秋葉原といえば、今や「エンタメの街」といっても過言ではないでしょう。そんなこの街で、またひと際面白い店が登場したのでご紹介します。
その名も、「小料理屋 やきもち」。場所は、御徒町駅と秋葉原駅の中ほど。秋葉原駅からは、昭和通りの「中華栄記」の横道を入ってしばらく進んでファミリーマートがある角を御徒町方面に曲ります。そのまま少し歩くと店の看板が見えるはず。
よくある小料理屋らしいたたずまいの小さな店舗ですが、大きな笑いに包まれる日があります。週に一度、落語家さんを招いての公演が開かれるんです。高座が目と鼻の先という位置で、お酒や料理を味わいながら落語が聞けるとは、とってもオツな気分。
なんでも、女将はもともと日本テレビ系のテレビ番組「笑点」のディレクターをされていたのだとか。まったくの別ジャンルへの転身ぶりに驚きです。
公演のある火曜日は、ショーチャージ込みのコース料理+ワンドリンク(4800円)が基本です。
落語目当てに行くなら、お店のウェブサイトから予約を入れるのがオススメ。火曜日、ほかの曜日とメニューから異なります。基本は、ショーチャージ、コース料理、ワンドリンクがセットで4800円。さらに、1枚500円のチケット制で追加のドリンクやおつまみを注文できます。
取材日は、鈴々舎馬るこ師匠の公演。
取材日は、今年3月に真打ちに昇進したばかりの鈴々舎馬るこ(れいれいしゃ まるこ)師匠が登壇。「牛ほめ」「時そば」の2題でたっぷり1時間の好演でした。
世間話から始まり、いつ落語に入ったのかわからない軽妙な導入に出だしから引き込まれました。落語はそれほど詳しくないので楽しめるか不安だったのですが、馬るこ師匠の落語は現代的なアレンジがされていてわかりやすく、すぐに笑いの波に飲まれました。これだけたっぷり笑えてお料理がついて4800円です。
店舗では、ちょっとした遊びとして、席にあるポチ袋に追加オーダー用のおはじきを入れて落語家さんに渡す「ご祝儀ごっこ」が用意されています。せっかくなので高座から降りた師匠にお渡しして、コース料理の続きをいただきながら一緒に乾杯させてもらいました。落語家さんと話せる機会はなかなかないのでうれしい時間でした。
公演はたいてい20時が開演時間。ゆっくり食べるなら19時ごろに店に入ると、ちょうどシメを前に落語が始まってちょうどいいように感じました。
それでは本日のコース料理をご紹介します。
前菜:3種の煮しめ
前菜は、大豆と根菜とこぶの煮しめ、ひじきとなまりの煮しめ、切り干し大根の煮しめの3種。どれも家庭的で優しい素朴な味でした。
豚軟骨おでん
2品目は豚軟骨おでん。提供されてすぐ、ダシの香りのよさに気づきます。どのネタもよく味が染みていて素直においしい。個人的には、手作り感ある歯応えのいい練り物が特に好みでした。肝心の豚軟骨は脂身はほどほどですが、よく煮込まれていて柔らか。軟骨のコリコリ感が良いアクセントとなっていて、この1皿の主役であることは間違いないようです。
カワハギ唐揚げ&ごぼうチップ
続いて、カワハギの唐揚げとごぼうチップ。素朴なメニューですが、丸々一尾の唐揚げはひさびさに見ました。こちらも香りが最高。かぶりついて食べてお皿には何も残りません。
お赤飯&豆腐と三つ葉のお吸い物
最後は、馬るこ師匠の真打ち昇進を祝っての特別メニュー。めでたいお赤飯と、豆腐と三つ葉のお吸い物です。実は公演が終わってすぐ提供いただいたメニューなんですが、落語による感動の余韻のままに箸を伸ばしてしまって、写真をすっかり撮り忘れてしまいました。シメにふさわしい、ほっとする優しい味でした。お赤飯は満腹感があっていいですね。
やきもち入りぜんざい(500円)
店名と同じやきもちが入ったデザートを発見。表面だけ固めに焼かれた焼き餅で中は柔らかなまま。あんこは、しつこくないスッキリとした甘さで男性にも喜ばれそうです。
最後は取材日に飲んだドリンクを一挙にご紹介。
瓶ビール
伊豆産無農薬レモンのレモンサワー(500円)
玉柏 純米(グラス一杯500円)
百十郎 赤面純米無濾過生原酒(グラス一杯500円)
柏、百十郎は、どちらも岐阜のお酒。店舗の醤油、みりん、味噌は岐阜・愛知から取り寄せているため相性がよくオススメとのこと。どちらも辛口でしたが、飲みやすいお酒でした。特に百十郎は、辛口とは思えないほど口当たりがいい。まるでバナナのような華やかな香りに驚きました。
本日は馬るこ師匠の昇進祝いという題目もあって、ご祝儀ごっこに参加したお客さん全員に、馬るこ師匠からご厚意で手ぬぐいのプレゼントがありました。これを機に落語の勉強を始めてみようと意を決しました。
なお、5月11日からは東京・千代田区にある国立演芸場で、鈴々舎馬るこ師匠を含む真打ち昇進の5人の師匠が代わる代わる登壇する「真打ち昇進披露興行」があります。千秋楽となる5月20日は馬るこ師匠が務められるとのこと。
「やきもち」へは、また落語を聞きに行きたいところではありますが、火曜以外に行って女将から笑点ディレクター時のお話なんかも聞いてみたい。少し駅から離れているからこそ、知らないともったいない店だと強く感じました。秋葉原にまた新たな一面が加わったのではないでしょうか。