JAWS-UG神戸はいかにしてAlexaの聖地になったのか?
彼らが手がけるJAWS-UG神戸は、無類の新しもの好きで、ビール好き。Amazon Echo上陸前にもかかわらず、昨年からは音声認識サービスであるAlexaの勉強会を主導している。神戸のAlexa好きは筋金入りで、先日は韓国のユーザーグループまで巻き込んだ15支部と共催でAlexa Daysまで開催してしまった。「声でなんでもできちゃう楽しさをみんなに知ってもらいたいというのが根本にありますね」とはAlexa Daysの仕掛け人、Itoさんの弁だ。
Aelxaにフォーカスしたのは、1年前、小賀さんからItoさん、たけしたさん、Andoさんなどの若手がJAWS-UG神戸の運営を引き継いでもらったときがきっかけ。「なにをやりたいか聞いたら、彼らはLambdaをやりたいって言ったんです。でも、Lambdaは単なるファンクションなので、使うだけだと目的がない。じゃあ、Lambdaを使えて、新しくて、ドキドキするものなんだと考えたら、Alexaがあった。じゃあ、Lambdaで『Echoもどき』を作ろうという話になった」(小賀さん)とのことで、Alexa Voice ServiceでAmazon Echoを作ってしまおうというのがもともとの動機だ。
デジタルキューブのメンバーも、WordPressとAlexaというどう考えても交わらない2つの技術をどうガッチャンコするか真剣に考えた。そこから海外展示するデジタルキューブのブースの出し物として、WordPressやAMIMOTO AMIについて音声で答えてくれる「Alexa AMIMOTO Ninja」のAlexa Skillsの開発が始まった。開発の苦労話は、JAWS-UG神戸の勉強会でも書いたが、こういうノウハウがまさにデジタルキューブと神戸のコミュニティをつなぐエコシステムになっている。
こういったサービスやモノを作るという目的指向の勉強会は、最近の潮流だ。「AWSのサービスも今はサーバーから、ファンクションになっているので、EC2のハンズオンみたいなスタイルから、それらのファンクションをいかに組み合わせて、どんなものを作るのかというスタイルになっていくと思う」(小賀さん)。
新しい技術と人が交わる場所「神戸」のコンテンツ力
最近始めたのが、元AWSJの小島英揮さんが撮れ高をアピールしているInstaVRとStripe。取材日には神戸で初めてのStripeの勉強会が開催され、会場となったコワーキングスペースは40人弱の参加者でいっぱいになった。小賀さんといっしょにStripeの勉強会を仕掛けた小島さんは、「いわば決済の民主化です。今までそれができなかったから、いろいろな人にどんどん中間搾取されてしまった。でも、誰でも自分のスキルをマネタイズできる時代が来ているんですよね」とアピールする。
そして、今回のイベントのためにJAWS-UG神戸のメンバーが用意したのが、InstaVRなどで利用できるVR・パノラマ画像を販売できる「360images.io」だ。サイトはもちろんAMIMOTO AMIをベースに作り、決済にStripe、画像認識にAWS Rekognitionなど最新技術を盛り込んだ。今後は多対多での決済を実現するStripeのConnectのサービスを活用し、マーケットプレイスを実現するという。
また、勉強会のおやつやビールの決済もQRコードを使ったStripeをまず体験してもらう。「今までコップに500円玉を入れてもらっていたんですけど、Stripeのチェックアウトの機能を使うコードを2~3行書いて、Lambda、API Gatewayを組み合わせて、1日で投げ銭システムができた。StripeのmeetupなのにチャージにStripe使わないってのはどうよ!?って。実際、楽しそうにお金落としてくれたし(笑)。こういうことを体験しながら、勉強会を楽しんでもらいたい」(小賀さん)。
ハンズオンも、セッションも、即物的なモノができるまでが速い。小島さんも、「(プログラミング学習の1番最初にやる)Hello Worldの終わりですよね。もともとHello World自体が難しかったからあの課程が必要だったけど、もはやそれほど大変ではない。これからのHello Worldはサービスを作ることじゃないですかね。もう勉強は終わり。作る時代にやっとたどり着いたんじゃないですかね」とコメント。Andoさんも「クラウドサービスのような標準的なものができたので、みんな同じ環境で作れる。無料枠もあるし、従量制なのでフリーランスや小規模な事業主でもサービス作れる」と応じる。
外に向いた港町の気質なのだろうか? 新しい技術を試し、いち早く試していく神戸のパワーがすごい。そんなパワーの交わる場所としてデジタルキューブがあり、彼らが作るコミュニティのコンテンツがある。「大阪ほど大きくないくらいで、人数的にちょうどいいんですよ。でも少ない人数でも、コミュニティの発信力があれば、先日のAlexa Daysのように多くの人たちを巻き込める」と小賀さんは語る。リモートワーク、グローバル、コミュニティフォーカスなど、デジタルキューブとJAWS-UG神戸の「当たり前」に日本企業が追いつくのは何年先になるのだろうか?