどの短い映像作品。

「ANIMAを撃て!」は、自分が本当に表現したい踊りを見つけられずにいた果穂が、留学支援のための試験に、コンテンポラリーダンスとドラムのセッションに臨むというもの。監督は堀江貴大氏、出演は服部彩加氏ほか

映画祭では、VRのコーナーもあり、今回の8K VR作品のほか、GearVRで視聴する手軽なものまで、いくつか無料で視聴できた

 8KのVR作品は、マウスコンピューターのクリエイターやエンジニア向けPC「DAIV-DGZ510S1-SH2」とHTCのVRヘッドマウントディスプレー(以下、VRHMD)「VIVE」にて再生・視聴を行なっていた。

会場には、「DAIV-DGZ510S1-SH2」と、さらに高性能なIntel X99チップセットを採用した「DAIV-DGX700H4」が置かれていた

「DAIV-DGZ510S1-SH2」の主なスペック
CPUCore i7 i7-6700(4コア/8スレッド)
チップセットIntel Z270
メモリー32GB(DDR4 PC4-19200、8GB×4)
グラフィックスGeForce GTX 1060
ストレージ512GB SSD(NVMe M.2)、240GB SSD(SATA)、2TB HDD(7200rpm)

メモリー、ストレージをカスタマイズして搭載

 VRHMDを知っている人だと、VIVEの解像度が2160×1200ドットと4Kにも届かないので、8Kの映像を視聴しても、見え方は今までの映像と変わらないと思われる方も多いだろう。

VIVEは、イベントでの装着のしやすさを考えてか、「Vive デラックス オーディオ ストラップ」を取り付けていた

 しかし、VR動画は正面のみならず、上下左右背面も含めた360度が必要となる。そのため、実際に見えている映像は、VRHMDの視野角に依存する動画データの一部を見ていることになる。その見えている範囲の解像度は、たとえ4Kの動画であってもHD画質くらいになってしまうという。

 そのため、VRでより鮮明な映像を見るためには、解像度を上げる必要があり、今後映像、VRHMDともに高解像度のモノが求められている。もちろん、高解像度になるごとにデータはより重くなるため、再生するためのPCもそれ相応の性能が必要になる。VRの処理はゲームは重いが、動画再生なら軽いというのは、現在普及しているVR動画が、現状の実用性にたるデータ容量に見合った解像度であるからというワケだ。

 今回映画祭に展示されていたANIMAを撃て!の8K VR作品は、動画の制作を手掛けた株式会社アルファコードの独自ソフト「VRider」にて再生されていた。そのため、VR動画再生における画一化された必要PCスペックとは言えないので、参考程度と考えておくといいだろう。

 実際に上記環境にて、VIVEで8K動画を視聴したところ、今まで見たどの映像よりも画質が高精細で滑らかだったにも関わらず、カク付きなく視聴することができた。マウスコンピューターは、万が一を考えて「DAIV-DGZ510S1-SH2」よりも高性能なPCを用意していたが、「DAIV-DGZ510S1-SH2」でも十分快適に再生できたとのこと。では、何故今回VR作品の展示を映画祭で行なうようになったのか、8K VRの映像作品づくりは、どう大変だったのかを、各関係者にお聞きしてみた。

埼玉県はVR関連の若手映像クリエイターの支援に着手

 まず、初めに映画祭について、埼玉県 産業労働部 商業・サービス産業支援課の荻野勝也氏(以下、敬称略)に伺った。

埼玉県 産業労働部 商業・サービス産業支援課の荻野勝也氏

編集部 まずは、VRを扱うようになったきっかけを教えてください。

荻野 埼玉県では彩の国ビジュアルプラザ(映像ミュージアムや映像公開ライブラリーなどの施設を含む)を2003年にオープンし、映像関連産業の拠点として若手映像クリエイターの支援などを行なってきました。そのような、2016年はVR元年と呼ばれ、VRやARといった新しい映像技術が注目されるようになった、今年からVR関連事業に取り組むことにしました。

編集部 今後はVRやARを使って、どのような取り組みを行なう予定ですか?

荻野 埼玉県の支援を受け、育成されたクリエイターの方々がVRやARのコンテンツをつくるとともに埼玉県内のいろいろな事業会社さんが、VR、ARの映像を使い、自社の商品や製品などのPRに活用していただきたい。そうすることで、埼玉県全体の産業の振興につなげていきたいと考えています。

編集部 映画祭でVRを扱われたのは、その一環ということでしょうか。

荻野 そうですね、最初の企画として、VR作品をまずひとつ作り、海外のVR作品も含めて展示し、VRとはどういったものなのかを知ってもらい、自分たちもVR映像を使ってみたいと思っていただきたい、という考えから実施しました。

 まずは、VRの認知度を広げたいというところから、企画された映画祭のVR展示だが、その目玉として展示された8K VRの制作については、株式会社アルファコードの方からお話を伺った。

高解像度のVR動画の再生には
安定動作が可能なPCが必要

株式会社アルファコード 代表取締役社長 CEO 兼 CTO VR/MR コンテンツプロデューサー 水野拓宏氏(右)、同社 VE 部 プランナー 林みのり氏(左)。以下、敬称略

編集部 今回の8K VR映像は、どういったカメラを使って撮影し、そのカメラで撮影したメリットなどがあったら教えてください。

水野 今回は定点でじっくり見せる映像を撮影するために、GoPro Omniというカメラを使用しました。もっと大きなカメラを組み合わせたダイナミックレンジが広いカメラなどもあるのですが、GoPro Omniはそういったカメラよりもフレーム同期がしっかり行なわれるのです。作中ではコンテンポラリーダンスという結構動きの速いダンスが行なわれていますが、そうした速い動きを撮影する際、フレーム同期がしっかりしていないと、動きがズレてスティッチング(映像の張り合わせ)がし辛くなってしまうんです。

撮影に使われたGoPro Omni

編集部 制作された映像は8Kと高解像度ですが、そうした超高解像度のVR映像を作る際に苦労したポイントを教えてください。

 そうですね、やはり8Kの映像ともなると、とてもデータが重いので、ひとフレーム動かすだけでも大変でした。編集に使用したPCは、CPUが1年前に最も性能が高かったCore i7で、グラフィックスがGeForce GTX 1080、ストレージはSanDiskのExtreme Proを6発、RAID 0にして使っていました。

編集部 データの重い動画の編集を行なう際、PCのスペックとしてネックになるのは、どういった部分になるのでしょうか。

水野 映像の切り貼りだけだったら、ストレージの読み書きの問題だけのような気もしますが、今回の映像はAdobeのPremiere Proで、8トラックあったのですが、レイヤー数が多くなると、CPUやGPUの性能も高いものが求められと思います。Premiere Proの場合、プラグインによってもCPU、GPUどちらを使うかが結構変わってくるので、どちらか一方をないがしろにしてよいということにはなりません、どちらの性能も高いことが望ましいですね。VRの場合はなおさらでしょう。

同社の「VRider」は、実写に最適化されており、機能の一部としてアプリ内で自由にバーチャルスピーカーを設置し、映像にすでに組み込まれた立体音響とは別に映像と同期しながら別途流すことなどが可能とのこと。また、映像再生前に視線に追従するタイトルを表示でき、これにより体験者がVRHMDを被った際に、すぐに映像が出力されているかどうかの確認も行なえるという

編集部 ちなみに映像はH.264やH.265など圧縮規格によって見え方も変わってくるかと思うのですが、今回の映像はどの圧縮規格を採用されているのですか?

水野 我々の場合、そういった時空間系の圧縮ではなく、ほぼ可逆圧縮のフォーマットになっているんです。そのため、ビットレートを高く取って、CPU負荷は下げるといった圧縮形式になっています。H.264は仕様上8Kに対応していないので、H.265が普及してくると、さらに要求スペックは変わってくるかもしれませんね。H.265では我々もまだVRの映像制作を行なったことがないので、いつか使ってみたいですが、時空間系の圧縮は、ディテールを潰して、大局的な見た目を確保するので、どうしても大きい映像のうちの一部を拡大して視聴するVRには、あまり向かない気もしますね。ただ、品質が上がってきて最適化が行なわれてくれば、H.265を使ってインターネット配信なども行なってみたいですね。

編集部 今の方式では、やはりデータが重くてダメなのですか?

 今回の5分の映像だけでも容量が約67GBにもなるので、インターネットに配信することはできませんね。

編集部 それはスゴイ容量ですね。ではたとえば、スマホ用のVRヘッドセットや、PlayStation VRで8Kの映像を再生することはできたりするのですか?

水野 それはまだ研究中で、現状はまだ4K出力のみですね。ただ、動作制作される方って結構4K対応のカメラで撮影するのですが、4Kのカメラで撮った4Kの映像というのと、8Kで撮影して4Kにダウンコンバートした映像の方が綺麗に見えるので、8Kで撮影しておけば現状のHMDで限りなくネイティブな視聴が行なえます。一方、たとえスマホ用のVRヘッドセットで視聴する映像だとしても、4Kのカメラで撮影するよりも、8Kの映像をダウンコンバートした方が、より良い映像になります。特にVRの動画は、映像の一部を拡大して表示するので、4Kで撮影した映像だと結構細部がつぶれてしまうんですよね。

編集部 つまり、現状VRの動画を最も綺麗に見るには、Oculus RiftかVIVEを使って、PCに接続したVRHMDで見るのがいいんですね。では今回、VR動画の再生にはマウスコンピューターさんのDAIVをお使いになられていますが、そのメリットや、8K VR動作を再生するにあたってよかった点についても教えて頂けますか?

 8Kの動画は、やはり重いのですが今回お借りしたPCは、基本スペックも申し分ないですが、ストレージがインテル製の高速なSSDが搭載されていて、特に映像がカク付くこともなく安定して再生ができたのがよかったです。

水野 イベント期間だとフルパワーで稼働しっ放しになりますし、こういったイベントになるとVR映像を見るのが、我々が作ったものが初めてという方もいらっしゃるので、やはり安定して動作できるというのは結構重要だと思いましたね。あと、マウスコンピューターさんのDAIVは、PCケースにキャスター(DAIVのオプション)が付いているんですが、あれがこういったイベントの持ち運びを行なう際は便利でしたね。

編集部 なるほど。VRHMDだと今回VIVEを採用されていますが、VIVEを使った理由は何かあるのでしょうか?

水野 やはり装着のしやすさでしょうか。対抗となるOculus Riftにも良い面はたくさんあるのですが、我々はいろんなイベントで老若男女問わずVRコンテンツを見てもらっているのですが、眼鏡を付けたまま装着してもらったりとか、調整の素早さといった要件を考えると、イベントで使う場合は、VIVEの方が一日の長があるかと。

 高画質なVR映像の制作は、まだまだ発展途上なこともあるが、イベントで使われるPCには、高いスペックと、長時間の稼働に耐えうる冷却性能と耐久性が必要とのこと。そうなってくると、高性能かつ冷却効率も高く、メンテナンス性にも優れるDAIVシリーズはもってこいのようだ。

演出によりユーザーの視点を誘導

 最後に今回のVR作品のコンセプトについて、映像の制作を企画された株式会社デジタルSKIPステーション 営業推進部 プロデューサーの廣瀬敏氏(以下、敬称略)に話を伺った。

株式会社デジタルSKIPステーション 営業推進部 プロデューサー 廣瀬敏氏

編集部 今回展示された「ANIMAを撃て!」の8K VR作品のコンセプトは何かを教えてください。

廣瀬 「ANIMAを撃て!」は、最初に話が上がったように、埼玉県ではVR関連の人材育成のプロジェクトを立ち上げています。それを踏まえて、そうした人材育成の場で、どういったカット割りをすると、どう表現できるのかなど、レクチャーに利用できればと考えています。

編集部 作品のシーンの切り替えなど、コダワられたポイントを教えてください。

廣瀬 映像は、3つのカットに分かれています。従来の一般的な映像作品は、カットをつなげることによって、強制的に視覚を誘導できましたが、VRの場合は、360度見回せるので、ユーザーが視点を選択できます。そこで、最初のカットでは、回転したり、前後移動したりといった演出によってユーザーの視点を誘導するようにしています。

編集部 確かに、ダンスをしながら動き回っているのを目で追ってしまいましたね。

8K VR作品に搭乗する演者はひとり。最初のカットでは、やや離れた位置でダンスを踊り、左右の移動に合わせて視聴者の視線を誘導する演出が行なわれている。露出の関係か、やや白飛びしているような映像になっていたが、今まで見てきたどのVR動画よりもディテールが細かく、人物の輪郭は際立っていた

廣瀬 次に2つ目のシーンで、背景に風景シーンを合成しているのですが、突然違う空間に移動した際に、ユーザーがどう反応するかを見たかったというのと、1カット目よりも開放感を得られることにより、どういった感じを受けるのかというのをテーマに演出しています。

編集部 2つ目のカットでは、昼から夜へと風景が変わっていきましたね。

2つ目のシーンでは、背景映像が風景に変化。足元は鏡のように空や演者が映し込まれており、奥行のある広い景色が開放感を演出。幻想的で、優美な印象を強く与えてくれた

廣瀬 そうした、時間軸の違いも演出し、どう反応するのかというのも考えてつくってもらいました。そして、そして、最後にスタジオに戻ってきているのですが、今度はVRの特徴である臨場感を強調するため、目の前に演者が移動し、その実在感をどう感じるか、といった演出を行なっています。

ラストのシーンでは、再びスタジオにシフト。演者が近づいてきて、高い実在感を得られる。従来の4Kまでの動画では、つぶれガチだったちらりと見える演者の表情を見ることができ、それが8Kという高解像度の強みだと感じた

 今回の映像作品では、3カットをつなげるところにいろんな仕掛けを行なっていたが、撮影を別々で行なっていたため、映像の切り替わった際に自然につながるスティッチングが大変だったとのこと。また、現状のVRHMDでは、いかに映像を高解像度につくってもレンズの格子が気になる、カメラも暗いシーンだと自動露出で、どうしても画質が荒くなるなど、いろいろ課題もあるようだ。

 このように、8K VRといった新たな試みなど、VRの映像分野も確実に進化を遂げようとしている。それに応じて、必要なPCスペック、ソフトウェアの最適化も求められているようだ。今後、そうした問題がクリアーになり、どんどんクオリティーの高い、驚きを与えてくれるVR映像作品が楽しめるようになることに期待したい。

(提供:マウスコンピューター)