世の中にはたまに思いがけず欲しくなるアイテムというものがあります。自分にとっては、それが去年(2016年)に「MWC 2016」で見たコンセプトモデルの「Xperia Projector」であり、待たされること1年、ついに製品化された「Xperia Touch」です。
「Xperia Touch」というのは、見た目はプロジェクターのようなもので、その映し出したスクリーンにそのまま触れたり、声で操作することで、ひとりはもちろん、家族や友人と一緒に楽しみながらコミュニケーションをとれるXperiaスマートプロダクトの最新モデルです。
コンセプトに惚れて、これは家にあったらかなりおもしろそう! と思いながらもお値段約15万円。さすがに、プロジェクターとスマホが合体したというだけあってなかなかにいい値段です。
価格のハードルを超えてまでも欲しいと思えるかどうか、悩ましいところですが、そのガジェットとしてのおもしろさをまずはじっくりと味わってみたいと思います。
「映し出された映像にタッチできる」
単純だけどいままでになかった体験
すでにソニーからは、すぐそばに映像を映し出せるポータブル超短焦点プロジェクター 「LSPX-P1」というものを発売されています。
確かに 「LSPX-P1」を使いながら映し出された画面に触れて操作できればもっと楽しいだろうに! と思っていたこともあり、まさにそれが具現化されたものが「Xperia Touch」というわけです。
しかも、ただ触って操作できるというだけではなく、Androidを内蔵しているので、自分の好きなアプリをインストールして、さまざまな機能を追加できるという点が最大の魅力です。
「Xperia Touch」の本体は四角い箱です。サイズは約69×134×143mm、重さが約932gと非常にコンパクト。従来のプロジェクターのように電源を確保して設置してこともできれば、約1200mAhのリチウムバッテリーを内蔵しているので、大きなタブレットのような感覚で持ち運んで使うこともできます。
電源を入れると、プロジェクター部分から映像がババーンと投射されます。技術的には、ソニーの独自液晶ディスプレイデバイス「SXRD(Silicon X-tal Reflective Display)」と超短焦点レンズが備わっており、床や壁にピッタリくっついた状態では約23型のスクリーンが目の前に現れます。
プロジェクターの性能は、画面解像度が1366×768、明るさは100ルーメン、電動のフォーカス調整(オートフォーカス) 付きです。
100ルーメンというと、さすがに日中の太陽光が差し込むような明るい部屋では見えづらさもあるものの、一般的な家庭の照明であれば十分に見えるレベルです。意図的に少し暗めな環境をつくってあげれば、随分とクッキリハッキリと見えます。
そして、映し出されている映像はAndroidのホーム画面と何らかわりなく、その画面に触れて操作できます。しかも、タッチの感度は想像しているよりも反応がとてもよく、ストレスなく操作できます。
投射されている場所はあくまでも床や机。それをわかっていても、目の前にあるスクリーンが自分のタッチ操作で思い通りに動くということがとても新鮮です。
昔、小さい頃にアニメやSF映画にあったような、あの世界観が手元にあるようで相当にテンションがあがります。
Android 7.0を搭載
だけど並みのAndroid端末とは全然違う!
メニューをみてもわかるとおり、できることはAndroid端末そのもの。「Xperia Touch」には、Android 7.0がそのまま備わっているので、巨大なAndroid端末を使っている気分と言ったらいいでしょうか。
アプリをインストールするも、設定を変更するも、これらもすべていつものAndroidスマホを使っている感覚と何ら変わりありません。ただし、プロジェクターである分、感動具合は別物です。
「なんだそんなことか」と思う人もいるかもしれません。ところが、これがアプリを使ってみると、「スマホと一緒」程度では済まないことがわかります。
たとえば、飛んでくるフルーツを指でフリックして切ってプレイするゲームアプリ「Fruit Ninja」を遊んでみても、目の前にある大きな画面に飛び交うフルーツと爆弾、触れちゃいけない爆弾をよけながらフルーツをスパっと切り落とす感覚がなんと楽しいこと。
いつも片手に収まるスマホの小さな画面でチョイチョイと操作するのとは違い、本当にフルーツをぶった切る振り抜きった時の気持ちよさ! 日頃のうっぷんをはらすごとく、コノ! コノ! コノーー!!! とムキになってフルーツ切りおとしてストレス発散できます。
どうして投射された画面に指で触れて動くのか? というと、「Xperia Touch」本体から赤外線とカメラを組み合わせて毎秒60フレームのリアルタイム検出をして指でタッチした操作を認識するという仕組み。
この認識レスポンスのよさもさることながら、最大10点のマルチタッチの認識もできるのですが、このスゴさは音楽打楽器アプリで実感します。
ピアノアプリは、投射されている大きさ的に、本物のサイズ感と似ていて、指でダララララランと流れるように鍵盤を流して弾いたり、同時に鍵盤をたたいて和音を出したり。当然打鍵感があるわけではありませんが、ピアノを弾いているような感覚に近く楽しさ倍増です。
ドラムアプリも同じく、スチャスチャドコドンドコドン♪と、ノリノリで叩いている自分がいます。実際は机の上を……。いやいや、音ゲーもパズルゲームも楽しさがスマホと別次元の楽しさがあります。
多彩な各種ワイヤレスやセンサーを搭載
microSDカードトレイには気になる箇所が
Android端末としてのスペックはCPUがSnapdragon 650、メモリーが3GBで、ストレージが32GB。Snapdragon 650は、ミドルレンジ向けのプロセッサーとなりますが、極度に重いアプリでなければ問題なく動きます。実際にアプリをいじくり回してみたところでもストレスはまずありませんでした。
通信系はBluetooth 4.2やIEEE 802.11a/b/g/n/ac、NFCが利用可能。約1300万画素のカメラや2WAYスピーカーも搭載しています。
センサー類は、マイク、加速度、地磁気、GPS、ジャイロ、照度、気圧、気温、湿度、人感までを備えているので、もう立派なAndroid端末です。
底面には、USB Type-C(PD対応)を備えており、ここから給電・データの転送も可能です。このUSBポートは15Vの電圧に対応するようになっています。
後述しますが、入力用のmicroHDMI端子も備えているので、Androidとしてだけではなく、別の再生機器からの映像を出せるという、一般的なプロジェクターのような使い方もできるのも魅力のひとつです。
背面の上部分に見えるのが、トレイ式のmicroSDカードスロットです。形状としては「Xperia XZ」などのものとよく似ています。ここに載せられる外部メモリはmicroSDで、最大256GBのmicroSDXCまで対応しています。
ものすごく気になったところが、トレイにあるnanoSIMがピッタリ載せられる部分です。もちろん切り抜かれておらずダミー的な切り欠きとも言えるのですが、万が一にも将来的にSIMが載せられたりするモデルがあると、外に持ち出して使える「Xperia Touch」なんてのもありえそうです。プロジェクターを外でという時点で相当無理がありますが……。