世界規模のSNSが備わったコワーキングスペース
WeWorkの「破格」さは、フリーランスでは得にくい福利厚生面にも表れます。たとえば、米国では非常に高い健康保険も、WeWorkを通じて良い条件での加入が可能です。
仕事に使うMS OfficeやAmazon Web Serviceなどにも割引が受けられるほか、求人サイトや会計ソフトなど、さまざまなソフトウェアやウェブサービスで、優遇された料金で利用できるのです。さらに、これは先日実際に利用したのですが、出張する場合でもホテルやレンタカーなどの割引サービスも使うことができます。
さらに、世界中のWeWorkメンバーがつながるコミュニティも存在しています。
このコミュニティでは、業種ごとにコミュニケーションを取ることができるほか、仕事の依頼も飛び交っています。たとえば、ロンドンのメンバーが、世界中のメンバーに対して、ソーシャルメディアキャンペーンの設計ができる人を募集し、それにサンフランシスコのメンバーが応えたり、ニューヨークのデザイナーがアプリ開発者を探したり。
他にも、会計士、弁護士、ライター、フォトグラファーなど、さまざまな業種のフリーランスもしくは小規模企業が、お互いに仕事を融通し合う関係性が作られていたのです。
これはWeWorkに参加するメリットをさらに大きくしています。仕事場を求めてメンバーになった場所から、仕事が得られるのです。こんなに効率的なことはないでしょう。
日本での展開もきっと考えているはず……
課題は家賃よりも日本での働き方?
WeWorkのソフトバンクによる投資で、先進国でほぼ唯一の空白地帯である日本でのWeWork展開の道筋も見えてきました。確かに東京は不動産価格が高いと言われていますが、それよりも3倍近いサンフランシスコで成立しているのです。
東京で踏み出さない理由はそこではなく、働き方のほうでしょう。企業や個人がネットワークの中で働くスタイルが日本で成立するのか。あるいはWeWorkがそうしたトレンドを後押しできるのかという点が、成否のポイントになるのではないかと思います。
そこには、中小企業やフリーランス同士だけではなく、日本の上場規模の企業が、うまく個人や中小企業とつきあえるか、という点にかかっているのではないでしょうか。
たとえばの話をするならば、ソフトバンクさんが広告代理店を通さずに、直接WeWorkメンバーのフリーのデザイナーに仕事を発注できるかどうかが試金石と言えますね。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第264回
スマホ
ライドシェアにシェアバイク、これからの都市交通に必要な真の乗り換え案内アプリとは? -
第263回
スマホ
Amazonが買収したスーパーマーケットで生じた変化 -
第262回
スマホ
日産「はたらくクルマ」でみたテクノロジーでの働き方改革 -
第261回
スマホ
WWDC19で感じたのは、体験をもとにアップルがサービスの整理整頓を進めているということ -
第260回
スマホ
LoTで、いかにして世界から探し物をゼロにできるか?:Tile CEOインタビュー -
第259回
スマホ
ファーウェイ問題で感じたテクノロジーと国家対立の憂鬱 -
第258回
スマホ
スマホでの注文が米国でのスタバの役割を変えた -
第257回
スマホ
10連休に試したい、ゆるやかなデジタルデトックス -
第256回
スマホ
人によって反応が異なるドコモの新料金プラン -
第255回
スマホ
「平成」と「令和」 新元号発表の瞬間の違い -
第254回
スマホ
Adobe Summitで語られたAdobe自身のビジネスや開発体制の変化 - この連載の一覧へ