ゲームをプレイするだけなら低価格なPCでもいいが、ラグや処理落ちなどで思いどおりに操作できずミスが増えれば、せっかくのゲームが楽しめなくなってしまう。快適にプレイしたいのであれば、それなりに高速なCPUやグラボが必要だ。
ゲーミングPCを買うときの悩みは、どのくらいの性能が必要なのかがわかりにくいこと。もちろん、最速となるものを揃えれば間違いなく快適に動作するだろうが、30万円を超えるようなPCをホイホイと買える人はそうそういない。そこで、まずはプレーしたいタイトルの推奨スペックをチェックし、そのスペックを上回る構成で購入するというのがセオリーとなる。
たとえば「オーバーウォッチ」を見てみると、公式の推奨スペックは下記のようになっている。
「必要動作環境」は、本当に動作させてなんとかプレーできるというレベルなので無視するとして、見るべきは「推奨動作環境」の方だ。
まずはCPUを見てみよう。世代の更新による性能向上はあるとはいえ、「Intel Core i5」や「Phenom II X3」はミドルクラスのCPU。新しいゲーミングPCを選ぶときも、ミドルクラス以上のCPUを選んでおきたいところだ。
また、「GeForce GTX 660」は4年ほど前の製品とはいえ、当時ミドルクラス〜ミドルハイクラスに相当する性能をもっていた。この点を考慮すれば、快適な動作にはミドルクラス以上のグラボが妥当だといえるだろう。
これらの条件を満たしているゲーミングPCのひとつが、グラボにミドルクラスの「GeForce GTX 1060」を採用したサイコムの「G-Master Spear X370A」だ。このPCをカスタマイズし、CPUにAMDの「Ryzen 5 1600X」、マザーボードにASRockの「Fatal1ty AB350 Gaming K4」、メモリーを16GBへと変更したモデルを使って、本当にゲームが快適に動くのかをチェックしてみた。
試用機の主なスペック
機種名
G-Master Spear X370A
CPU
Ryzen 5 1600X(3.6GHz)
グラフィックス
GeForce GTX 1060 6GB(外部出力はDVI端子、HDMI端子、DisplayPort)
チップセット
B350チップセット
メモリー
16GB
ストレージ
525GB SSD
ケース
CoolerMaster CM 690 III
内蔵ドライブ
ASUS DRW-24D5MT
I/Oポート
USB 3.0端子、USB 2.0端子、ヘッドフォン端子
電源
CoolerMaster製 V750 Semi-Modular(750W 80PLUS GOLD認証)
OS
Windows 10 Home
直販価格
16万6360円(税込、5月26日現在)
ゲーミング性能の高さは折り紙つき! 実ゲームとベンチマークで性能をチェック
まずはスペックの参考にしたオーバーウォッチで試してみよう。オーバーウォッチは個性豊かなヒーローを操作し、チームで争う対戦アクションシューティング。FPSファンからの支持が高いほか、eスポーツリーグの競技タイトルにもなっているゲームだ。
ステージはKING’S ROWを選び、参加者すべてをAIにして観戦モードへ。観戦するプレーヤーを切り替えながら、対戦開始から2分間のフレームレートをFrapsでチェックした。「グラフィック品質」を「低」に変更し、フルHDの解像度でチェックしてみたところ、ほとんどのシーンで200fpsを超え、低くても170fps以上という結果となった。一般的に60fps以上あれば処理落ちを気にすることなくプレーできるので、「低」設定ではずいぶんと余裕がある。
次にこの設定を最高画質となる「エピック」に変更。同じようにフルHDの解像度でチェックしてみたところ、最大で138fps、最小でも77fpsと十分な速度が出ており、やはり60fpsを大きく超えていた。つまり、G-Master Spear X370Aならオーバーウォッチを最高画質で楽しめるというわけだ。
処理の重たいゲームではどうなるのか気になったので、今度は「For Honor」でチェックしてみた。For Honorは侍、騎士、ヴァイキングが争うファンタジーアクションゲーム。ベンチマークモードがあるので、この機能を使って性能をチェックした。
オーバーウォッチで十分な性能があることはわかったので、今度は最初から高めの設定でチャレンジ。グラフィックの設定で「品質プリセット」を推奨となっている「超高」のまま試してみた結果が次のとおりだ。なお、プリセットの中ではこれが最高画質となる。
ギリギリではあるものの最小でも60fpsを超え、最大は108.89fps。平均で79fpsあるため、性能の低さで悩むことなく快適にプレーできるのは確実だろう。さらに重たい設定はできないかと「品質プリセット」で「カスタム」を選び、「スーパーサンプリングアンチエイリアス」をオンにした場合の結果は、次のようになった。
この設定では一気に負荷が高くなり、最大で31.06fps、最小は16.81fpsという目も当てられない結果となった。とはいえ、実質的な最高画質となる「超高」ではしっかりと60fpsを超えているため、For Honorもストレスなく高画質で楽しめるといえるだろう。
ちなみに、CPUに「Ryzen 7 1700」、グラフィックに「GeForce GTX 1080Ti」を搭載したPCの場合は、最大で74.73fps、最小で43.12fpsだった。さすがにここまで重たい設定では、最強クラスのゲーミングPCでも快適なプレーは厳しいようだ。
グラフィック性能を比較するベンチマークとして「3DMark」、ゲームベンチの定番となるファイナルファンタジーベンチマークの最新版、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」も試してみよう。それぞれの結果は次のようになった。
3DMarkはFire Strikeのスコアーで10000超えを達成。数年前ならハイエンド構成でようやく到達したスコアーを、ミドルクラスの構成で叩き出せているのがうれしい。また、ファイナルファンタジーベンチは新バージョンとなるため比較対象が少ないが、以前の「蒼天のイシュガルド」よりもスコアーは1〜2割ほど低くなる印象だ。フルHDの「最高品質」設定で10000を超えており、結果は「非常に快適」。不満なく楽しめるのは間違いない。
気になるVRの性能はどのくらいか、ベンチマークでチェックしてみた
VRがまともに楽しめるのかどうかは、実際に機器を使ってみるのが確実だ。しかしVR環境を一式揃えるとなると10万円前後の出費となるだけに、買ってみたものの使えなかったといって諦められるようなものではない。そこで「VRMark」を使い、VR環境を整える前に手元のPCで十分な性能があるかをチェックしてみよう。VR用の性能を測れるとはいえ、VR対応のHMDなど機器が必要ないというのがメリットだ。
早速G-Master Spear X370AでVRMarkを動かしてみたところ、「Orange Room」でのスコアーは6988という結果になった。VRを楽しめる性能の目安はスコアーが5000以上となっているので、PCの性能としては十分だということがわかる。
ただし、実際に動くかどうかはVR対応のHMDを接続してみなければわからない。USBや機器との相性などでうまく動作しない場合もあるので、最終的には実機で試してみるしかないだろう。