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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第163回

ソフトバンクが出資したコワーキングスペース、WeWorkでの1年間

2017年05月03日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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世界規模のSNSが備わったコワーキングスペース

 WeWorkの「破格」さは、フリーランスでは得にくい福利厚生面にも表れます。たとえば、米国では非常に高い健康保険も、WeWorkを通じて良い条件での加入が可能です。

 仕事に使うMS OfficeやAmazon Web Serviceなどにも割引が受けられるほか、求人サイトや会計ソフトなど、さまざまなソフトウェアやウェブサービスで、優遇された料金で利用できるのです。さらに、これは先日実際に利用したのですが、出張する場合でもホテルやレンタカーなどの割引サービスも使うことができます。

 さらに、世界中のWeWorkメンバーがつながるコミュニティも存在しています。

 このコミュニティでは、業種ごとにコミュニケーションを取ることができるほか、仕事の依頼も飛び交っています。たとえば、ロンドンのメンバーが、世界中のメンバーに対して、ソーシャルメディアキャンペーンの設計ができる人を募集し、それにサンフランシスコのメンバーが応えたり、ニューヨークのデザイナーがアプリ開発者を探したり。

 他にも、会計士、弁護士、ライター、フォトグラファーなど、さまざまな業種のフリーランスもしくは小規模企業が、お互いに仕事を融通し合う関係性が作られていたのです。

 これはWeWorkに参加するメリットをさらに大きくしています。仕事場を求めてメンバーになった場所から、仕事が得られるのです。こんなに効率的なことはないでしょう。

日本での展開もきっと考えているはず……
課題は家賃よりも日本での働き方?

 WeWorkのソフトバンクによる投資で、先進国でほぼ唯一の空白地帯である日本でのWeWork展開の道筋も見えてきました。確かに東京は不動産価格が高いと言われていますが、それよりも3倍近いサンフランシスコで成立しているのです。

 東京で踏み出さない理由はそこではなく、働き方のほうでしょう。企業や個人がネットワークの中で働くスタイルが日本で成立するのか。あるいはWeWorkがそうしたトレンドを後押しできるのかという点が、成否のポイントになるのではないかと思います。

 そこには、中小企業やフリーランス同士だけではなく、日本の上場規模の企業が、うまく個人や中小企業とつきあえるか、という点にかかっているのではないでしょうか。

 たとえばの話をするならば、ソフトバンクさんが広告代理店を通さずに、直接WeWorkメンバーのフリーのデザイナーに仕事を発注できるかどうかが試金石と言えますね。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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