「システムが新しくなる」ではなく「仕事のやり方が新しくなる」
フォーマットが異なるExcel乱造問題をkintoneで解決したニシム電子工業
2017年06月13日 07時00分更新
九州電力のグループ会社で、電力設備の設置工事や保守、監視を主な業務とするニシム電子工業。九州を中心に展開する18の拠点がそれぞれ個別のフォーマットで案件管理を行なっていた。本社にはフォーマットがバラバラなExcelファイルが年間1万も寄せられ、案件整理や社内での案件情報共有もままならなかったという。それをどのように解決したのか、同社の原田 陽介氏がkintone hive Fukuokaで語った。
本社で実際に業務に携わるスタッフが業務改善ワーキンググループを発足
ニシム電子工業の拠点は九州を中心に18ヵ所。それぞれ、自分たちがつかいやすいと思うフォーマットのExcelファイルで案件や顧客の管理を行なっていたため、社内、特に拠点間や部署間での案件情報共有ができていたなかったという。
「同じ顧客に別の拠点から営業をかけてしまったり、別の部署がまったく違うフォーマットで見積もりを提出したりということが実際に起きていました。これらを解決するために、本社では営業業務改善ワーキンググループが発足しました」(原田氏)
ワーキンググループは、本社で営業情報の取りまとめなどを行なう現場の女性社員を中心に発足した。そこに原田氏が加わったのは、kintoneという現場で使えるITツールを知っていたからだ。ワーキンググループで洗い出された課題は大きく2つ。Excelでの営業案件管理に限界がきていることと、その結果見積もりや案件情報の共有が進まないことだった。
「課題を洗い出したところで、改善目的を案件情報共有、提出物チェック方法の統一、帳票作成と定めました。そのために使ったツールが、kintoneです」(原田氏)
それまでにもニシム電子工業では、情報共有にはサイボウズ ガルーンを、販売管理には委託開発した独自システムを使っていた。既存の販売管理システムに必要な機能を追加するという選択肢もなかった訳ではないが、独自システムの改修には多額のコストが必要だ。それに比べてkintoneなら低コストで導入できるうえに、Excelからの置き換えとして抵抗感なく使ってもらえる。
導入に際しては、業務改善のための一環としてのシステム導入であることを強調
業務改善ワーキンググループで定めた目的ごとに、kintoneをどのように使って解決していったのか、具体的な画面も事例セッションでは紹介された。1つ目の目的である案件情報共有においては、これまで各拠点でバラバラだった情報を全拠点で統一。同じ項目名、画面表示で各拠点から営業案件を確認できるようになった。
「進捗確認のチェック方法も、統一しました。締め切りが近づいた項目、締め切り当日の項目、締め切りを過ぎた項目を色分けして表示し、一目でわかるように工夫しました。JavaScriptを使ってカスタマイズしたのですが、デベロッパーズコミュニティで配布されているJavaScriptが参考になりました」(原田氏)
Excelに代わる帳票作成アプリでは、各拠点で使われていたExcelをワーキンググループで精査し、47列あったシートから本当に必要な項目を30項目にまで絞り込んだ。それでも一画面で見るには情報量が多すぎるため、件名一覧11項目と進捗管理19項目との2画面に分けられた。
「これらをPDFで出力できるようにしようと思いましたが、拠点ごとに個別の項目を盛り込みたいという根強い要望があったため、最終的な出力はExcelにしました。ここでは日本オプロのExcel出力プラグインを使っています。これにより、項目を統一しつつ従来Excelで吸収していた各拠点ごとの業務にも対応できる仕組みになりました」(原田氏)
しかし、いい仕組みさえ用意すれば現場が喜んで使ってくれるという、簡単な話ではない。ニシム電子工業においても、事前説明会の時点でやり方を変えたくない、面倒くさそうという反対意見が上がったとのこと。それを乗り越えたのは、「身長190センチのカッコイイ常務の鶴の一声」だったそうだ。とはいえ、鶴の一声は最後のひと押しに過ぎなかったのではないだろうか。トップダウンで押し付けても、使いにくいシステムでは現場に浸透するはずがないからだ。
「カッコイイ常務の鶴の一声で展開しましたが、使ってもらい、慣れれば便利なことがわかってもらえると信じていました。実際に、苦情や問い合わせが寄せられたのは導入直後だけでした」(原田氏)
kintoneを全拠点に展開する際の表現にも、ひと工夫こらされていた。「システムが新しくなる」と言えば、現場からは反発の声があがるものだ。しかし原田氏らが作り上げたシステムは現場の視点で考えたら業務改善を成し遂げるためのものであり、「仕事のやり方を新しくして、業務を効率化するためのkintone導入」であることを強調したという。業務改善ワーキンググループからの一連の活動により、現場の力で改善を継続できるという自信を生み、現場スタッフの意識改革と成長という副産物も生み出した。
まだ残る課題、しかしそれは改善の余地であり成長の可能性
当初の目的を達して、業務効率化を果たしたニシム電子工業だが、「まだ課題は残っている」と原田氏は言う。
「kintonenにはコメント機能などコミュニケーション機能が充実しているのですが、うまく使えていません。また、今は私が管理していますが、私自身がこれらのアプリを使う頻度はあまり高くありません。kintoneは利用者自身がアプリを改善できる仕組みなので、利用者=管理者であることが望ましいと思っています」(原田氏)
こうした課題を解決していくために原田さんは、現場利用者を少しずつ管理に巻き込んでいくことを考えている。日々の業務で得た気づきをkintoneアプリに反映していくことで、継続的な改善をより効果的なものにできると考えているからだ。
「課題が残っていることはわかっていますが、それを悪いことだとは思っていません。課題が残っているということは、もっとよくなる余地がある、成長する可能性があるということでもあるからです。そして、成長していくために、皆さんの事例をもっとたくさん教えて欲しいと思っています。オラに力を分けてくれ!」(原田氏)
kintonenのユーザーコミュニティにも期待を込めた、原田氏のセッションだった。
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